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8話


ボロボロになって気絶しているディロス・マーメルを指差す。


クロさんは少し言いにくそうに…



「あいつ…、メルルと結婚の約束…してたの?」



と聞いてきた─…。



え、何故それをクロさんが知っているのか…。

まさか…ディロス・マーメルがクロさんに何か言ったの!!?



「昔の話です。こっぴどく振られましたし、良いように戦争の駒として使われてただけなので…、もう全く無関係です」



誤解されたくなくて、勢いよくクロさんに説明してしまう。

クロさんの空気が少し冷たくなったような気がした─…。



「あいつから…聞かされた。メルルを道具みたいに扱って…、メルルを侮辱して…。更に連れ去ってこの帝国のために生贄にするとまで言ってて…。自分でも分からないくらい…怒りの感情が湧いたんだ──」



………。

生贄って何!??


あの神様の祭壇に捧げる的な物だろうか…。

よく豚とか牛とかを捧げるけど…白豚聖女捧げようみたいな感じなの!!?



「それに…。メルルと結婚するはずだったって聞いたら─…、何だか苛々して…気が付いたらここで暴走してしまっていたんだ─…」



クロさん…

それって…何だか…ディロス・マーメルに嫉妬しているように聞こえてしまう…


あり得ない考えに頭を横に振る。

そうよ、家族愛よ!!



「僕以外の男に、メルルを渡したくない。メルルは僕のお嫁さんだから─…」



「…………。え?」



「こんな独占欲みたいな気持ち、初めてなんだ。自分の中に『特別』が出来るなんて…嘘みたいで…わからなかったけど…」



クロさんが真っ直ぐ私を見つめる──





「メルルが好きだよ──」





涙が…溢れた─…


真っ直ぐなクロさんの言葉は…私の固まっていた心を優しく解していく─…


誰かに…想ってもらえるって…

こんなにも嬉しいんだ─…




「泣かないで、メルル」




焦ったように慌てて、綺麗な指で涙を拭ってくれるクロさんが…

優しくて…温かくて…




「私も…クロさんが好きです!うれし泣きです!」



「ふふ。メルルは不思議だね。嬉しくても涙が出るんだね。」




そう言ってクロさんが抱きしめてくれる。

クロさんの温もりで包まれて、心まで温かくなる。


ディロス・マーメルに傷付けられた心の傷が…少しずつ癒えていくのがわかった──







ここまでお読み頂きありがとうございます。


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