シェイル家の訪問
✕シェイル家の訪問
「さて…と…そろそろかな?所長、俺言ってきますね。」
「え?誰か来るのか?」
「聞いてたでしょうに全く……」
少しため息を付き、研究室を出て、階段をおり、玄関から出ると、馬車の音がした、近い所まで来ているのかな、と思っていたら、案の定馬車の姿が見えてきた。
「お、見えてきた見えてきた。」
来た馬車は1つ、その中から、色んなひとが出てきた。
「ルゥース君、元気だったかい?」
「はい、お陰様で、国王…」
最初に話しかけてきた優しそうな男性は、王族シェイル家の父親、つまり国王のグラッドと言う人で、ルゥースが剣の稽古の後に必ず話しかけてくる優しい人だ。
「坊や、元気かい?ん?」
「や…辞めてください、僕はもう15です、れっきとした男ですから…」
ルゥースのことを坊やと呼び、頭を撫でてくる女性は、グラッドさんの妻であり女王でもあるグラシアと言う人で、ルゥースのことをまるで実の息子のように可愛がってくれる人だ。
「あれ?他の人達は?」
「あぁ、現状で使える馬車は1つだけでそれ以外は点検に出しててね、3姉妹で相争いになった結果。」
「ルゥース!会いたかったぞ!」
「三女のスフィル…と言うわけですか…」
「もうちょっと喜んでも良いんじゃない!?」
「ははは…」
ルゥースに抱きついて来た人が、スフィルノーツ、ルゥースは長いから言い辛いと言う事でスフィルと呼んでいる、彼女こそ、ルゥースに剣を教えてくれた張本人である。
「と言うことはつまり…」
「あぁ、今頃二人は怒りながら兵士たちを魔法で吹き飛ばしている頃だろう…」
どうやら三人とも会いたかったらしく、恐らく二人はスフィルが嫌がることを勝負内容にしたのだろうが…スフィルはそれでもなお二人に勝ったということか…イカサマして負けるってのは…スフィルの姉もどうかしてるな…
「まぁ立ち話をしているのもあれだ、案内してくれるかい?」
「あ、はい、応接室で大丈夫ですか?」
「うむ、構わん。」
「では案内します、こちらです。」
入り口入って直ぐの応接室に案内した。
「僕もここに入ったのは初めてですけど…いい所ですね。」
「ふむ、少し物静かな雰囲気も良いかもしれないな…」
「あら、珍しい本が…ふむふむ…あらあら、」
「グラシア、本を読むのなら座って読みなさい。」
「あら、少し興奮してしまいましたわ、ふふふ。」
「はっはっはっ。」
「はぁ…お父様とお母様はいつもラブラブで話にならないので代わりに私が。」
「あぁ、にしても…グラシア様って…」
「ははは、お母様はまだ40行ってないからね!まだまだ現役だけど…最近お父様が浮気してるって噂があるのだけど…」
「簡単な話、多分グラッド様はグラシア様の誕生日か結婚記念日でしょ。」
「あ、そう言えば来週結婚記念日だ…」
ふと思いついたかのように発言したスフィル。
「サプライズプレゼントを渡したいからだと思うよ、多分宝石店の店員に話をしてたんじゃないかな…それが周りから浮気って思われてたのかも…だけど心配しなくても大丈夫だよ、離婚なんてしないから。」
「頭が上がんないな…ありがと、それでね、君の冤罪について何だけどさ。」
「犯人はあの人だ…」
「え?」
「ウロス・ローラン先生…多分その人が犯人…」
「………どうして…そう思ったの?」
そうスフィルが質問すると、ルゥースは新聞を一部取り出す。
「ローラン先生のこの発表…覚えてる?」
「うん、確かこの時…」
「うん、この前日に俺は起訴されたんだよ。」
「……もしそれでまぐれだったら?」
スフィルが言った瞬間、ルゥースは真面目な顔でこう言った。
