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俺、ヲタクでイジメられてたけど、異世界で魔王に転生したので、クラスメイト全員に復讐します!  作者: JKL
第2章 イジメられてた俺、転生したので主犯格のDQNに復讐します
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第28話 断罪9

「な、なんだ、これはっ」

 自分の身体の異変に気づいたのだろう。

 しゃがみこんだミッツが、羞じらうように裸の胸を手で隠す。

 女体化したばかりで発育が足りないのか、乳房の大きさは慎ましい感じだ。

 下半身も、脚をギュッと閉じているので大事なところは見えない。

 だが、一瞬だけ見えた下の毛も金髪だったことは付け加えておこう。


 ちらっと横目で見ると、息子がとつぜん女の身体になっていたことに、難波江は呆然としている。

 だが金髪も、母親似のユニセックスな顔も、女装メイクさせたミッツとしか言いようがない。

「母親に感謝したらどうだ?」

「なにを言ってる……」

 どうやら、魔力を暴走させている間のこちらの会話は聞こえていなかったようだ。

 まぁ、雅人も根源の暴走を止めたのなんて人生……魔王生で二度目のことなので、わからないことも多い。

「母親がな、なんでもするというから助けてやったんだ。あと、どんな形でもいいって言われたしな」

「だ、だからといって、どうして女の身体なんだっ」

 納得がいかないらしい。

 そりゃそうだろうが。

「俺が、お前の両親に復讐したいと思ってるのはわかってるだろ?」

 前提条件を確認するために聞くと、渋々うなずいている。

「それなのに、ふつうに助けたりすると思うか?」

 唇をかんで悔しそうにしているミッツ。

「この国で二番目に強かったんだろ? 才能に期待して、眼に入れても痛くないくらい可愛がってきた息子が女になった。ショックだよな」

「は、母上を苦しめるためだけに、俺を女にしたのかっ!」

 そんな理由で性別を変えられてはたまらないだろう。

 まぁ、関係ないけど。

「究極的に言えばそうだな」

「なっ……」

 絶句している。

 このくらいで驚いてちゃ、精神が持たないぜ?

「女にしただけじゃない。お前は、今日から俺の慰み者だ」

「ま……待って。息子は許して」

 息子の行く末を宣告してやると、慌てて難波江が割りこんでくる。

「私がなんでもします。だから、息子は巻きこまないで」

「巻きこむってなんだよ。『池井』と『難波江』。二人の息子である以上、もうとっくに関係者だろ?」

 現実を教えてやらないといけなそうだ。

「それに、なんでもしますと言ったって、さっき言っただろ? 『池井』の使い古しはいらないんだよ」

 冷酷に言ってやると、唇をワナワナと震わせている。

「たしかに、『難波江さん』。キミは美人だよ」

 そう。

 トスタナが頑張っちゃうくらい、ヘラ=ヴァーク=アデナイは美人だった。

「でも、美しくない。俺から見れば、中身が腐ってるからな」

 吐き捨てるように言うと、交渉の余地がないことがわかったのだろう。

 難波江は膝から崩れてへたりこんだ。

「イジメを傍観して、愉しんでたよな? そんな女は、クソだろ?」

「は、母上はっ。領民に愛されてる。腐ってなど、いないっ」

 無言になってしまった難波江を、必死に息子が弁護する。

「いや、腐ってるね。でなきゃ、オーガの蛮行を、どうして今日まで見逃していた?」

 追求すると、ミッツも黙りこんでしまう。

 図星をつかれて言葉も返せないようだ。

「ヴァーク朝は今日で断絶。そのくらいしないと、罪はつぐなえないだろう?」

「だ、だからって、女にしなくても……」

 わかってないな。

「男のまま生かしておいたら、トラブルの素だろ? ふつう、亡国の跡取りなんて、成人してたら間違いなく処刑。未成年でも、殺されても文句は言えない立場だぞ?」

 浅井長政の息子も未成年で処刑された。

 羅侯の五つ子だって、まだ幼くても殺すよう命じられただろう?

