表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/35

7話



黒竜は優しげに目を細め、首を横に振る。



『それは、僕であって、僕ではないよ。君が、君であって、君じゃないのと同じだ──』



クロさんでは…

無いのだろうか…──?



『昔の話を…しようか──』




黒竜と白竜は…とても仲の良い番だった──


お互いを愛し、慈しみながら…ひっそりと幸せに暮らしていた。



人と関わることも無く…

穏やかに暮らしていけるはずだった─…


けれども…

戦争が始まり、人は強欲にも竜の力を求めた──


魔術師が隷属の首輪を白竜に嵌め、戦争に利用した。白竜を取り戻そうと黒竜も人と戦おうとしたが…白竜の命を盾にされ、人に操られた白竜に封印されることを選んだ




『最後の瞬間─…白竜が命がけで僕の魂を『竜』と『ひと』との二つにわけて、『ひと』の魂を白竜の魂の中で生かしてくれた。『竜』の僕はここで深い眠りについたんだ──』



そ…んな…──

どうして…そこまでされたのに…


穏やかに話す黒竜には…恨みや怒りという感情は全く感じられなかった─…


ただ…ただ…悲しいという思いがする──



『白竜と僕の魂は『ひと』の中で何回も生まれ変わって生き続けた。ただ…僕の魂の片割れはこの黒竜の中に在ったから、『ひと』になりきれず不完全で、『成り損ない』と呼ばれた』


『成り損ない』──…ということは…

クロさんは──


『白竜の金色の瞳と、僕の蒼色の瞳…不完全な魂…。それが君が『クロ』と呼ぶ僕の片割れだ──』



クロさんは─…

異形と呼ばれ、『成り損ない』と蔑まれ…

一体どんな気持ちだったのだろう──



『白竜と僕の魂が一つになるには…白竜の魂も二つに分ける必要があった。白竜の片割れの魂を受け継いでいるのが…君だね──?』



わ…私が…

白竜…──?



『白竜の食いしん坊なところとか…そっくりだよ。君のお蔭で僕の半身は随分救われた。ありがとう』



黒竜は瞳を細めて穏やかな表情になる。

クロさんとそっくりなその瞳に胸が締め付けられる──


それに…

この暴食は…白竜の所為だったのか…。

黒竜の気配が強いこの国に来たことで、白竜の魂が強く出てしまったということかしら…。



『僕の半身は…消えてしまったんだね』



黒竜の言葉に、びくっと肩を震わせる。


信じたくなかった…──

でも…黒竜が言うのなら…クロさんは──



『今、僕の半身の魂は消えかけ…白竜の魂が補っている。その所為で人に恨みを持ったままの白竜が暴走してしまっている─…』


「え…───」


『僕の魂を、僕の半身にあげるよ。僕はもう永く生きた。白竜ともう一度ひとつになれるのなら…とても幸せだ──』


そう言って黒竜は目を細めた。


『僕の封印を解くのを手伝ってくれる?』



涙で顔がぐちゃぐちゃな私を黒竜が覗き込む。


ああ、どうして…

海のように深く優しい色をした瞳に…切なくなる。



『僕の為に泣いてくれるんだね…。ありがとう』



全てを包み込むような優しい声に、どうか…黒竜に救いがあって欲しいと…

そう祈らずにはいられなかった──



「封印は…どうしたら…解けますか…?」



真っ直ぐに黒竜を見上げた──





ここまでお読み頂きありがとうございます。


もしよろしければ、ご感想、評価、レビュー頂ければ作者の励みになります!よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