「先生は生物学者なんだよ。」
「………それって…」
「あぁ、魔術演算なんて専門外ってことさ…それに、俺が完成させた魔術式、初めて報告したのがローラン先生だ、ほぼ確定だろう…だけどもし、もしだ…」
「……もし?」
「ローラン先生がなにもしてないままでいたら、先生は痛い目を見る……それはさておき、スフィル、お前は魔術士薬発表会に参加する気はあるか?」
そう質問すると、スフィルは目をそらしてこう言った。
「私はぁ…無理…かな?ルゥースは?ルゥースは何をするの?」
「……演算式。」
「え…でも演算式は先生に…」
「いや、その演算式以上の演算式を発表する…予定なんだが…今はまだな…何か…何か発見出来れば良いんだけど…」
そうルゥースはスフィルの目の前で考えていると。
「ねぇ坊や…ちょっといいかしら?」
「あ、はい、どうしましたか?」
グラシアさんはルゥースにあるある一冊の本を渡された。
「この本ね?何も書いていないの…」
「え?何も書いてない?ホントだ…魔導書だったのかな…ん?『力を纏え』?」
本の最後のページの箸に小さく『力を纏え』と書いてあった。
「……『ファイヤ』」
本を閉じ、そう唱えると、炎が本を包み込む。
「ちっょと!?本が灰にな……ん?」
「こう言う力じゃないのか…グラシア様ありがとうございます。」
「お役に立てたのなら何よりだわ、あらもうこんな時間、もう少しここに居たいのだけど…」
「夕餉に間に合わないのなら『テレポート』使いますけど、どうしましょうか。」
「ふむ…確かに今ここから行くと付くのが夜になってしまいそうだな…ルゥース君のお言葉に甘えるとしよう。」
「分かりました、早速やりたいので外に行きましょうか。」
そう言い、シェイル家は外に出て馬車の中に乗る。
「ふぅ…さてと…まずは展開…」
目を瞑り、左手で右腕を掴み、左手で魔法を促し、右手で魔法を展開するのがルゥースの基本的な方法である。
「次に目的地へのイメージですが、門の入口で良いですか?」
「あぁ、構わないが、変な所に置かないでくれ?」
ルゥースはグラッドさんの言葉に「勿論ですよ。」と言い再び目を瞑り始め、スフィルの家もとい、城の正門入口をイメージする、スフィルに剣を教えてもらったルゥースにしては、単純に思い出すだけの簡単なことであった。
「ふぅ…行きます『テレポート』!」
そう言った瞬間馬車は消えたのだった。
「さて…と…無事についたかな……『サーチアイ』」
目を瞑り視覚を飛ばせる便利な魔法の一つ。
「うん、門番さんはビビってるけど正門入口に送れたね、良かった良かった。」
「こ、国王様!?えっ!?ちょっ!ぇええっ!?」
「何もそこまで驚くことないだろ…」
「普通は驚くものよ、あなた。」
「さて、ルゥースから貰ったパイを食べよ!」
「いつ貰ったんだ…」
「ついさっき、ルゥースが私に渡してくれたの、皆で食べてねって!」
「ルゥース君らしいね。」
「さて…と。」
ルゥースは研究室内に戻り、旧応接室もといルゥースの部屋に戻った。
「う〜ん…『力を纏え』か…纏う…力…力……もしかして。」
ルゥースは本を持ち、目を瞑る。
「恐らく…こうだ。」
ルゥースは目を見開き、魔力を本に集中させるすると、本はルゥースの魔力に反応し、白いオーラを纏いはじめた。
「よし…これならきっと中を読めるぞ。」
ルゥースは少しワクワクしながら本の表紙を開く。
「な…何だこの文字はよ…見たことない……もしかして…最古の文字なのか?」
そこには、公開された古代文字を全て見てきたルゥースが、今までに見たことのない文字の文章がたくさん並べられていた。