3話
この広いお屋敷には、何故かクロさんしか住んでいなかった。
クロさんは魔法使いで、ある程度のことは魔法で行えるから必要ないのだそう。
セヴォン帝国は魔法が発達した国で、炊事も掃除も全て魔法で行うのが主流みたいだ。生まれ育ったマーメル国は魔法はそれほど発達していなかったので、とても感動したのだった。
「凄いです!クロさん!箒がひとりで掃除してますよ!」
「うんうん。そうでしょ?」
得意げに箒に魔法をかけるクロさんが輝いて見える。
クロさんの黒猫面にも特殊な魔法が掛けられていて、食事もお面を取らなくても食べられ、クロさんの素顔は謎のままだ。
ちなみに魔法で作られたお料理は絶品でした!
「クロさんはどうして私なんかをお嫁さんに欲しいんですか?」
どうしても消えない疑問をぶつけてみる。
クロさんは首を傾げ、考えている。
「メルルは面白そうだったから!」
「そ…そうですか」
面白そう…。た、確かにこんなに肥えた聖女は面白分野になるのかもしれないわ。
「それに…、凄く可愛かったから!」
…え…?
「パンを頬張る姿、まるで冬眠から目覚めた熊みたいで!」
………。
もうクロさんに変な期待を持つのはやめにしよう。
クロさんは日中は魔法の研究をしたり、薬草を育てたりとのんびりと生活しているみたいだった。
私はやることもないし、寝てても肥えるだけだし、広い庭を散歩するのが日課となっていた。
「あ、瘴気だわ。浄化しましょう」
見回りがてら、聖女の力で瘴気を浄化していく。
お蔭で今日も空気が美味しい。
セヴォン帝国は魔法が栄えている反面、瘴気が多く、魔物も出現するらしい。
聖女としては色々気になるが、追放されてしまったので仕方ない。
ぐぅーっとお腹が鳴る。
「この国に来てから…ずっとお腹が空くのよね…」
お腹を押さえながら歩いていると、クロさんが笑いながら此方へ向かってくる。
「こっちまで聞こえたよ。お茶にしようか。」
恥ずかしさで顔が赤くなるけれどお茶の誘惑には勝てない。
「はい!お茶請けはなんでしょうか!!」
ここまでお読み頂きありがとうございます。
もしよろしければ、ご感想、評価、レビュー頂ければ作者の励みになります!
よろしくお願いいたします。