表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺、ヲタクでイジメられてたけど、異世界で魔王に転生したので、クラスメイト全員に復讐します!  作者: JKL
第3章 イジメられてた俺、転生したのでクズ野郎どもに復讐します
129/154

第33話 立憲君主王国滅亡7

 すみません。一応、超有名作品のネタバレに近いこと……というか、ネタバレそのものかもしれないことを書いております。

 あまりに有名ですし、前世紀の作品なのでネットで調べれはネタバレ注意で書いてありますし(Wikipediaのあらすじでも注意もなく書いてあるレベルです)、そうならない結末はないだろうという予想ができるストーリーですが、未読の方には深くお詫び申し上げます。

「裏切り者っ!」

「お前のせいで、父さんは死んだんだっ! 父さんを返せ!」

「わしの、わしの息子は、お前が起こした戦争で両目が見えなくなった。お前の眼もつぶれてしまえっ」

 フェルディナンドは、恐ろしいオニの少女からの逃亡に成功した。

 だが空腹に加え、何度も死にかけたことで精神が摩耗していたらしく、ホッとした瞬間に動けなくなってしまった。

 そこを通りかかった見回りの兵士に捕まり、首都に連行される。

 すでに首都は魔族との講和派が権力を握っており、城門は開け放たれていた。

 その城門から、フェルディナンドは吊るされた上に、民衆から罵倒されていたのだった。

「フェルディナンド様。魔王様からの伝言です。ば~~~かじゃねぇの? だそうです」

 意味がわからない。

 どうして自分がこんなに虚仮にされなくてはならないのだろうか。

「うぐっ」

「当たった! 父ちゃんの仇だっ」

「待て! 投石は止めよ!」

 子どもが投げた石が当たり、こめかみの辺りから血が流れる。

 一人が投げると、次々に石を投げようとする者たちが現れた。

 それを兵士たちが必死に止めようとするが、多勢に無勢で止められない。

「控えよ。この国の命運は、その男を殺さずに魔王様に引き渡さねば、危うい」

 リッカが現れ、一喝すると民衆は慌てて投石をやめた。

「みな、家に帰りなさい。今から魔王様がいらっしゃる。失敗して殺されるのは、私たち三人だけで十分だ」

(ふざけんなよ……勝手に、人の命を交渉材料に使うんじゃねぇ。俺が生き残るためなら、民衆どもなんて、何人死んだっていいだろうが)

 王妃であるリッカと王子が、フェルディナンドが呆然となって見ている前で、民衆を帰宅させた。

 だが、心配する人々は遠巻きに城門の様子をうかがっている。

(どうにか……逃げられないか……)

 フェルディナンドは、この期に及んでもまだあきらめてはいなかった。

 だが空腹は満たされず、兵士たちに捕縛される際に暴行された傷も痛む。

 しかも、数時間は腹と腕を縛った縄で吊るされていたせいで、体力が根こそぎ奪われている。

 ふと油断すると、意識が遠のいてしまうほどだ。


***


「魔王様。我が国の兵士たちは、悪王フェルディナンドにだまされ、戦争に従軍いたしました。どうか、この細首と、息子の首。そして元凶たるフェルディナンドの首の三つをもって、民衆、兵士たちの命。お助けください」

 雅人が城門の前まで歩いていくと、神妙な面持ちで待っていた王妃と王子が、膝を曲げる。

 そのまま、王妃と王子がそろって罪人のように膝をつき、首を垂れた姿を見て、様子をうかがっていた民衆たちがざわざわと騒ぐ。

(あぁ、これだよな。これが正しい王族の姿だ)

 雅人は満足したようにうなずく。

 決して、リッカが美人だったからだけではない。

(ちがうんだよ。だから、そんなジト目で見るな)

 横から複数の視線を感じる。

 しかし、今回は本当にリッカを接収するわけにはいかない事情があるのだ。

 そんな見境がないわけじゃないことくらい、わかるだろう?

