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俺、ヲタクでイジメられてたけど、異世界で魔王に転生したので、クラスメイト全員に復讐します!  作者: JKL
第2章 イジメられてた俺、転生したので主犯格のDQNに復讐します
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第23話 断罪4

 パチン、と指を鳴らす。

 その瞬間、雅人の周りをおおっていた業火が一瞬でかき消える。

「なっ……クソがっ! まだまだぁ」

 オーガは焦ったような表情を浮かべると、剣を地面に突き立て、詠唱をはじめる。

「スーパーファイアークラッシュノヴァ!」

 また、待ちくたびれてあくびが出るころ、魔法が完成したようだ。

 オーガが魔法の名前を唱えると、両手に火球が生み出される。

「死ねぇっ!」

 片手ずつ火球を投げると、すぐに同じ火の玉が手の中に現れ、次々に投げつけてきた。

「お前は第七の大隊長かよ。めんどくせーな」

 一発一発は大したことがない威力だが、連発されるとさすがにウザイ。

「うぉぉぉぉっ!」

「消えろ」

 雅人が指先で空気を弾くと、オーガの手元にあった火球が、跡形もなく消火されて消える。

「なっ……んだと……」

 驚愕し、顔を青ざめさせているのは少し痛快だ。

「大したことない魔法だね。弱っ」

 あごを上げて見下すように言ってやると、歯を噛みしめて悔しそうな顔をしている。

 あぁ、愉快だ。

「ところでさ、ちょっと聞きたいんだけど」

 小バカにしたように眼を細めて見る。

「藩王……俺の部下に負けたんだよな? しかも、よそ見する余裕もあったって聞いたけど。それなのに、どうして魔王である俺に勝てると思ったわけ?」

「……っ、ざっけんなっ!」

 冷静に指摘してやると、顔を真っ赤にし、さらに頭に血をのぼらせる。

(冷静でも勝てない相手に、怒って勝てるわけないだろ?)

 たとえ、フューリーに取りつかれたところで、勝てるような半端な実力差ではないのだから。

 そんなことを考えているうちに、新しい魔法が練り上がったようだ。

 今度は炎の反対らしい。

 聖剣が金属疲労を起こさないか、余計なことだが心配になる。

「今度こそ、死ねっ! エクストラ……」

 オーガが嬉々として魔法を唱えようとする。

 だが、圧倒的な力の差を見せつけてやるつもりの雅人は、最後まで魔法を具現化させない。

 指を再び鳴らすと、オーガが苦心して集めていた冷気が霧散してしまう。

「あぁっ? なんでだっ」

「サイオンは見えないけど、魔力量は君の数百倍あるんだ。魔力感知して、術式を破壊するくらい、簡単だよ」

 親切に解説してやるが、理解できる頭脳がないことをすっかり忘れていた。

「っざけんなっ! 俺様は最強のオー様だ。ヒクガエルなんかに負けるわけがねぇっ!」

 先ほどと同じ魔法を詠唱しはじめる。

「こりないねぇ」

 必殺の魔法が解析され、無力化されるのを目の当たりにしながら、その意味もわからないのだ。

 もう少し圧倒してやらないとダメか。

 手のひらを上に向けて開き、フッと息を吹き出す。

 その瞬間、集中して魔力を魔法に昇華させようとしていたオーガの片腕が凍りついた。

 いや、腕だけではない。

 オーガを中心に半径数メートルが、凍りついたのだ。

 とうぜん、オーガ自身の足も氷におおわれ、動けなくなった。

「っんだこりゃぁ?」

「遅くて待ちくたびれたから、逆に凍らせてみたんだけど。どう? アリスリーゼもキグナスもビックリしそうだろ?」

 思わず、お前はジーパンでもはいてる刑事かとツッコミたくなるのを我慢したが、口から出てきたあおり文句は大差ないものだった。

「一応、殺さないように、ニブルヘイム並みの威力にはしないように抑えたんだけど。強すぎたかい?」

 自分が唱えはじめたのより、明らかに後から魔法を行使した雅人が、はるかに強力な魔法を具現化させたことを理解して、オーガは寒さだけでない震えに襲われている。

「なに……しやがる……」

「なにって、いい機会だから教えてやろうと思って。本物の魔法ってヤツをさ」

(くぅーっ、この上から目線。たまらん)

