2話
「メルル、これって…」
クロさんが人相書きを見て困惑したような声を出す。
「メルルと同じ名前の豚さんが逃げちゃったのかなぁ?」
のほほんと言うクロさんに、私は思いっきり前につんのめってしまう。
違うの…─!!
クロさん、これ、私なの!!
酷いわよ!!何で人相書きが豚なのよ!!
絶対あの皇帝陛下の仕業でしょう!?
追放しておいて…一体今更何の用なんだろう─…
「と、とにかく、クロさん!お家へ戻りましょう!!」
そう言って人相書きを1枚むしり取り、早急にその場から離れる。
あの時ほど太っていないとは言え…姿を見られたら気付かれるかもしれない─…
クロさんも私の鬼気迫る様子に、すぐに魔法陣を発動させてくれた。
◆◆◆
「クロさん…。これ、私なんです──」
家に帰り、クロさんの前に人相書きを置いて、意を決したように告白する。
黒猫面を外したクロさんは、目を見開いて驚いている──
「これがメルル?いくら何でも酷くない!?メルルはもっと可愛いよ!!」
……。
その前に人ですけどね、豚じゃなくて─。
「私…クロさんと出逢った時に、簡単に説明したとは思うんですけど、詳しくお話ししますね─」
そう言ってクロさんに、マーメル国の聖女だったこと─…
戦利品としてセヴォン帝国に来たけど、過食で太っていたため皇帝陛下に追放されたこと…─
髭親父に騙されて身ぐるみ剥され森に捨てられたこと…─
順を追って説明する。
「ルイセルが…君を追放したなんて─…」
クロさんは茫然と呟く。ルイセル・セヴォン皇帝陛下はクロさんの双子の兄だ─…。
複雑な思いがあるかもしれない─…。
「本当勿体ない事したよね!ルイセルも。きっと今頃メルルの価値に気が付いて血眼で捜してるんだろうね─…」
「……?」
「メルルはこんなに可愛いし、ふわふわの触り心地だし、優しいし、面白いし、言い切れないほど魅力的だもんね!!」
………。
クロさんの怒涛の褒め言葉に恥ずかしくて顔が上げれない─…。
ふわふわの触り心地って何ですか!?
脂肪?脂肪なの!!?
「メルルは僕が護るよ──」
そう言ってクロさんは私の指輪に口付けを落とした──
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