「魔王様。どうか、王妃様と王子をお助けください。代わりに、私の命。お捧げいたします」

「魔王様。いえ。私めの命を代わりに」

 王妃と王子の行動に感動したのか、講和派の大臣たちが進み出てきて自分たちを代わりに殺せと言いはじめる。

 だがだれ一人、フェルディナンドの助命を行う者はいない。

「……とりあえず、あの罪人を下ろせ」

 殺すつもりも、戦利品にするつもりもないが、それをこんな交渉の初期に言うわけにもいかない。

 とりあえず、最大の悪役の身柄を引き渡すセレモニーを先行させた。

「あんた……本当にバカなのね。ねぇ、裏切って楽しい?」

 リナが、フェルディナンドをディスるように見下しながらつぶやく。

 絶妙に、住田秋(ヒクガエル)の人生を象徴するようなセリフになっているのはやめてほしいところだが……。

 とはいえ、バカにされてもおかしくはない。

 裏切って裏切って。そうして得た地位は、果たしてその犠牲に見合ったものだったのだろうか。

(まったく……出会ったばかりの沙優チャソみたいに、モノの価値がわかっていない大馬鹿者め)

 誰かを、誰をも裏切らずに誠実に生きてこれなかった。

 これを愚か者と言わずして、なんというだろう。

 しかし、だからこそ復讐することに心の痛みを感じない。

 フレアもブレイドもノルンもクズだったからこそ、ケアルも心に痛痒すら感じなかったではないか。

「魔王様ー。お願いです。王妃様を殺さないでー」

「王子様もだー。そこのフェルディナンド(クズ)が居なくなってから、王子のおかげで俺たち、生き延びられたんだー」

「これ、静かにせんかっ」

 様子をうかがっていた民衆たちから、声が上がる。

 王子の善行は、戦争にかこつけて不正蓄財していた貴族の屋敷から、強制的に食料を徴収して人々に分配したことを言っているのだろう。

(ここまで慕われていたら、長く放置するのは危険だな)

 全般的にクソな国王ばかりの中、すがすがしく潔い姿は好感をもてる。

(この辺は価値観かな……)

 クソな王族はたいてい、元クラスメイトの転生者だ。

 まだ戦争していない他の国の王も、苛烈な税の徴収や、美女と見ればさらって後宮にいれるなど、やりたい放題だという情報が入っている。

(ラインハルトが現れる前に、そういう国をどうにかしないと、復讐相手が殺されかねないな)

 全銀河の支配者を自認した王朝ですら、姉を奪われた少年の復讐で乗っ取られた。

 そのあたりは注視しておく必要がありそうだ。

「安心せよ。王妃も、王子も、民衆も、兵士も危害を加えるつもりはない。こちらを襲わない限りは」

 堂々と宣言すると、王妃と王子はホッとしたため息をもらした。

「財産についても、一般の民衆については手を出さない。我々は略奪をしない。ただし、不正な蓄財については、国家再建のために没収することがある」

「寛大なご処置に、深くお礼を申し上げます」

 深々と頭を下げる王妃と王子におうように対応し、面をあげさせる。

 正直、王子を生かしておくのはリスクである。

 正統な後継者が生き残っていると、不満を持つ者たちのみこしに担がれてしまう可能性を排除できない。

 だからこそ、獣人領ではサトミとティナは戦利品にしたし、魔導王国では王子を女体化させて王位継承権をつぶした上で戦利品として自由を奪った。

 軍事同盟はタックに子どもがいなかったので問題ない。

(とはいえ、ここで王子を殺すって選択肢はないよな)

 ここ立憲君主王国では王子を生かすことにした。

 理由の一つは、王子が民衆に慕われていることだ。

 マキアヴェッリではないが、民衆は愛する為政者を害することをためらわない。

 だが、自分たちが愛する者を奪われたり、傷つけられると激昂する性質を持っている。

 オクタヴィアヌスが状況をたくみに利用したとはいえ、元老院派の息の根を止めた戦争をローマ市民が支持したのは、カエサルが殺されたからだ。

(ま、最終的に殺すとしても、今である必要はないか)

 不慮の事故。

 病気に見せかけた毒殺。

 それ以外にも、暗殺する方法なんていくらでもある。

 ならば、今殺して民衆の怒りをわざわざ買う必要はない。

 それよりは王子を懐柔して、こちらの側につかせることができればなおよい。

「リッカ。貴様……国を薄汚れた魔族なんかに売り渡しやがって……。アルベール。貴様もだっ。我が息子なら、どうして最後まで戦わないっ!」

 民衆も王妃と王子の気高い犠牲の精神に感動し、また、雅人の慈愛あふれる処置に感謝していたというのに、その空気をぶち壊された。

「この、背信者! 裏切り者! 売国奴め!」

 ギャーギャーとさわいで、うるさくて仕方がない。 

「黙らせなさい」

「はっ!」

 王妃リッカの命令で、地面に下ろされたフェルディナンドの口に猿ぐつわがかまされる。

 いまだに「んー、んんー」とうなっているが、全員が無視して降伏交渉はにこやかなまま終わったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