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俺、ヲタクでイジメられてたけど、異世界で魔王に転生したので、クラスメイト全員に復讐します!  作者: JKL
プロローグ イジメられてた俺、自殺を思いとどまりました
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第5話 三途の川?

 ここは……?

 気がつくと、世界は迷彩色に染まっていた。

 しかも、地面に足を着けている感覚がない。

 それどころか、立っているのかどうかもわからない。


「やぁ、お待たせしました」

 空間が歪んだと思ったら、朝会った、母の顔形をした存在が現れた。

「楽しみは最後に取っておくタイプでね。君を残しておいたから、退屈しただろう?」

 退屈もなにも、時間の経過がわからない。

 そもそも、時間が流れている空間なのかもわからない。


「四十人、多いね。こんなにたくさん一度に転生させたのは初めてで、疲れちゃったよ」

 転生……?

「そう。君の好きな異世界転生ってヤツだよ」

 突然何を言っているのだ、コイツ……母の顔を被った自称神は?

 ええい、面倒くさい。とりあえず、存在Xとでも呼ぼう。

「君は殺された社畜サラリーマンかい?」

 なんかさらに面倒になりそうなことを言い出したが、とりあえず無視だ。無視。


「まぁいいや。何が起こっているかわからないだろうから説明するね」

 うむ。苦しぅない。早く説明せよ。

「なんか、死んだら突然態度がデカくなったね」

 死んだ?

「そう。君はお望み通り死んだんだよ。教室で起こった、原因不明の爆発でね」

 原因不明の爆発?

「あ、勇者と魔王の戦いの余波、ではないよ」

 さいですか。

 転生先は蜘蛛ではなさそうでヨカッタデス。

 ところで……他の連中は?

「みんな死んじゃった。これで少しは気が晴れたかい?」

 まさか。俺の手で殺してやると誓ったばかりだ。

「あはは。いいね、キミ。やっぱり見込んだだけのことはある」

 見込んだなら、殺させろよ。

「安心して。さっき言ったでしょ。全員転生させたって」

 あぁ、そうだったな。

 殺させてくれるなら、あんたに感謝しないとな。

「いいねぇ。ギラギラしてる。たとえ復讐だとしても、そうやって、全部をかなぐり捨てても欲しいものがあるって方が、人生楽しいよ」

 ……なんかあんた、どこかのレンカノみたいなこと言うな……。


「ごほん。話を戻すね。実はクラス全員、一箇所にまとめて転生! ってやるのが一番簡単なんだけど、そうしなかったんだよね」

 なぜだ?

「そうなったら、君は切り捨てられるでしょ」

 まったく否定できない。

 今朝死のうと思った俺は、クラスメイトにダンジョンで突き落とされた場合に、魔物を食べてまで生き残ろうとする意志があるとは思えないのだ。

 ありふれているかどうかにかかわらず職業もないし。

「せっかく面白そうな素材を見つけたのに、あっさり殺されちゃったらつまらないじゃないか」

 つまらない、ねぇ。

 つまり、あれか?

 俺や、他のクラスメイトが殺し合いをするのを見て楽しもうって腹か?

「ご名答。だって、クラスメイトみんなで協力して元の世界に戻ろう! なんて、見てて面白いかい?」

 そういうのもどっかに需要あるんじゃないのか?

「ないよ。そんな、飛び上がりそうな名前の雑誌にだって載りそうにない友情モノ。今日日、誰が見たいんだよ」

 箱庭から、食糧にされないように脱出するのは大ヒットしなかったか?

 まぁ、そんなことはどうでもいい。

「ここまではいいかい?」

 ああ。大丈夫だ。

「話が早くて助かるよ。君のクラスメイト、ヲタク嫌いが多くて、異世界転生って言っても話が進まない、進まない」

 それはご苦労様。

「……ちょっとパラメータいじり過ぎたかな……」

 ん? 何の話だ?

「いや、こっちの話」

 そうか。


 あの、ところで……一ついいか。

「ん? なんだい?」

どうして……俺の母親の姿なんだ?

「ああ、またその話。本当の姿は君には情報過多で、気を失っちゃうからね。仮初の姿を見せておくことにしてるんだ。人間と会うときはね」

 ……ガイアって名前だったりするか?

「ギリシア神話? それとも君は転生者としてリィーンか、魔王になってノーチェとでも名乗る気かい?」

 いや、それ以上はいいや。

「ふぅん、まぁ、いいなら良いよ」


 説明を続けてくれ。

「概略を言うと、これから君が、そしてクラスメイトが既に転生している世界は、魔法がある世界だ」

 異世界モノなら定番だな。

「まぁね。で、魔族と、ヒューマンが争ってる」

 勇者と魔王も居たりして。

「居るよ。というか、勇者は七人居る。喜ばしいことに、全員、君のクラスメイトだ」

 ……なら、俺は魔王になりたい。

 ……ちょっと待ってくれ。

 気づかなかったけど、俺、自分のこと俺とか言ってるよ。

 あれ? なんで?