 どこぞの特級みたいなセリフは、見下す感満載で気持ちいいったらありゃしない。

「まずさ。そもそもどうして詠唱とかしてるわけ?」

「だっ……そうじゃなきゃ、魔法は使えないって……」

 ようやく、圧倒的な力量の差に少しは気づいたのか、震えながら答えるイジメの主犯格。

「それ、試したことあんの? ルディみたいに、実験したことあるわけ?」

「る……?」

 なんだよ。

 ルーデウスも知らないのか。

 って、なろうなんて、ヲタク嫌いじゃ知らねぇわな。

「簡単さ。慣れてしまえば、詠唱なんてバカバカしくなる。こんな風に」

 そう言ってから、一瞬で魔力を魔法に練り上げる。

 もちろん、池井が数分間全集中したのよりも多い魔力を。

「詠唱しないと、こんなこともできる」

 半身が炎、もう半分が氷の軍団長がやったことを参考に、握り拳から指を開く。

 指が伸びるたびに炎、氷、雷、風、土、重力、爆発、光、闇、聖の上級魔法を同時に展開させた。

「あぁ、無詠唱なんて高度なことは、君の頭ではできなかったか。しょせんは凡人だもんな」

 あぜんとするオーガに、ヘラ、そしてミッツ。

 あぁ、楽しい。

「ふ、ふざけんな……俺様は天才だ。俺様は世界最強。俺様は天下ムソーだ……」

 ブツブツ独り言を言いながら、なんとか半身をおおう氷を解凍して脱出した。

「てめぇに、ヒクガエルなんかに負けるわけには、いかねぇんだっ」

 やぶれかぶれになったのか、肉弾戦を挑んでくる。

 パンチを繰り出してくるが、遅すぎてよゆうでかわせる。

「っくそっ! 当たれば……当たればてめぇなんか……」

「当たったらどうにかなると思ってんの?」

 性格の悪い、甲子園優勝投手の従兄弟と対戦した高校球児じゃないんだ。

 狙い球(ストレート)がきたからといって、当たるわけもないし、当たったからといってホームランを打てるわけもないぞ。

(まぁ、昔から嫌いだったんだよ、あんたのことは。ってのは同感だな)

 そんな風に考え事をしながらでも、まったく当てられる気がしないパンチを避け続ける。

「クッソ。よけんなっ」

「ハエでも止まりそうなパンチをしながらそんなこと言っても、説得力がないよ」

 雅人は余裕をもってかわしているが、ニンゲンにしては拳のスピードは早く、ビュッと風を切る音を鳴らしながら、虚しく空を切っている。

(これ以上はらちがあかないな……)

 いい加減、この茶番もあきてきた。

 雅人はため息を吐くと、仕方なくパンチをもらうことにして、避けるのやめてみた。


***


「はっはっはっ!」

 オーガのパンチに恐怖で固まったのか、ヒクガエルが動きを止める。

 絶好のチャンス。

 思い切り腰をひねって、サイコーのパンチを繰り出す。

 あきらめたのか、ヒクガエルのヤツはパチンと指を鳴らすが、それでなにが起きるわけもない。

「うぉぉぉぉぉっ!」

 ドガっ! という派手な音を立てて池井のこぶしが魔王にぶち当たる。

 生意気にも腕で防御しやがったが、無視してもう一発殴りつけてやる。

「っ!」

 魔王の腕が、あまりに強力なパンチの威力でちぎれる。

「あっはっはっは! ざまぁねぇなっ!」

 愉快で仕方がない。

 なにが魔王だ。

 生まれ変わったって、ザコはザコ。

 てめぇは一生、ヒクガエルなんだよっ。

「死ねっ」

 もう一度殴りつける。

 だが、おかしなことが起きる。

 殴ったはずの腕の、手首の上辺りから先が見えない穴に消える。

「あ? 痛っ!」

 頭の後ろに、自分のパンチが当たる。

「な、なんだっ?」

 気のせいかと思い、もう一度殴る。

 だが、同じことが起こる。

「なんなんだよっ!」

 ムカついて何度も殴るが、そのたびに殴られるのはオーガ自身だ。

「はぁはぁ、なんだ……なんなんだよ?」

 自分にタコ殴りにされ、フラフラになる。

「ふ……ざけん……な……」

 あまりの痛みに膝をついてしまう。

 この……最強の俺様が……こんな……みじめな……。

「ジャスト一分。夢は見れたか?」

 魔王の言葉とともに、オーガの視界が一変した。

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