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俺、ヲタクでイジメられてたけど、異世界で魔王に転生したので、クラスメイト全員に復讐します!  作者: JKL
第2章 イジメられてた俺、転生したので主犯格のDQNに復讐します
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第3話 コレクション

今回もオーガ王の胸くそ悪い性格が全開なので、残酷なシーンが苦手な方は、前半を読み飛ばしてください。

「お疲れ様でした。今日も無事、全頭狩れました」

「ふん、当たり前だろ。まぁ、最後の子犬どもはヒヤッとしたがな」

 オーガは渡された濡れたタオルで返り血を拭いた。

「間違って小屋に入られて、中のコレクションを壊されたら、たまったもんじゃねぇからな」

 オーガの言葉に、側近が笑う。

「それにしても、牛はつまんなかったなぁ。肉が食えるわけでもなく、狩って楽しいわけでもないなら、あいつらはなんのために生きてるんだろうな」

「ご期待にそうような獲物を調達できずに、申し訳ございません」

「あぁそうだな。最近、つまんねぇ獲物ばっかりだ」

 その顔には、同じヒューマンを殺した罪悪感のカケラもない。

「これで何匹目だったかな」

「百は超えたかと。慣れるとはじめのころの楽しみも薄れてしまいますな」

「まったくだ。最初のころは、殺すだけで気分が高揚したもんだがな。それも段々飽きてきて、次は命乞いする無様な姿が笑えたもんだが……最近は張り合いがねぇったらねぇよ。物言う獣どもは弱えからな」

「オーガ王。終わりました」

 ハンターが害獣を撃ち殺したようになんの感慨もなく、王が殺した者への経緯も憐れみもなく悪態をつく。

 それを聞きながら護衛隊長はうつむいたまま、先ほど幼い命を散らせたばかりの兄妹の遺骸を手にしていた。

「ちゃんと血抜きはしたか?」

「……はい」

 腐敗しやすい血液を抜いた遺体を護衛にもたせ、オーガは小屋の中へと入っていく。


「あぁ、ここはいつ来ても楽しいな」

 小屋の中に灯り点けさせたオーガは、壁一面に飾れたモノを見て、恍惚とした表情を浮かべた。

「そ、そうですな……」

 さしもの側近も引き気味だが、オーガは気にもとめない。

「どこに飾ろうかな……」

 少年のように無邪気な笑顔でコレクションを見回しながら、今回の獲物を納めるべき場所を探している。


「さっきの子犬どもはそうだな…一つに串刺しにして、そこの空いてるところに飾っておこう」

 オーガの指示どおりに、護衛隊長が黙々と作業する。

 哀れな兄妹の身体を一本の串で刺してから、防腐効果のある魔法の薬が満ちた瓶に沈める。

(……助けられなくてすまん。それに死んだ後までこうして辱めてしまい、申し訳もない……せめて……せめてご遺体はずっと、一緒に居させてあげるからな)

 護衛隊長は惨劇に無力な自分を恥じながら、犠牲者に心の中で弔意を示した。


「……できました」

「あぁ、なかなかの出来だな」

 オーガ王が頬を紅潮させてつぶやく。

 可哀想な二人の隣には、猫族の母子と思しき遺体が飾られている。

(悪趣味だ……)

