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俺、ヲタクでイジメられてたけど、異世界で魔王に転生したので、クラスメイト全員に復讐します!  作者: JKL
第1章 イジメられてた俺、転生したのでまずはクラスのモブキャラカップルに復讐します
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第20話 戦闘のあと

 エリーの活躍により、南北から兵を引き入れることができたため、獣人との戦闘はあっさりと終わった。


「無駄な抵抗をしなかったのは賢い選択だったな」

 敗北を悟り、命乞いをする獣人たちを拘束する。

 幸いなことに、魔族と獣人の双方にはほとんど犠牲者は出なかった。

「魔導士とやらもたいしたことないな」

 恐怖に固まってしまった獣人たちと異なり、パニックに陥り、やみくもに魔法攻撃をしてきた魔導王国からの援軍は、見せしめに全員殺している。

 抵抗すれば死を。戦わずに降伏すれば許す。

 ハッキリとした区別をつけることができた。

 これで辺境伯領を、そして他領を攻略するときにやりやすくなる。


「魔王様。大勝利、おめでとうございます」

「あぁ、エリー。大儀だった。何より無事で嬉しいぞ」

 念のため、南辺境伯領から進む軍に同行させていたエリーが姿を見せてホッとする。


「我が君、私もほめてください」

「フォーリも、マーキアもご苦労だった」

 苦笑しながら二人の藩王もほめてやる。

 まぁ、こんなど天然なフォーリも、戦場に立つとオニ族最強の戦士に一変する。

 日光を浴びても死なないし、苦手な花のニオイもない。


 この細い腕のどこにそんな力があるのかと思うが、百八十センチある魔王の俺よりも五センチほど高い身長と、長いリーチを活かして振り回してくるモーニングスターは、当たるそばから敵を吹き飛ばす悪夢のような威力だ。

 ……髪は青くないぞ。メイド服も着ていないし。


 それでいて、中距離攻撃だけでなく、近接格闘でも笑いながら敵をぐちゃぐちゃにしてしまう。


 しかも、物理攻撃だけでなく、魔族の藩王になるだけに、魔力も強い。

 いろいろ抜けているうえに、受け応えもズレまくる時があるが、戦士としてはとても有能で、絶対に敵に回したくない一人だ。

 まぁ、そんなふうに中身をディスってしまったが、彼女がいると場が和む。


 リーダー役のカーラ、ここぞというときにだけ発言するが確実に場を締めるアヤ、マジメなワカナと、固くなりがちな幹部たちの中で、フォーリの天然さは貴重な癒しだ。


「マーキア、異変はないか?」

「はい、我が君。あとで細かい話は報告書を提出させまーす」

 マーキアも根はけっこうマジメなのだが、精霊が堕落した邪精霊のため、時々、少々イタズラ心が漏れてしまう。

 本人はマジメにやらなければ、と思っていても、つい口調が軽くなってしまうのだ。

 幼い見た目と合わさって、そこが彼女の魅力でもある。


「あ、エリーには私が先に行って報告するように命令したんですよー」

 周囲の空気を敏感に読み、マーキアがフォローする。

 藩王を差しおいて先に魔王に声をかけたエリーへの反感をかぎ取ったのだろう。

(こういう気配りはマーキアが一番だな)

 マーキアのおかげで火種は抑えられたようだ。

(エリーはちょっとお仕置き、マーキアは褒美をやらないとな)