「それでも殺さないで欲しいと頼まれたからな。女にでもしないと、帳尻が合わない」

「……女にされた理由は理解した。でも、貴様のモノになるのはごめんだ」

 どうにも、女体化したばかりで言葉遣いがDQNなままだ。

 泉に落ちて男と女を行ったり来たりする体質になったわけじゃないので、もう男に戻ることはない。

 べつに、女らしい言葉遣いという前世なら炎上しそうな表現をするつもりはないが、他人に対して軽々に貴様とか言っちゃうのは直させよう。

「じゃぁ、母親と一緒にトスタナのモノになるか? それでも別に構わないぞ」

 ゴブリンを抑えていたトスタナが顔を上げる。

 眼がキラーンと光っているように見えたのは気のせいだろうか。

「そ……それも嫌だ。父上のところに行かせろっ」

「あんたバカなの? 仮にもこの国の元王子でしょ? そのくらいの政治もわかんないとか、ホントバカ」

 ごねているミッツにイライラしたリナが口を挟む。

「オーガの蛮行は、手違いで周辺国にも流れてる。だれも助けないさ。だが、キミは十分、我々に対する神輿になる。逃がすつもりはない。俺かトスタナのモノ。どちらか選べ」

 逃げ道をふさぐと、唇をかんで悔しがっている。

 そんな表情ばっかり見ているな。

「……貴様らのモノになるくらいなら、死んだ方がマシだ。殺せっ」

「自分で死ぬ勇気もないの? バカなの?」

 リナが悪態をついているが、それはスルーする。

「死ぬのは勝手だが、王族としていいのか? 父親は罪をつぐなわずに出奔。せめて、元王子のキミが王族の誇りを見せた方がいいと思うが?」

「……そう……だな……」

 反論できないらしい。

「まぁ、死にたきゃ勝手に死ねばいいと思うぞ。まだ完全じゃないし」

 ミッツの身体を指差しながら言うと、母娘とも気づいたようだ。

 ミッツの身体の輪郭が、徐々にぼやけてきていることに。

「今は、俺の魔力で維持してる。でも、いつまでもっていうのは面倒なんだよ」

 雅人は、ミッツの身体を実体化させている魔法を、華でもわかるように開示してやる。

「魔導王国の王族なら、わかるだろ?」

 はかなく消えてしまいそうなミッツの姿に焦った華が、魔法の術式を読みこみだす。

 複雑だが、簡単なところに穴を開けてあるのに無事、気づいたようだ。

「自殺できないし、所有者の許可なく他人に危害を加えることもできない。そして、根源から魔王の所有物になる縛りを加えてある」

「な……んだ、それ……」

「この魔法が完成したら……どうなるの? 根源から所有物って、どういう意味?」

 理解したくないミッツと対照的に、焦る華は的確にポイントを確認してくる。

「魔法が完成して、息子? 娘? に刻まれたら、今後生まれ変わっても俺のモノから逃げられない。そんな一種の呪いだ」

「ふっ……ふざけるな。絶対に嫌だ。母上っ、完成などさせなくても構いませんっ」

 ミッツはわめき散らす。

 だが、華は哀しみに目線を一度落とした後、顔を上げた。

「どうすればいいの?」

「なんでもするんだろ? 穴をキミがふさぐんだ」

 そう命じると、華は魔法に向き合う。

「母上っ! 俺は嫌です。魔王のモノになるくらいなら、死にたいっ」

「……このままでは、あなたは消えて……そして、だれからも忘れられるそうよ。私からも」

 大事なことはちゃんと覚えていたようだ。

「生きていてほしいの。忘れたくないの。あなたのことを。何があっても」

 そう決意すると、華は魔力を魔法に注ぎはじめる。

 全力を出せば、穴はふさがるように調整してあるので、徐々に魔法が完成していく。

「母上……くそっ……」

 母親の愛情がわかっているのだろう。

 抵抗はしなくなった。


「はい、お疲れ。魔法は完成しました」

 改造車に乗って、過去に行ったり未来に戻ったりしていた古い洋画を思い出してほしい。

 過去に行って、若いときの母親とキスしたあと主人公の体の輪郭がうっすらしていたが、ミッツはあの状態だった。

 それが、魔法が完成するとふつうに戻った。

 とはいえ、元通りではない。

 宣言したとおり、雅人のモノとして魂が囚われている。

「くっくっく。母の愛は強いね。まぁいいじゃないか。まだ混乱してるから反発してるけど、たっぷり俺のモノだってことを身体に教えてやるから。元息子が産んだ孫を、ヒクガエルの子どもを抱く余生ってのも幸せだろう?」

「あーあ。俺のモノになったら、お母さんと一緒に可愛がってあげたのにな」

 雅人とトスタナの言葉に、ミッツは悔しくて震えていた。

「女になったんだ。せっかくだから名前を変えよう。ミツキを名乗ってもらう」

「……嫌だ」

 拒否されるが、許すつもりはない。

 まぁその辺も含めて、自分の立場ってヤツを教えこんでやろう。

「……お父様の言うとおりでした……お許しください……」

 華がブツブツとなにかを言っている。

 大勢に影響はなさそうなので、雅人はセレモニーを終了させた。

 これで2回目の復讐は終わりです。

 明日からは数話、戦後のアレコレを書く予定です。

 女の子(男の娘ではない)になってしまった元ミッツ君に立場を教える話は、数日後にノクターンの方に書く予定です。

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