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俺、ヲタクでイジメられてたけど、異世界で魔王に転生したので、クラスメイト全員に復讐します!  作者: JKL
第2章 イジメられてた俺、転生したので主犯格のDQNに復讐します
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第26話 断罪7

「あ、起きた?」

「クッソ……。っ! おい、てめぇ、『華』になにをしたっ」

 失神から目覚めた池井が眼にしたもの。

 それはだらしなく肢体を大地に投げ出した王妃の姿だった。

 そしてその腹部は、わずか二時間ほど意識を失っていただけでは説明できないほど、ふくれている。

「ん? あぁ、妊娠させてあげたんだよ」

「……んだと……殺す。殺してやるっ」

 二時間くらいダウンしていたにもかかわらず、まだダメージが残っているのか、フラフラしながら立ち上がる。

「その状態からどうやって?」

 トスタナが馬鹿にしたように笑う。

 実際、池井は生まれたての子鹿のように、膝をプルプルと震わせている。

「自分で言ってたんじゃなかったかな、『悪いのはお前だ』って。弱いから悪いんだって」

「ふ……ざっけんな……」

 心当たりがあるのか、反論に力がない。

「『弱いくせに、誰かを護ろうだなんて、バカなこと』だって、言ってなかった?」

「トスタナ、それ以上は俺が引き取るよ」

 雅人は池井の相手を、弟から返してもらう。

「まったく。お前も鬼にならないか? って鬼から誘われなくても、鬼か悪魔だな」

「なにがだっ、復讐なら、俺様にすればいいだろう。『華』を巻きこむなっ」

 あきれたように言うと、まったくわかっていないことを言いはじめる。

「は? 前世で、俺がお前にやられてたとき、横で笑っていた女が無罪だとでも?」

 冷酷に言ってやると、顔をゆがめる。

「だからって、これはねぇだろっ」

 なにが、これはないのかよくわからない。

「よくわからないな。リアムじゃないけど、人間のやることとは思えないことをしてきたのは君だろ?」

「女をめちゃくちゃにするなんざ、ヒキョーだろ」

 イラっと来る。

「自分のことを棚に上げて? 獣人の奴隷を妾にして、飽きたら殺してきたんだろ?」

「……だから、んだよ。アイツらは……動物だ。ケモノなんだよっ」

 またそれか。

 反省の色はまったく見えない。

「……父親を殺されたことが関係してるとか?」

 たしか、アデシュ村のオーガ少年の父親は、獣人ともめて殺された。

 オーガが獣人をしつように人間扱いしないのは、その辺に事情があるかもしれない。

「……関係ねぇ」

 あ、図星だったかも。

 とはいえ、あの残虐さは情状酌量の余地もない。

「さてと。個人的な復讐はそろそろ区切りをつけて、オーガ=ヴァーク=アデシュの断罪に移ろうか」

 立ったまま、床に尻をついている池井を見下ろす。

 どうやっても勝てないことはさすがに理解したのか、反抗したり、抗議したりもしてこない。

 もちろん、間合いに入れているので逃げ出すこともできなくしてある。

「ふつうなら死罪だな」

 冷酷に告げる。

 ギリッと奥歯を噛みしめながら、眉根にシワを寄せる。

 悪いことがバレた小悪党感丸出しの表情だ。

 これで反抗する気力を下手に残していたら、「このようなところに上様がいらっしゃるはずがない」とか言って斬りかかってきてもおかしくないが、ボロボロにしてやったのでそんな心配は無用だ。

