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俺、ヲタクでイジメられてたけど、異世界で魔王に転生したので、クラスメイト全員に復讐します!  作者: JKL
第3章 イジメられてた俺、転生したのでクズ野郎どもに復讐します
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第18話 盟主への復讐2

遅くなり申し訳ありません。

 岡田が雅人の隙を伺うようにしながら、ジリジリと間合いを詰めてきている。

 次は何が飛び出すかと楽しみにしながら、わざと隙をみせるように、雅人は無防備に立ち尽くすようにして構えを解いた。

「うぉぉっ! 死ねぇ」

 砂を蹴り上げて目つぶしを狙いながら、顎に向けて岡田のつま先が迫る。

 大ぶりの攻撃に、避けるのはわけないと上体だけをスウェーして、砂も蹴りもかわした。

 そうやって、のけ反らせるのを狙っていたのだろうか。

 岡田の右足が垂直まで上がったあと、再度かかと落としが迫ってくる。

「そのパターンも知ってる」

 秋田の小坊主みたいなセリフだなと思いながら、余裕をもってバックステップでかわして見せる。

(うーん。決まった)

 今の華麗なステップなら、きっと傭兵上がりの教官殿にお尻を乗せてもらって、グリグリとご褒美をもらえるだろう。

 LPバンザイ。

 だが、それは油断だった。

 左足の裏から火を噴いた岡田が、かかとを振り下ろしながら迫ってきた。

(うぉっと)

 かかとの直撃はされないように、上半身を後ろにそらしてなんとか避けた。

 わずかに届かない紙一重の回避だが、そこまでは見切った。

 だが諦め悪く、そこから足首を伸ばして届かせようとするような追撃を受ける。

(当たる? って、足しっぺかよ)

 ジャングルの王者ですら習得しきれなかった、森の聖者の必殺技に驚愕しながら、さらに上体をそらす。


(あー、反撃してー)

 最初は、調子に乗らせるために気持ちよく攻撃させようと思っているので、こうも一方的に攻撃されると、ストレスが溜まって仕方ない。

 今も、スラム街育ちの世界チャンピオンのような、見事なスウェー・ディフェンスを披露した。

 思わず、そのままカウンターを放ちたいのを、なんとかこらえた。

「ちぃっ! 逃げるなっ」

 攻撃が当たらないことに、岡田もイライラしてきているらしい。

「喰らえっ! 爆逆蹴っ!」

 かかと落としからの変形的な攻撃をした右足が地面に着いた瞬間、両足の裏から炎を噴いてバク転しながら両足で蹴り上げてくる。

(サマーソルトキック? 夏塩蹴? どっちでもいいか)

 アメリカ空軍の軍人か、中国拳法使いのICPO捜査官じゃないんだから、そんな大技披露しなくていい。

 それより、そんな大技には隙が付き物だ。

 無防備な、着地の瞬間を狙う。


 だが、蹴り技をここまで多用するだけのことはあり、着地も危なげない。

(十点!)

 見ている方は、まるで名誉だか栄光だかへの架け橋みたいな曲が、バックミュージックとして流れている気分になる。

「うぉぉっ! ドラゴンバイトっ!」

 左足で地面を蹴って飛びあがり、馬鹿の一つ覚えみたいに高くあげた右足を振り下ろしてくる。

(どんだけワンパターンなんだよっ)

 いい加減飽きてきたと、かかとの直撃を避けるためにあえて前に出る。

 だが、ゾクッとした危機感を覚えてとっさに飛びのく。

 目の前で、蹴りあがってきた、左足と振り下ろされた右足がぶつかる。

(あっぶなー)

 今のはちょっとヒヤッとした。

 当たったら、怪我くらいはしそうな攻撃だった。

 しかも龍之顎とか、古すぎだろとツッコミを入れたいくらいだ。

(……だからドラゴンバイトか。蛮ちゃんが手の握力で蛇。なら、足だったら龍ってこと?)

 古いマンガなんて知らないだろうに、努力とセンスでそこまでの体術を身に着けたことに、少しだけ敬意を表してやりたくなる。


 とはいえ、岡田には想像力が不足している。

 残念ながら風爪のような、牙による追加攻撃はなかった。

(足を交差させる瞬間に真空刃を出したりとか、そういう尖った武器がないと、俺には勝てっこないぜ?)

