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都会のネズミと都会の猫

作者: 新田詩音

小さいネズミは、都会の道沿いにある小さい生け垣の中で生活している。たまに人間が捨てていく食品を仲間と奪い合うように食べて生きていた。

人間の食品は毒に見えなくても毒のように作用することがある。それは高カロリーの食品であったり、単に毒餌であったりするのだけど、ネズミがそんなこと知る由もない。

「次いつ食べられるか分からない。今食べておかなきゃ」


ある日の深夜、ネズミはドーナツを見つけた。まるまるひとつ、大きいドーナツ。

「これは大きな儲けだ。たらふく食べよう」

そう思ったとき、大きな影が一つ、現れた。明らかにこちらを見ている。

毛足が長く、立派な爪。大きすぎて見上げることはできないが、目がぎょろりとこちらに向いていることが分かる。

ネズミは生まれて初めて猫という生き物を目にした。本能的な恐怖が一瞬で全身に波及し、ぶるりとその場で震えた。

「にげよう」


一方、大きい猫も心の中で震えていた。

「なにこれ気持ち悪い」

猫はネズミを見たことが無かった。生まれてからずっと家猫。生きた餌なんて食べたことがない。

毎日人間が与えるものを食べ、気に入らないものが出されたら無視。そうすると、そのうち別の餌に変えてくれる。美味しいものは、飼い主のものでも盗み出して食べる。特にドーナツは大好きだ。

「これからは

こんなやつらがいるところで暮らさなければならないのか」


「まぁ

大好きなご飯がすぐに見つかったんだし、少し我慢すればそんなに困らないだろう」

猫はドーナツにかじりつき、人間に見られない場所まで運ぼうと持ち上げ、立ち去った。


ネズミは恐怖で凍りついてしばらく動けなかった。どうやら生き残ったらしい。大事な食品は奪われたが、いつものことである。

「アレはでかすぎたし、まぁいいか」


ネズミが猫に食べられる日は来るだろうか。

猫がネズミを食べる日は来るのだろうか。



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― 新着の感想 ―
[良い点] ネズミの前に猫が現れたところの描写が上手いと感じました。 童話らしいほのぼのした雰囲気の中、ネズミにとってなんだかよくわからない大きなものに対する恐怖がよく表現されていて、良かったです。 …
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