5話
クロさんに不本意ながら魔力を分けてもらってからは、異常な空腹感は感じることは無く、食欲も落ち着いている。
凄いわ…─。
お腹が鳴らないなんて…!!
でも魔法使いならもっと違う方法で魔力を分けてくれればいいのに!!
クロさんとの口付けを思いだし、顔が真っ赤になってしまう。
「メルル、今日は街へ出かけようか」
「街ですか!?行きますっ!!」
クロさんのお家へ来てから数日が経つけど、初の外出に浮かれてしまう。
思えば、セヴォン帝国に来てから、皇帝陛下の所に直行し追い出され、森に捨てられたから、街らしい街に出かけるのは初めてかもしれない。
うきうきとクロさんが魔法で作ってくれたワンピースに着替える。
糸を吐く魔物から採取した糸で作ったというワンピースは、私の巨体でも柔軟に伸びて着心地最高である!
「じゃあ、しっかり掴まっててね」
「…ふぇ…?」
クロさんと私の足元が光ったと思ったら、足元の地面にすっぽり穴が開いて落ちるような感覚に襲われる。
「きゃ───!!!!」
クロさんに必死にしがみ付くと、クロさんは耐え切れない様に爆笑していた。
落下する感覚が治まり、恐る恐る目を開けると、賑わっている街の入口に居た──。
「ま…魔法…?」
「あ、初めてだった?転移の魔法だよ。」
転移!?凄いわ!!身体ごと移動できるのね!!
堕ちる間隔は怖かったけど!!
「ここが近くの街の『ロズエル』だよ。薬草とか、魔法に必要なものが沢山売ってるんだよ」
「ロズエル…」
活気溢れる魔法の街は、見ているだけでもの珍しく楽しい気持ちになる。
キョロキョロ辺りを見まわす私をクロさんは面白そうに見ていた。
薬草店には沢山の種類の薬草が並び、クロさんは大量に仕入れていた。
薬草店の隣には、魔術具の店もあり、キラキラと光る宝石みたいな綺麗な装飾品や雑貨も置いてある。
「綺麗…」
「あ、メルル、気を付けてね。それ呪具だから」
「……!!!」
吸い寄せられるように見ていたネックレスは呪いのネックレスだったみたいで、危うく呪われるところでした。
「ふふ、メルルは危なっかしいね。これなら大丈夫かな」
そう言ってクロさんは私の手首に細い金の金具で出来たブレスレットを嵌める。
小さい赤い石も付いていてとても可愛い。
「プレゼント!」
「…っ!!ありがとうございます!!」
クロさんに買ってもらったブレスレットはこの日から私の一番の宝物になった。