第4話 内政チートな侯爵様が欲しい
すみません。今日も遅くなったうえに短いです。
昨日と違って、今日は二話投稿できそうにない予定なのですが、ご容赦ください。
ワカナが退出したあと、内政担当の官僚から報告を聞く。
ヒト、モノ、カネという切り口を聞いたことがあったが、その分け方で報告された。
「人材の採用と育成は順調ということだな」
手元の資料で確認すると、懸案だった人材面はかなり進展があったようだ。
そもそも四カ国を征服したことで、人材が増えている。
すでにできあがっている官僚機構も、一部だが利用できる。
お伽話のように、恐ろしい魔族に食べられた者がいないというのが大きい。
(まぁ、実際食べないんだけどな)
オニはいるが、農園で人間を育てたりしてない。
吸血鬼と淫魔はいるが、ヒューマンの血や精気を根こそぎ奪ったりしない。
おかげで、他国で不遇をかこっている人材が一発逆転を狙って、売りこみにくることもある。
しかし、在野の人材だからとバカにできるものでもない。
バウマイスター伯爵家は、槍で大車輪を回してた求職者のおかげで回ったわけだし。
アウブから見れば、本狂いだってとつぜん現れた平民だし。
というわけで、来る者は拒まない方針で採用を続けた。
もちろん、スパイの可能性もあるわけだが、そこは妖魔族の魔法でトランス状態にして、敵意がないことを確認した上での受け入れになる。
あとは有能なら責任ある仕事を与え、無能でも警備隊に編入したりして、少しずつ陣容を厚くすることができはじめていたのだった。
「ようやく経済的にも心配しなくてよくなってきたな」
資料に記された数字を見て、ホッと一息つく。
獣人領と旧魔導王国という、軍事機密で輸出できない魔導具の製作を除けば経済的にお荷物の地域を抱えた日々は、なんとか脱することができていた。
そもそも四ヶ国を征服したことで市場が格段に拡大しており、土地が豊かなアイェウェ本国でとれる食料品は、作れば作っただけ消費される。
そして、戦乱によって農地が荒廃して食いっぱぐれた農民たちの副業として、農作物の食べられない部分や、加工後のカスからアルコールを作り、蒸留させる工程を手伝わせているおかげで、輸出用の蒸留酒の生産も順調だ。
むしろこれまでのような余剰食糧だけでない、多様な原料からできるアルコールのおかげで種類も増やせて、好評らしい。
そしてあまりに好評なため、模造品が大量に出回っているという話も聞く。
著作権なんて言葉がない世界だ。
ニセモノを作っている方に、罪悪感などないだろう。
(とはいえ、それで健康被害が出て、こちらのせいにされるのは勘弁だな)
粗悪品はとうぜん安く、原料になにを使っているかわかったものではない。
戦後の目散ること、メタノールのような健康被害は避けたい。
べつに、ヒューマン側で被害が出るのは構わないのだが、それがこちらの蒸留酒のせいにされて顧客を失ったり、やはり魔族は恐ろしいみたいな話になると後々やっかいだ。
(たしか……斎藤典薬頭も同じようなことで悩んだな。あっちは薬だったか)
悪貨は良貨を駆逐するというが、ニセモノをのさばらせておいていいことはない。
ブランドを確立する必要があるだろう。
「たとえば……ガラス瓶に詰めて売って、回収するシステムとか作れないか?」
「なるほど、それならニセモノが入りこむ余地はなくなりますね」
ガラス瓶に入ったお酒は、お供え物としても鍛冶や戦争の神にすら好評だった。
まぁ、あれはネットスーパーで買った中身が好まれてるんだけど。
とはいえ、ガラスはまだなかなか高価だという。
地球の歴史でも、正倉院の宝物として残るくらいだ。
しかし、材料は魔導王国領と立憲君主王国領で間に合ったはず。
これも産業化できれば、かなりのプラスだ。
一石二鳥を目指して、雅人は研究開発を進めるように指示した。
(あー。また搾られるな……)
忙しさを理由に避けてきたが、そろそろ顔を出さないとむくれていそうだ。
嬉しさと悲鳴の混じったため息を、ばれないようにそっと漏らした。




