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第6話 研究者

 今日も遅くなりまして申し訳ありません。

 この後の話はノクターンの方に後日? 書く予定ですが、とりあえず明日の本編を優先させていただきたいと思います。

 なお、これで幕間3は終わり、明日からは第4章に移ります。

 勇者との対決は第5章を予定していますので、引っ張って申し訳ありませんが、ご了承ください。

「マサトー様。ヨウヤク来てくれたナ」

「別に、来たくて来たわけじゃないぞ」

 出迎えたホープに対して、雅人はゲンナリしながらつぶやく。

「ナンジャ。ティナとかいうネコ娘と同じく、マサトー様もツンデレとかいうヤツかノ?」

「ツンデレって……どこで覚えたんだ、そんな言葉」

 ホープの前でうかつなことを言うと、知識欲旺盛すぎていろいろと始末が悪いので気を付けていたはずなのだが。

「ウフフ。内緒じゃノ。イイ女は秘密を着飾っているモノじゃロ?」

 黒の組織のメンバーみたいなセリフはやめてほしいが、これも雅人が教えてしまったのだろうか……。

「ところで。頼んでおいた研究はどんな状況だ?」

「オォ。そうジャ、そうジャ。いやぁ、マサトー様の頼み事は楽しいノォ」

 放っておくと、踊り出しそうなホープの後ろ姿に……いや、見てる間に実際小躍りをはじめた姿を見て、雅人は小さくため息を吐いた。


 ホープ=ウッペル。不死族のネクロマンサーだ。

 本来のネクロマンサーは、アンデットの研究や霊魂の召喚、ゾンビやスケルトンの覚醒を生業とする、れっきとした一つの種族である。

 戦闘能力は皆無に近く、使役するアンデットたちを身代わりに闘わせる。

 なお、不死族といっても本人はふつうに母親がいて、出産によって生をうけている。

 そして、アンデットを使役するから不死族に分類されるが、殺せば死んでしまう。


 だが、ホープは一風……といっていいかわからないが、変わり者だ。

 オブラートに包まなければ、変人である。

 死霊魔法と呼ばれる、種族固有の魔法だけに飽きたらず、ありとあらゆる魔法に精通することを目標に、さまざまな研究に勤しむ。

 それが下手の横好きレベルでなく、本当に優秀なのだ。


 性格は両極端で、興味があることには寝食を忘れて没頭するが、研究に関係がないことには見向きもしない。

(天才ってのは、こういうヤツが多いのか……)

 地球世界でも、ゲーム理論を提唱し原爆の製造にかかわったジョン=フォン=ノイマンは、自宅の食器棚の位置を覚えられなかったという逸話が残っている。

「きゃぁぁっ!」

(またか……)

 そして、おっちょこちょいすぎて……なにもないところでよく転ぶラブコメ体質かつ、なぜか雅人の前ではよく服が脱げるというラッキースケベ体質である。

(まぁ、環ほど全部脱げちゃうわけじゃないけど)

 せいぜいが下着姿になるくらいだが、それでもつい目が行ってしまうのは、男の悲しい業だ。


 前世では女っ気の皆無だった雅人としては、一応情を交わした相手なので、独占欲に近しい感情を抱いてはいる。

 いるのだが、こうも無防備だと一緒にいるだけでヤキモキさせられて疲れてしまう。

 とはいえ、ベビーフェイスにすらりとしたモデル体型で、この世界の……というか、アイェウェの民の美意識的には、美少女に分類されない顔立ちだ。

 なお、現代日本においてはアイドルグループのセンターを張るレベルである。

 さらには、自分たちが相手を好きか科学的に調べないと確定できない、某理系のバカップル並みの非恋愛脳と性格のおかげか、面倒くさがってだれも近寄らず、ライバルはほぼいない。