 二次元のキャラとはいえ、虎砲を放つ最強の一族や、髪の毛をオールバックにした地上最強の生物なんかは、魔法抜きで勝てるかわからない。

 そういう技を使われなければ、多少の大道芸でケガを負ったところで負けはしない。

 とはいえ、女の子じゃなくても痛いのは嫌なのです。

 極振りする気はないけれど。


「くそぉっ、いい加減に……当たれぇ」

 絶妙に、百四十キロを超えるフォークボールを投げたみたいなセリフは、止めてもらっていいかな。

 そんなツッコミを心の中で入れている間に、万策尽きたのか突撃をしかけてきた。

「もう蹴り技はお終いか?」

 こんなものかとつまらなく思いながら、もう十分だと、カウンターで合わせるように軽くパンチを繰り出す。

「くそぉっ」

 わざわざバク転で避けてくる。

 だが、なかなかあざやかなバク宙だ。

 まぁ、練習すればローラースケートを履いたままでもできるのだから、驚くには値しないかもしれないが。

「大道芸は……飽きたんだよっ」

 だが、岡田はまだ攻撃する気配をただよわせている。

 こぶしを戻して、岡田の攻撃を待ち受けてやる。

 すると、着地と同時に反転してまたかかと落としだ。

(反対側の足は下に……ない)

 首を上下に挟まれれば、多少痛い。

 龍之顎を警戒して、実際に飛んでくる足に対する意識が散漫になってしまった。

 そこを狙われる。

 前に出て腕でうざい足を防御し、パンチで顎を打ち抜こうとするが、嫌な予感が上から降ってきた。

(斧鉞? 厄介な……)

 反対側の足も時間差で降ってきた。

 内心で舌を巻きながら両方の足を腕で防ぎ、勢いそのままに、反射するようにして弾き飛ばしてやる。


「まだまだまだまだっ」

 着地後、クラウチングスタートのような格好から、巨大そのものの圧力を利用するような頭からの突撃が迫ってくる。

 だが。

「なっ!」

「言わなかったか? 俺には、一度見た技は二度と効かない」

 アヤでも腕一本で支えた巨体の運動エネルギーを、雅人は指一本で押し返した。

 指でのけ反らせ、間髪入れずにデコピンで吹っ飛ばす。

 まさに鎧袖一触。

 ごろごろと地面を転がっていった。

「そろそろ俺のターンかな」

 起き上がり、周囲を警戒するように首を振った目の前に、瞬間的に移動する。

「これはさっきのかかと落としの……分っ」

 顔を狙って、嫌がらせのようにキックのお返しをする。

「うぉぉっ」

 側から見たら、異様な光景だろう。

 体の大きさだけなら、数倍も体積が大きいタックの巨体を、細マッチョなシャーンが蹴り飛ばしたのだから。

 だが一撃で終わらせるつもりなんて、もちろん、ない。

 蹴り飛ばされた防御姿勢のまま、横にスライド移動している反対側に瞬間移動し、蹴り返す。

「うおおおっ!」

 鞠を、鬼と蹴り合った炭焼き少年の妹のように、額に青筋を立てて蹴る。

 また反対側に回って、蹴る。

 蹴る。蹴る。蹴る。


 鬼の鞠ですら、あんなにひしゃげたのだ。

 人体が同じようにされたら、どれだけのダメージが蓄積されるのだろう。

 とはいえ、そんなことは関係ない。

 死ななければ、あとは瑣末な話だ。


「ぐはぁぁっ……」

 あまりの猛攻に、岡田の意識が朦朧となっている。

(そろそろいたぶるのはやめにするか)

 蹴り飛ばした先に回るのを、やめてみる。

 すると、横方向の膨大なエネルギーがやがて重力に負け、はるか彼方で地面を転がって止まった。

「がはっ……はぁはぁ、なん……なんだ……」

 ふらふらになりながら、なんとか立ち上がった。

 脇腹を押さえているのは、あばらが数本折れたからだろうか。

 ロイド少年じゃないから、数時間で治るなんてことはないだろうし、あとで治療してやるのは業腹だ。

 とはいえ、そんな傷が元で死なれちゃ困るのはこっちなのだが。

「あー、だりー」

 後頭部をガリガリとかきながら、瞬間移動で岡田の目の前に現れる。

 もう、反撃する余裕もないらしい。

「雑な魚と書いて……雑魚と読むっ」

 某ボクサーのセリフをいただいて、右フックをお見舞いする。

 その一発で、すでに満身創痍だった岡田の意識は刈り取られ、ぶっ倒れた。

「一丁上がりっ」

 闇に紛れるように隠れていた妖魔に合図して岡田を縄でぐるぐる巻きにしてやる。

 さぁ。目が覚めたら……楽しい楽しい復讐の時間だ。

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