「あ、気づいた? 簡単に言うとね。君は魔王になる選択肢しかなくて、その準備をすすめているおかげで、既に魔王の人格の影響を受けてるってわけ」

 なるほど、って、それは転生しても俺なのか?

「暴虐の魔王様もそんなこと言ってたよねー」

 それは転生じゃなくて、殺してからよみがえらせたらだろ。

 って、そうじゃなくてだな。

「でも魔王じゃなきゃ、みんなに復讐できないよ?」

 ……それは困るな。

「あはは、そんなに復讐したいんだ。嬉しいよ。楽しいものが見られそうで」

 ……存在Xというよりは、管理者Dって呼びたくなるな。

「どっちも、キミの悪意しか感じない素敵な呼び方だね」


 うぉほん。

 とりあえず話してくれたところまではわかった。続きを聞かせてくれ。

「うん。復讐がしやすいように、全員同じ世界、同じ時間軸に転生させるようにしておいたよ」

 時間軸?

 つまり、生まれは少しずつ違うということか。

「転生ものに理解があって、頭がいい人は話が早くて助かるなー」

 褒めてもなにも出ないぞ。

「他のみんなは、転生先を選ばせてあげた。面白かったよ、性格が出て。勇者、王様、聖女、商人。総勢三十九人。こんなに大量の転生者を受け入れると、世界のシステムに負荷がかかりすぎるから、少しずつ産まれるタイミングをずらしたってわけ」

 誰が何に転生したかは教えてもらえるのか?

「残念だけど、こちらからは教えられない。でも、魔王なら知ることができる」

 なんか、魔王だけ異様にチートじゃないか?

「そう?」

 だって、勇者が七人も居るってことは、それだけ魔王が強いってことじゃないのか?

「まぁ、七人も居たら、世界の半分をあげることもできないよね」

 なぁ、そのチョイチョイ挟むサブカル知識は、いったいどこで得たんだ?

「言っただろ。君の概念では神に近いって。それくらいは知ってるよ」


 ……。

 それはそうとして、魔王が強いっていうのは否定しないんだな。

「正確に言えば、魔王というより魔族そのものが、かな。もちろん、魔族をすべる魔王は特別強いけどね」

 じゃあ、なぜこれまで魔族がヒューマンを蹂躙して戦いを終わらせていないんだ?

「突っ込んでくるねぇ。やり難い」

 そう言うわりには楽しそうだけどな。

「うーん。まぁこれは転生したらすぐにわかるからいいけど、魔族の領域に向けて、ヒューマン側が強力な防衛体制を敷いているから、というのが一応の答えかな」

 防衛体制?

「一言でいうと、合従に近いかな。ヒューマンだってバカじゃない。攻められたらひとたまりもないのに放置しておくわけないだろ? まぁ、ヒューマン内部で争いがあるから、不完全だけど」

 なら、俺は魔王になったら連衡で対抗すればいいわけだ。

「そうかもね。でも、魔族領と接する三辺境伯は仲は悪いけど、敵の敵は味方って事で軍事的には強固な同盟を結んでるから難しいんじゃないかな。あ、これ以上は、転生してから調べてよ。転生作業で疲れてるから、今日はもう寝たいんだ」

 神のくせに疲れたりするんだな。

「世界を六日間で作った某唯一神様も、七日目は休んだだろ?」

 それもそうだ。


 最後に教えてくれ。本当に、魔王になればアイツらに復讐できるだよな?

「君の復讐が成功するかは知らない。それはキミの努力次第でしょ? 逆に、魔王にならなければ復讐できない。それだけは言えるよ」

 わかった。喜んで魔王に転生するよ。

「ふふふ。楽しみにしているよ。君の復讐ライフ」

 ……運命をもてあそぶ神か。悪趣味だな。

 もしかして、ヒトガミって名前だったりするか?

「違うよ。君も中年の引きこもりニートじゃないだろ?」

 確かに。

 なら、きっとルドラサウムという名前に違いない。

「年齢的にアウト」

 うるさいっ!


「そろそろ時間だね。頑張ってー」

 周囲の空気が変わったのを感じる。

 それまでの居心地のよさが消え、体の中で不協和音が響いているような不快感にさいなまれる。

 ここでの時間が終わりなのだとすんなり理解できた。

 あぁ、せいぜい楽しませてやるよ。

 雅人が笑うと、段々と視界がぼやけてくる。

「契約成立おめでとう。そしてありがとう。キミが充実した二度目の人生を歩まれることを祈念してるよ」

 俺は剣豪のじいさんじゃないぞ。

「そんな憎まれ口がまだ言えるのかい?」

 だがその言葉を最後に、雅人の体は徐々にくずれていく。

 くずれた破片は毒々しい色の煙となって周囲に溶けこむ。

 そして最後はひとかたまりになってどこかへ飛んでいった。

「サイは投げられた。見せてもらうよ。君の復讐心がどれほど強いか」

 雅人のくずれた煙を見送ったあと、神と名乗った者が笑いながら呟いたのを聞くものは、どこにもいなかった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 有名どころとはいえ、流石に他作品のネタバレはやめたほうがいいのでは?
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