6話
「クロさん…遅いな─…」
部屋の中で膝を抱えながらクロさんの帰りを待っている。
日は暮れ始め…
部屋の中は薄暗くなってくる─…
いつもだったらクロさんが部屋に魔法で灯りをともしてくれた。
クロさんが居ない。
それだけで…すごく心細かった─…。
いつの間に…こんなにクロさんが心を占めるようになったんだろう。
マーメル国で婚約者だった王子に裏切られて…国から追い出され…恋愛なんてまっぴらだと思っていたのに…。
ロブ・ロードの所為でクロさんへの気持ちに気付いてしまってからは…着々に思いは大きくなってしまっている。
クロさんとお揃いの指輪をぎゅっと握りしめる。
クロさんに早く会いたい─…。
数刻が経ち─…
辺りが真っ暗になった頃─…
水滴の音が聞こえ─…
光の中からハルーシュさんが突如現れる。
嫌な予感がする。
どうして…ハルーシュさんが…──
「クロは戻ってこない。私と共に来るか、クロの所に行くか、選べ──」
ハルーシュさんの言葉に息を呑む。
クロさんが…帰って…こない…?
どう…して─…?
でも…答えは決まってる──
「………!!クロさんの所にっ!!行かせてください!!」
「わかった──」
そうハルーシュさんが言った瞬間、足元に水文が浮かび、光に包まれる─…。
クロさんとは違う…転移の魔法…?
優しい光に包まれ、目を閉じる─…。
次に目を開けた時─…
そこは…
禍々しい瘴気に包まれた─…
洞窟みたいな場所だった─…
「っっ…!!」
黒猫面を付けたクロさんが、瘴気の中心に立っている─…。
「クロさんっ!!!」
呼びかけても返事は無かった─…。
クロさんの足元には─…
故郷に居るはずの…──
元婚約者であるディロス・マーメル第三王子がボロボロになって倒れていた─…。
何故…王子が…──?
『クロを頼む─…あいつを『怪物』にしないでくれ──』
転移する前に言われたハルーシュさんの言葉が脳裏に浮かぶ─…
「く…ろ…──さん…?」
黒猫面で良く見えないが…クロさんは小刻みに震えている様子だった。
禍々しい瘴気がクロさんの中に入っていく。
これは…
咄嗟に聖女の力で浄化しようと試みるが─…
瘴気が莫大すぎて浄化しきれない─…
このままじゃ…クロさんが瘴気に吞まれてしまう!!
私は咄嗟にクロさんに抱きついた──




