49話 逸脱1
キャメロットの独白は何故か筆が進みませんでした。
やはり保守的な考えのキャラクターだからですかね…?
『総員っ、突撃せよ!女王を討ち取れぇっ!!』
後方から号令が戦場に染み渡る。どうやらキャメロットは健在であるようだ。
安心した鬼姫は、動きを止めた影の女王を睨む。キャメロットを狙うとは全くとんでもない事をしてくれた。だが同時に鬼姫はよくぞ枷を破ってくれた、と女王に感謝もしていた。
鬼姫は生来の戦闘狂である。はっきり言って今までは退屈この上無かった。
しかし、今からは未知の行動をするのだ。女王が上手で自分が屍を晒すか、逆に相手の屍を見下ろすことになるかは分からないものだ。それが勝負というものである。
鬼姫はたまらず走り出した。影の女王がどんな変化をしたのか確かめたいが、影の配下が邪魔で接近出来ない。しかも統率が先程までとは比にならないのだ。
──グルルッ
──ガウッ!
──グルルルッ…
影狼が三匹で向かって来る。
まず先駆けに先頭の鼻先を殴り付け、その肉体を盾にしながら二匹目の目を潰す。ぐじゅり、という嫌な感覚と引きかえに視界を奪うことに成功した。最後尾の攻撃を軽くいなし、顎をおもいっきり殴り付けたのだが、
みしり、と聖炎が再び嫌な音を響かせた。
「むぅ」
戦いに行きたいが、武器が壊れてしまっては堪らない。何か対策は無いかと辺りを見渡した時、持ち主の居ない短剣が落ちているのに気が付いた。
(これを…使うか?使えなくは無いだろうが)
鬼姫の出した結論は、別の武器を使えば聖炎の耐久を消費しなくて済むというものであった。道理と言えば道理だが、このような状況でなければ選択肢に上がらなかっただろう。命の掛け合いに不馴れな武器は使いたくないのが心情というものである。
だが、である。武器はそこら辺に転がっている。剣筋が曲がり、剣身が耐えられなくとも取り替えが効くのだ。持ち主は死んでいる訳では無い武具の方が多いだろうが、後方に下がっていてどうせ見ていないだろう。
考えれば考えるほど、それが最善に思えた。あとは実行するだけである。
手頃な短剣と投げナイフらしき物を取り、忍び寄っていた影蛇へ切り付ける。短剣はすんなりと刃を通した。
(む、意外と良いかもしれないな)
味を占めた鬼姫はその武器で女王への間合いを詰めていく。周りを見れば他の冒険者が嬉々とした表情で進撃しているのが見えた。
蒼鎧は無表情で淡々と魔物を叩き潰す。狼を連れたモンスターテイマーは狼の背に乗り獅子奮迅の活躍だ。先発隊に居た女冒険者は濃密な魔力を練り上げている。
負けてられないな、と気合いを入れ直し女王を睨むが、姿が変化している最中であった。
女王の下半身が歪に膨らみ、ナニカを形作ろうと胎動している。至るところから影魔物の尻尾や頭部がはみ出ていて、正直見ていて気持ち悪い。
それは大きな影狼であった。下半身が変化しているので、まるで巨躯な影狼に乗っているようで、これでは──
これでは、先程見たモンスターテイマーと狼の姿をコピーしたようではないか。
…コイツは、放っておいたら大変な事になる。
影の女王は異変時から、どんどん異形へと変化している。時を置くのは不味いと直感した鬼姫は、狂化スキルを通常三回の所、追加で二回、計五回分スキルを自分に重ねた。
少し思考が危ない方向へぐらついたが、まだ大丈夫そうだ。影の女王を打倒するという目的は覚えているし、他の冒険者と協力も可能だと思う。
鬼姫は大きく息を吸い、次の瞬間跳躍した。
「カスがッ!沈めぇッ!」
一息で女王と距離を詰めた鬼姫は、ナイフで女王の肩口へと斬りかかった。ナイフは少しの抵抗を覚えたが、すんなりと刺る。
少し口が悪くなってしまったのはご愛嬌。
ナイフは女王の上半身に刺さったままである。鬼姫は影魔物を撃退しながら短槍を拾い上げた。とその時である。
──ドオォンッ!
という強烈な爆発音と共に、女王の下半身が変質した影狼。その顔面が消し飛ぶ。膨大な熱量を秘めた女冒険者の魔術が、後方より飛来したのだ。
──ァァア!痛イ!痛イ!
女王の上半身がグネグネとのたうつ。異変が起きるまではどれだけダメージを与えても動じていなかったが、現在はダメージに反応して隙を晒している。
これは自我を得たということなのだろうか。今までは機械的に冒険者の相手をしていたが、痛み、すなわち死を逃避しているのだ。統率のされ方を見るに配下まで影響を受けているらしい。
ともあれ隙を見過ごす冒険者達ではない。
「邪魔だ。──焦土一閃!」
鬼姫はその声に反応して少しだけ横にずれる。するとどこから沸いてきたか蒼鎧の男が、大剣を薙ぎ払う動作を取り、近くの影の魔物をあらかた蒸発させてしまった。
何なのだろう。技の原理が分からない。とはいえ戦場では頼りになる戦力だ。ザコを処理してくれるのは有難い。
他にも冒険者が続々と集結しつつある。鬼姫は戦い難くなってきたなとひしひし感じていた。




