5話
「ああ、何故王族である俺がこんなことしなければならないのだ!!あのクソ女の所為で!!」
セヴォン帝国の宮廷の一室で、マーメル国より連れてこられたディロス・マーメル第三王子は怒鳴り散らす。
やっとのことであの卑しい身分のクソ聖女から解放されたと思ったのに!!
まさか敵国で行方不明になり、その捜索にこの高貴な身分の俺が呼ばれるなんて!!
敗戦国とはいえ…屈辱的であった─…。
あの何もできないクソ聖女…。こちらの国でもやっかい扱いされ、白豚聖女と追放されたと聞く。まったく迷惑な奴だ─…。
しかも、あいつが居なくなってから、マーメル国はおかしくなった。
民衆は国に反発し始め…大地は実りが減少してきている─…
徐々に国は傾き始めているのだ─…
セヴォン帝国で…クソ聖女を引き取れと言われれば…またいいように使ってやろうと思ってたのに─…
よりによってルイセル皇帝陛下はあいつを所望している─…
くそっ!!
ディロス・マーメルはメルルの手配書を握り潰し、憎しみを込めてメルルの姿絵を見つめる。
その時──
「メルル・ルシフォンの目撃情報がありました──!!」
部下の男が部屋に入ってきたのだった─…。
「さあ、あのクソ聖女を…捕えにいくか…─」
ディロス・マーメルは王宮を後にするのだった─…
◆◆◆
新たな手配書が出回ってからは、私は森の屋敷から出ずに、ひっそりと暮らしていた。
いつ白豚聖女だと発覚し、捕まるかもわからない。
マーメル国に戻れと言われたら…どうしよう…。
クロさんの傍に居たい…
このままここで暮らしたい─…
不安で膝を抱えていると、クロさんがぎゅっと抱きしめてくれる。
「大丈夫。メルルは絶対に護るよ─…。」
「クロさん─…」
クロさんの温もりに安心する。
そうだよね…クロさんは強いもんね─…!!
大丈夫。
大丈夫。
必死に言い聞かせる。
「お客さんだね─…」
クロさんが突然そう言って立ち上り、黒猫面を付ける。
「メルルはこの部屋から出ないでね。護りの魔法をかけておくから」
そう言ってクロさんは部屋を後にする─…。
何ともいえない不安が胸を襲う。
「クロさん…、気を付けてね…?」
「うん、いってきます」
そう言ってパタンとドアが閉まった──
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