 それだけではない。

 この小屋の壁はドアを除いた全面に、オーガ王が趣味で殺戮した獣人の遺体が飾られているのだった。

 皮だけ剥がされた遺体や、首だけの遺体。

 腹部の肉がない内臓だけの遺体など、老若男女、獣人四種族の別を問わずに飾られている。

 比較的、動きののろい牛族の遺体が少なめというのが特徴だろうか。

 識別するために付属しているラベルから傾向を読み取れば、逃げるのが得意ではない牛族のモノは比較的古く、最近はすばしこい犬族や猫族のモノが多いということだろうか。

 普通の精神では見るに耐えない、オーガ王自慢のコレクションだ。


 王は完全なるサディストで、弱者に価値を認めていない。

 唯一、彼が弱者に求めたこと。

 それはオーガの悦楽のため虐待され、命乞いをしたうえで、むごたらしく死ぬことだった。

 その意味で、種族として魔力も戦闘力も低い獣人は、格好の獲物だった。

 獣人にとって不幸なことに、寿命が短く繁殖力の高い獣人は、消耗品としての奴隷の需要が高く、ありふれていた。

 ゆえに、非常に安価で購入でき、使いつぶせる。

 奴隷となった獣人がすぐに『入れ替わる』のは珍しいことではなく、オーガの悪行は隠匿され続けていた。


「しかし、これだけやるとしゃべるケモノどもを殺すのにも飽きてきたな」

 ふぅ、とため息を吐きながらオーガがつぶやく。

「いつかアールヴとか、ダークエルフをやってみてぇな」

「……アールヴ奴隷はなかなか出ませんからな」

 歩く宝石と呼ばれることもあるアールヴは奴隷供給がほとんどなく、数年に一度という頻度だ。

「だからあの時、大金を積んででも買えばよかったんだよ」

 二年ほど前。

 アールヴの幼い姉妹が奴隷オークションにかけられた。

 十歳前後ながら見目麗しく、多くの買い手がついて値が高騰した。

 オーガも側近に命じて参戦したものの、予算の数倍の落札額とあってはどうしようもなかった。

 そのことを未だにオーガは悔いては、側近たちに不満をもらす。


「ダークエルフはそれなりに出てるんだろ? なんで買えねえんだ?」

「……実は……奥方様から止められております」

「あぁん?」

 はじめて聞く話に、オーガはとたんに不機嫌になる。

「ヘラ様は……獣人ならオモチャとして目をつぶるが、ダークエルフは慰み者ともなるので、許さないと仰っておいででして……」

「ッチ!」

 舌打ちに、側近も護衛隊長も恐怖で首をすくめた。


 イライラしはじめたオーガは危険だ。

 サディストの矛先は、なにも獣人だけに向けられているわけではない。

 意に沿わない配下も、何度もミスを犯せば殺される。

 決して自分への批判は許さないことからも、典型的な暴君と呼べる王だ。


 だが、魔導王国の国制がオーガの地位を保っていた。

 魔導王国は対外戦争を担当する国王と、内政や外交を担う元老院の両者が、権力のバランスをとっている。

 魔力絶対主義と呼ばれる、魔力量の多い者ならどんな出自であっても王になれる社会的流動性を担保するシステムと、先祖代々の貴族だけが席を有する元老院という、硬直的であり、安定的な機構が並び立つことによって、社会の躍動感と安定性を両立させていた。


 いくら王が望んでも、元老院がノーと言えば予算が下りず、戦争をすることができない。

 逆に元老院が開戦を決定しても、王がサボタージュすれば戦争には勝てない。

 歴代の王と元老院はそういう相互牽制のバランスの上に立っていた。

 だが現王であるヴァーク朝第四代国王、オーガ=ヴァーク=アデシュの治世にその均衡は傾いた。

 オーガ王の妻、前王の長女であるヘラ=ヴァーク=アデナイが、もって生まれた政治力で元老院の中に王党派を形成し、議題によっては国王の意志を国政にごり押しできるほど、勢力を伸ばすことに成功したのだった。

 今の自分が王として好き勝手できるのは、妻のおかげ。

 それを自覚しているからこそ、オーガは妻に頭があがらない。


「王よ。それよりも、魔族を狩るのは面白そうだとは思いませんか?」

 側近は、自分たちに火の粉が降りかかる前に話題を逸らそうと試みる。

「魔族ぅ? あぁ、今犬ころどもの住み処に攻めこんできたって話だったな。面白そうじゃねぇか。確か、魔導士を百人くらい送ってたな。そいつらに命令しておけ。魔族を生け捕りにして連れ帰ってこいってな!」

 どうやら側近の目論見は成功したようだ。

「生け捕りに失敗しても、魔導障壁があるので勝利は確実です。損害を負った魔族の領土にこちらから攻めこんで、山狩りをしてもいいかもしれませんね」

「ダイロトの勝利以来、数百年ぶりの対魔族戦争の勝利に我が国が貢献し、さらにそのあと、未だかつて誰も成し遂げたことない、魔族領への侵入を果たせば、オーガ王の盛名は、永く歴史に刻まれるでしょう」

「あぁ、それは楽しそうだな。くっくっく。魔族とかいって。イキがってるやつらが、どんな顔で命乞いするか、想像するだけでイキそうだ」

 はっはっは、とオーガ王が笑うのにあわせ、側近や護衛隊長も笑ったのだった。

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