「怒ってたけど、そんなになるまで君の罪を一緒に償ってくれた『難波江さん』に免じて、殺さないから安心しなよ」

 そう告げると、池井が顔をあげて鼻の穴をぴくぴくさせる。

 こらえきれない喜びがにじみ出てきているようだ。

「だってさ。簡単に殺しちゃったらつまらないじゃないか」

 本心を告げると、ぎょっとした表情が返ってくる。

「俺が死んでもいいと思ってたんだろ? 死ぬよりつらい目にあって、生き恥をさらしながら不幸になってほしいじゃないか」

 希望を与えてから絶望を与える。

 あぁ、楽しい。

 そして、そろそろ時間だ。

「たとえば。前世からの恋人であり、今の妻である王妃が」

 そこで言葉を切ると、華がビクビクガクガクと震えだす。

「醜い、魔物を産むのを見ちゃうとか」

「あぁぁぁぁっ、うごぉぉぉっ」

 およそ女性、というより人間の口から出たとは思えないような咆哮が華の口からもれる。

 そして、下腹部が何かに押されるように縮んでいくにつれ、彼女の股の間から見間違えようもない卵が出てくる。

「うぁぁぁっ!」

 ゴロンという感じで、最後に押し出された卵が転がる。

 池井もミッツも、声も出せずにいる。

「あぅ、私の……赤ちゃん……」

 もうろうとした意識のまま、華が母性本能に操られるように、自然な動きで卵を抱きかかえる。

 その姿は、完全に卵を我が子と認識しており、愛おしそうに温めていた。

「『は、華……』」

「は、母上……」

 父子が、同時に話しかけても華は反応を示さない。

「魔物、ってどーゆーことだ?」

 妻に声が届かないことを、ようやく理解した池井が聞いてくる。

「そのままの意味さ。魔物はふつう、魔物同士でつがって生殖する。だけど、淫魔のオリジナル魔法で、魔物を生み出すことができるものがある。それを今回トスタナに使ってもらったってわけ」

 パクパクと口を動かして、ショックに打ちひしがれている池井。

 あぁ、いい表情をするじゃないか。

「ヒューマンであることに強いこだわりをもつ君にとって、自分の妻が人外生物を出産したなんて、めちゃくちゃこたえるだろ?」

 池井は、呆然となって卵を抱いている妻を見た。

「まぁ別にいいじゃないか。君の子どもじゃないんだ。何が産まれようと、関係ないだろ?」

 ショックは受けているようだが、雅人の言葉を聞いて徐々に立ち直りつつある。

 べつにこれは、池井に対する復讐として、メインでは全然ない。

 間違えちゃいけない。

 今からがメインディッシュだ。


「例えば。カーラ」

 目配せをしてあったので、ヴァンパイア・クイーンのカーラが音もなく池井の背後に立つ。

「はい、我が君。なんなりとご命令を」

「吸っちゃって」

 許可を出すと、カーラの右手が池井の背中に触れる。

「うぐっ! な、なに……しやがんだ……」

 池井の体が淡く発光しはじめる。

 だが、その光がカーラの方に吸い取られていくのが、だれの目にも明らかに見える。

「サトゥーはナナに注いだけど、こっちは吸い取る魔法だよ」

「うぁぁぁっ。なんだ……ち、力が……出ない……」

 お前は、顔が濡れたパンか。

 とはいえ力が出ないというのは比喩としても、魔力は枯渇しているはずだ。

 魔力ドレイン。

 某最後のファンタジー的な世界的に有名なゲームでもMPを吸い取る魔法があったが、それの強化版。

 相手の持つすべての魔力を一気に吸い取ってしまうヴァンパイアのユニークアビリティである。

「魔力量の多さが自慢のオーガ=ヴァーク=アデシュから魔力を奪ったらなにが残るか?」

 魔力を吸い取られてうずくまっている池井を見下しながら、解説してやる。

「なにが、キミのこれからの人生において、心の支えになるのかな」

「て、てめぇ……クラスメイトとか、戦った相手とかに、なんかねぇのか」

 戦士としての慈悲とか、騎士の誇りとかってことか?

「あ? ねぇよ、そんなもん」

 ばっさりと切り捨てる。

「どこへなり、行けよ。『難波江』を助けたければ、修行して戻ってきな」

 魔力が枯渇し、絶望でしばらく動けなかった池井は、華がうっとりした表情で卵を抱いているのを見て立ち上がり、ふらふらとした足取りでどこかへ消えた。

「ひどい男だな。奥さん見捨てたよ」

 ミッツを見下しながら言うと、唇を噛んで悔しがっている。

「あ、そうそう。こっちには治療だ」

 ギョッとなったミッツを無視して、華に精神干渉系の治療魔法をかける。

「ひぃぃっ! なんで……なんでわたし、卵なんか……」

 抱卵しながら正気に戻った華は、慌てて卵から手を放して飛びずさる。

「お……。『慶』は?」

「どっかに消えたよ。負けてプライドをずたずたにされてね」

 少し端折ったが、嘘は言っていないぞ。

「う、うそでしょ……」

 呆然となった華の目の前で、卵に内側からの力によってヒビが入った。

「まぁ、間男との子どもの姿を見られなくてよかったじゃないか」

 雅人が言ってやると絶望に打ちひしがれ、地面に両手をついては、こらえきれない嗚咽をもらしていた。

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