「魔王様、顔がにやけてますよ」

 マーキアが小声で注意してくれる。

 いかんいかん。魔王たるもの、威厳を見せなければ。

「まぁ、女にだらしないとはみんな知ってるから、いまさらですよー」

 うるさい、マーキア。お前もお仕置きに変えるぞ。


「あら、魔王様。愛しの抜けがけワカナちゃんですよー」

 妖魔で構成された北方面軍を率いたワカナが口を開く前に、近づいてきたのに気づいたマーキアがからかうように声をかけた。

 おかげでかわいそうに、ワカナは真っ赤になって声が出せなくなる。


「ウソウソ。でも、次はみんなに順番譲ってねー」

「も、もちろんです。昨日はすみませんでした」

 ワカナをというか、藩王どうし、いろいろとお互いを知りつくしているマーキアが、そろそろやり過ぎだと思ったのか助け舟を出す。

 というか、ワカナが話すわけもなく、俺も何も言っていないのだが……。

「魔王様、女の勘を舐めすぎです」

 少しむくれたフォーリにまで言われてしまった。

 ……はい。気をつけます。


「えっと、ワカナ、何かあったか?」

「いえ、我が君。アールヴもおとなしくしてくれていました」

 アールヴは自尊心が高く、魔族は当然ながら、他のヒューマンのことも信用しないし、ぶっちゃければバカにしている。

 事前に盟約を結んでいても安心できなかったが、ワカナも兵たちも無事でなによりだ。

 エリーとパルムが脅したのがそうとう効いたようだ。


「我が君、辺境伯以外はここに置いていくということで、変わりはありませんか?」

 捕虜の拘束が完了したかの確認と、見張りの配置を視察したカーラが戻ってきて言う。

「あぁ、辺境伯は首都の攻略で役立つからな」

 多少の損害は覚悟していたが、フタを開けてみればほぼ無傷だ。

 この勢いのまま、一気に辺境伯領を攻め取りたい。

「かしこまりました。では、私はここにとどまります」

 カーラの言葉にうなづいてやる。

 国内を統一したとはいえ、まだまだ不穏な動きがまったくない状態にはなっていない。

 シャブラニグドゥに留まって有事にそなえるアヤと、国境付近に待機するカーラでなにかあった場合にそなえてもらう体制としている。

 進軍するのは、ふたりの配下を除いた軍勢だけだ。

「全軍、半日の休息後に辺境伯領首都に向けて進軍する。しっかり休んでおけ!」

 雅人の言葉を受けて、藩王旗下の中隊長クラスが兵士たちのケアに散らばっていった。


「……マーキア、頼みがある。別働隊を率いて牛族の本拠地に向かってくれ」

「えっ……」

 ヒューマンが呼ぶところのダイロト、数百年前の戦いで敗れるまでハクトックナイと呼ばれていた地での戦いの翌日、東に進んだ地点で西辺境伯領内の地図を見ていた雅人はあることに気づき、マーキアを呼ぶ。


「わたし……なにかやってしまいました……?」

 今にも泣きそうな顔をしている。

 無理もない。魔族はヒューマンに比べて圧倒的な力を持つため、戦略的思考というものが存在しない。

 なぜメインの戦場から離脱させられるのかわかっていないのだろう。


「よく地図を見ろ。ここ、牛族の本拠地リンスルーはハクトックナイから西辺境伯領首都まで進む進軍路から近い。ここを無視して進んだ場合、リンスルーからこちらの輜重部隊が襲われる可能性がある」

「あっ……」

 理解したようだ。

 リンスルーからゲリラ戦術をしかけられたら、食糧輸送が滞って、干上がってしまう。

 戦争での勝利に必要なモノは、ヤンキー魂でひっくり返されてしまうような霊験あらたかな大和魂とかではなく、食糧と休息の二つだと、確か自称未来の宮廷画家だか不敗の魔術師だかが言っていたはずだ。

「マーキア、これは我が軍の勝利に絶対的に必要な作戦だ。やってくれるか?」

 マーキアは力強くうなずいてくれた。


 納得したマーキアは、邪精霊軍の半ばを率いてリンスルーの包囲に向かった。

「犠牲を出してまで攻略する必要はない。敵が城から出てこれなければ、マーキアたちの目標は達成だ」

 少し口を酸っぱくして言い聞かせる。

 それも、マーキアに言っている体でマーキアの配下に伝わるようにだ。

 ここで妙な功名心でも出されてしまうと、敗れはしなくても無駄な犠牲が出かねない。

 だからこそ、藩王直々に軍を率いさせないといけない。

 藩王の下の領主クラスだと、魔王の威光は伝わっていても、望んでいない手柄争いで無理攻めをしかねない危うさがある。

 魔王軍とはいえ、まだまだ全軍の掌握は完全ではない。


 リンスルーへの抑えを置いたので、雅人は兵を疲れさせすぎない程度にせかして、辺境伯領首都に向かう。

 中国大返し、とはいかないが、敵の領地内だと考えると、なかなかな進軍速度だと思う。

 あのサルというか、ハゲネズミは自分の領地で、しかも糧食を沿道の住民に金で用意させて成し遂げた偉業だ。

 比較対象にされても困る。


 とはいえ、共通することはある。

 兵は神速を尊ぶのだ。

 無理は禁物だが、敗報が伝わって間もなくなら敵は首都防衛の体制もできていないだろう。

 そこを狙う。


 辺境伯領首都のバルギャリア付近に軍を展開すると、遠目に見ても城内の混乱がわかるほど、動揺していた。

 無理もない。

 戦闘らしい戦闘もなく全兵力の大半が敗北したせいで、こんなに早く攻められるなど、思ってもいなかっただろうからな。

 残っているのは、治安維持のための部隊と、引退した元兵士たちだと、捕虜たちからも聞いている。


「なんと言うか……獣人ってのは、基本的に平和ボケ民族なのか?」

 城内の混乱は想像以上で、身体能力に優れるオニ族が、城門の閉まる前に二つ制圧してしまえたほどだ。

 この状況では、残り二つの門を閉めてもたいして意味はないのだが、四方から攻められてはたまらないのだろう。

 一応、北と東に面した門は閉じられている。


 門をくぐると、そこは生活臭あふれる街中だ。

 ヨーロッパのように、街全体を囲む城壁があり、その中に市民が生活する街がある。

 一番内側に、領主の住む本当の意味での城がそびえている。

 とはいえ有翼の妖魔や、邪精霊のうちでも空を飛べるシルフ相手では十五メートルくらいの城壁など、敷居をまたぐくらいの感覚で飛びこえてしまう。

 しかし、だからと言って力攻めすれば、多少の犠牲が出かねない。

 どうしたものか。


「籠城より玉砕を選んだのか……」

 リンスルー包囲軍から急使が届けた報告では、牛族は助けのくる可能性のない籠城戦ではなく、果敢にも撃って出たらしい。

 マーキアの軍は敵の蛮勇に驚いたもののすぐに対処し、族長以下多数の捕虜を得たということだ。

「これは使えるな」

 雅人は、新たな指示をマーキアに伝えるよう、使者に命じた。

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