目が覚めたら白
「おめでとう。試練を乗り越えられたね」
気が付けば手を握っていた
ずっと欲しかった手
貴方の手を
この手で
──やっとぼくは救われる──
今が
その時だ
早く
貴方のこの手でぼくを
貴方の元へ導いて下さい
今直ぐに
「貴方がぼくを導いてください」
「そうしてぼくは救われる」
悦びが最高潮になって
ぼくの目元には涙が浮かぶ
このヒトに導かれて
何処へ行き
どうなるのかは
わからない
このヒトがぼくの眼を治せるかも
知らない
それでもいい
それでもいいんだ
兎に角ぼくを導いて欲しい
「ああ。もう心残りはないよね?」
「はい。勿論です」
「 そう。それじゃあ──
目を覚ましなさい
目を開いて私を見なさい 」
目を覚ます……?
目を開いて?
この眼を?
もう開いている筈では?
でもあなたの言うことだ
今、この眼を開く───
◎△◎▽◎
今なら分かる
「目を覚ましなさい」
その意味が
ぼくは眠っていたんだ
ずっと
ただ悪夢を見ていたんだ
そう錯覚する程に
その景色は
晴々しかった
◎▽◎△◎
ぼくが
目を開いた
目を覚ましたそこにあった景色
そう
それは
まさしく
─── 目が覚めたら白 ───
上も下も
右も左も
前も後ろも
どこもかしこが
白い
否、無色
白よりも眩しく
白よりも清い
無色
何色にも
何者にも
侵されない
そんな場所
ああ!
ぼくは堕ちてなんかいなかった!
ずっと、ここに居たんだ!
この眼も、眠っていただけなんだ!
これでぼくは、
またカミサマに使えることが出来る!
暗闇で苦しむことも無いんだ!
ああ!
これでやっと
貴方の顔を見られる!
この手の主を!
喜色を満面の笑みに堪えて
ぼくは貴方を見つめた
ぼくと目が合った貴方は
言った
その言葉が
あの声と重なる
「 さあ 堕ちよう 私と一緒に 」
「 何処までも 深く深く 」
「 私と共に 堕ちよう 」
『 ──堕ちるだけ堕ちるが良い── 』
『 ──地獄の底が見えるまで── 』