5話
気が付くと、神殿のような所に寝かされていた。
光の差さない薄暗い神殿には…白い竜の像が祀られていた──
「お寝覚めですか?」
後ろから声をかけられ振り向くと、白装束の男が笑っていた。
「生贄の儀式は明日です。それまでにしっかりとこの世とお別れをしておいてくださいね」
冷たい微笑みに、もう逃げられない現実を突きつけられているようだった──。
「く…クロさんは…どうなったの…?」
クロさんが無事なら…それでいい。
縋るような気持ちで問いかけると…
「ああ、もう元には戻れないだろうね。あいつは─…もう存在しない」
絶望的な言葉に目の前が真っ暗になった──。
「元々存在が不安定だったのに、君を護るために森から離れて魔力を使った。『成り損ない』なりに頑張ったねぇ。君の所為で、あいつは消えた。早く諦めて君を渡せばよかったのに─…」
涙が零れた──…
クロさん─…
私の所為で…──
「君の中にまだあいつの魔力が残ってるね─…健気だねぇ…」
クロさんの…魔力…?
私を護るように闇が広がっていく─…
「でも、消えてもらおうか──」
そう言って顎に手を置かれ、白装束の男の方を向かされる。
白装束の男の顔が近づいて──
唇が重なりそうになる──
嫌だ…──
クロさん以外と…──
「いや────っっ!!!」
必死に叫んだ瞬間──
魔力が一気に抜けてる感じが体を襲い─…
あの異様な空腹感が襲ってくる──
「っな──」
白装束の男の白い光を一気に体の中に吸い込み─…
浄化する─…
「食べれるのは…瘴気だけじゃ無かったのか─…」
薄れゆく意識の中で…白装束の男の声が…
うっすらと頭に響いた──
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