 雅人的にはラッキーなのだが、他人から性的な視線を自分のモノに向けられるだけでイラっとしてしまうので、積極的に人前に出さないようにしている。

 しかし、そんな雅人の心配をよそにホープはフィールドワークと称して外に出たがる。

 仕方なく、無理難題な研究を押し付けては研究に没頭させ、自主的な監禁状態に没入させることで引きこもらせていた。

 おかげで研究が進んでしまい、さらに難しい課題を出し続ける必要があるという、なんだかよくわからない状態だ。


「ん。かたじけナイ。じゃが、どうせこのあと、服を脱ぐのジャ。最初から裸でいいのではないカ?」

「そういう、情緒の欠片もないことを言うなよ」

 下着姿になったホープに、背中から服を着ていた服をかけてやったのだが、そんな身も蓋もないことを言い出したので、ため息を吐いた。

 まるで一つ目一本足の、某妖怪たちの知恵の神並みの品性だ。

(頭の回転が早いところも一緒。自分に向けられている男からの好意に鈍感なところも同じ、か……)

 おかけで、ここにくると幸せが逃げそうなくらいため息が止まらない。


 とはいえ、ホープほどの才能を使わないという選択肢もあり得ないのが現実だ。

 呪いの証拠を記録する魔導具など、魔導王国の最優秀研究員ですら唖然とした発明を形にする。

 雅人の断片的な知識を聞きかじっただけで、魔法とは異なる理の化学を、ゼロから作り上げる発想力と実行力の持ち主なのだ。

(研究中以外は、いたって残念美少女というのも、ある意味ギャップ萌えか?)

 ギャップといえば、虫も殺さないような幼い顔立ちをしているくせに、超肉食系だ。

 食事でなく、夜の話で。


「で、頼んでおいた研究は?」

 放っておくといつまでも脱線して戻ってこないので、再度同じ質問をぶつける。

「んー。さすがになかなか難しいノォ。元聖女様の協力があっても、一人では一般化できぬゾ」

 そろそろ勇者が攻めてきてもおかしくない。

 なんの対策もしないのは愚か者のやることなので、いろいろと方策は考えてはいる。

 純粋な強さだけで言えば、旧四天王の方が強いらしいので、どうにかして勇者たちとぶつけることも考えた。

 とはいえ、その線は難しい。

 オーガ=ヴァーク=アデシュは力を失って放浪中。

 剣聖は根源ごとパルムに喰われてアンデットにもできず、残りの二人を仲間にするのは現実的ではなく、諦めた。

 そもそも、対魔族のヒューマンサイドの希望がつまっているのが、勇者と聖女だ。

 おいそれと無効化できれば苦労はしない。

 だから発想を変えて、勇者と聖女の対魔族戦でだけ効力を発揮するなにかを解明しようとしているのだが、これが難しい。

 幸い、こちらにはチャーティという元聖女がいる。

 もちろん彼女も研究に協力してくれているのだが、単純に聖なる力というわけでもないようで、行き詰まってしまっていた。

 とはいえ、ホープ自身はそんな状況すら、「ハハハ。さっぱりわからんノォ」と、帝都大の准教授みたいなことを言いながら楽しんでいるようだ。

「とはいえ、マサトー様の言っていた、仮説と対照実験とやらのおかげで、わかってきたこともあるゾ」

「そうか……意味のない質問かもしれんが、どのくらいでわかる?」

 雅人自身は、勇者との戦いを想定して対策を練っている。

 だが、藩王たちやパルム、リナたちにはその方法は使いたくない類のものだ。

 だから、勇者たちとの戦闘は雅人が身一つで引き受けるつもりなのだが、ホープの研究結果が利用できれば、それに越したことはない。

「んー、こればっかりは、なんとも言えんノォ……」

「そうか。そうだよな」

 不確定要素を戦略に組みこむわけにはいかない。

 それで大失敗をしたのが旧日本軍なわけで、その轍を踏むつもりは毛頭ない。

「とりあえずわかった。無理をしない範囲で研究を続けてくれ」

 ケアしてやらないと、百由様みたいに不眠不休で研究に没頭するきらいがあるので、一言添えておく。

 そのまま立ち上がって、部屋から出て行こうとすると、ガシッと服を掴まれた。

「どこに行くつもりゾ?」

 ランランと目を輝かせているホープに、今日は……今日も空っぽになるまで搾られるなと、雅人は観念した。

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