4話
「メルルの症状はね、魔力を補おうとしてるんじゃないかな?」
黒猫面を被りながらも優雅にお茶を飲みながらクロさんが言う。
「この辺りは、居るだけで森に魔力を吸われるんだよ。見た所、メルルは聖力は桁外れに高いけど、魔力は普通の人位だね」
自分を見透かされているような視線を感じる。
これが『鑑定』という魔法スキルの一つなのかしら─。
「僕は魔力が高すぎるから、逆にここで過ごすくらいが丁度いいんだけどね。そうだ、メルルに僕の魔力を分けてあげようか?」
「そんなこと出来るんですか!?」
「試してみる?」
そう言ってクロさんは私に近づいて──
口付けをしてきた──
「……!!?」
お面越しだけどね。
でもでも…今──!!
あまりの衝撃に意識を飛ばしていると、徐々に空腹感が無くなってきていることに気が付く。
「これで暫くは大丈夫!」
「いやいや、私の乙女心は大丈夫じゃないです!!」
「……?」
魔力の受け渡しが口付けなんて聞いてないですよ!!
お面被っているけど、口付けは口付けなんですから!!
あまりの恥ずかしさに真赤になっている私を、クロさんは首を傾げて見ていた。
いや夫婦だからいいのか!?
私がおかしいのかしら!!?
「ふふ、メルルは可愛いね」
可笑しそうにクロさんが笑う。
この男…!!
「もっとする?」
「え、遠慮します!!」
聖女だったんですから、そうですよ。
男の人となんて初めてですよ!!
クロさんは危険だわ!!
身の回りに強固な結界を張り巡らせる──。
「ふふ、残念だね」
黒猫面の下で絶対に嫌な笑顔してるわ!!
お茶を飲み干しながらクロさんを睨んで抵抗するのであった──。