48話 Episode B2
──時は少々進む。
キャメロット達は、冒険者達が影の女王を食い止める最前線へ来ていた。目的は冒険者全体の指揮である。
グラマスに付けられた護衛である鍛冶師ダダン・ダデュードは、これまでで関わりの無かった冒険者だ。王都の冒険者は多いので把握できている方が圧倒的に少ないのだが、簡単な人柄くらいの情報は仕入れたかった。
初日の号令で反発した蒼い色の鎧男が発生したが、大したことは無い。その予想通りに一度痛い目を見たら大人しくなった。
その際に犠牲が出てしまったのがかなり心残りだった。しかし、指示を聞かない所か指揮が乗っ取られる危険もあったのだ。そうなってしまうと冒険者は壊滅。王都の民に多大な犠牲が出るだろう。
これが最善だった。そう思う他ない。
そうして一日目が経過した。
日が暮れてからだが、影系魔物は例外なく視覚を失う。だが女王だけは見えていないにも関わらず、進撃を止めることは無い。
対策としては定期的に遠距離攻撃を行う。
暴れ行動を誘発してしまうが、場所を固定する為に必要である。
そして二日目、三日目と経過し、特にイレギュラーの起きぬまま一週間が経過した。
忌み嫌われし影の女王は身長二メートルほどまで縮んでいる。
隣にはグランドマスターが視察に来ており、報償金関係の会話を済ませたばかりだ。
キャメロットは頼み事の進捗を切り出した。
「ところでグランドマスター?例の道具は…」
「ああ、えっと『情景の姿見』…であったかね。冒険者ギルド関係者や、交遊のある貴族連中に伺ったんだが、そんなモノないと」
「では似た外観のも無かったかしら?」
「無かったね。部下にもっと手を広げるように伝えとくよ」
「…うん。いえ、もう必要無いわ」
グランドマスターに捜索を依頼していた道具『情景の姿見』とは"忌み嫌われし影の女王"を封印する為に必要になるアイテムであった。
外観は金と銀で飾られた鏡である。異様に豪華な装飾が施されている点と、鏡面に傷ひとつ付かないという点以外は普通の姿見にしか見えない。
しかし、その本質は影の女王を封印する役目にある。姿見に収まるまでダメージを負わせ収縮させた女王を、鏡に写す。それで女王は鏡に閉じ込められ、配下追加アイテムである『封影の姿見』が手に入る。
その時点で影の女王との戦闘は終了。女王を配下に加える場合は、鏡を割って取り出すのだ。
キャメロットは、この女王を味方に付けられれば心強いと思いグランドマスターに鏡の捜索を依頼したのだ。だが見つからないのであれば仕方がない。
ちなみにだが、グラマスには鏡の使用目的は"影の女王との戦闘を早く終わらせる為"と説明してある。
影の女王はただ一体だけという訳では無い。魔物を従えることが出来るという事実は、容易に伝えて大丈夫なのか判断が付かないので、そう説明しておいた。
「?」
「うん?どうしたのかね、キャメロット君」
先程から影魔物の動きがおかしい。魔物が渦を描くような行動パターンなど存在していない。
女王も何か構えて──
「キャメロット君!」
「!」
──ズガンッッ!!
影の女王から伸びたナニカが、私の鎧兜を貫いた。鋭利な剣のようなモノが兜をひっぺ剥がし、外の空気が私の頬を撫でる。
どさり、かこんっ、と私の身体と兜の残骸が落ちる。頬から血が流れている。痛みからして皮膚の表層が切られただけと分かった。
一瞬で距離を詰めたグランドマスターが駆け寄ってくる。何か必死になって口を動かしているのが見えるが、聞き取れない。かなり強い衝撃だったろうから、脳震盪でも起こしているのかも知れないし、先程の攻撃に何か変な属性でも付いていたのかも知れない。
だが、しかし。私は指揮官である。
ならば、やることは一つだ。
女王はイレギュラーな行動を起こした。これ以上、戦いを長引かせる訳にはいかない。
キャメロットは拡声石を取り出して叫ぶ。
兜が剥がれ素顔が晒されました。
キャメロットは金髪碧眼の長髪グラマラス美人です。血が出ちゃってます。




