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軍勢オンライン転生  作者: あの日の僕ら
変局の王都
47/50

47話 Episode B1

キャメロット視点。

 俺は、生来の臆病者である。


 日本に居た時も誰かの後ろに下がり、何が失敗なのか吟味してから動く。本当に情けない性格だ。


 俺のことを思慮深いと言ってくれる者が居たが、全くとんでもない。俺は、勇気が欲しくて欲しくて堪らなかった。



 …そんな俺は、何の因果か異世界に来ている。

 しかも、肉体は俺が遊んでいたゲーム『軍勢オンライン』のアバターと瓜二つ。防具も、武器も、スキルでさえも。


 その肉体に俺の意識が入り込んだのだ。そして、全てがゲームと同じ仕様であればどれほど良かったことか。



 ──配下(ユニット)が召喚出来ない。メニュー画面が消失しているから。


 ──配下強化スキルは役立たずだ。配下なんて何処にも居ないから。


 ──俺は戦えない。運動神経が皆無で、生き物を殺す感覚が嫌いだから。



 そんな俺は、自分が弱いことを自覚した際。真っ先に保身を考えてしまった。

 こんな自分に吐き気がする。



 せめて、(したた)かに立ち回ろう。



 そう決意した。




















 ──時は(さかのぼ)る。


 忌み嫌われし影の女王の遭遇からマッドと鬼姫が帰還し、キャメロットは王都の門で二人を迎えた後、彼女の姿は冒険者ギルドにあった。


 マッドはほぼ無傷。そして鬼姫は青アザが出来てはいたが、致命的な傷は負っていない。やはり、二人は強いなとキャメロットは思った。

 彼らも俺と同じく軍勢オンラインのプレイヤーだったとは信じられない。


 二人は強い。鬼姫は運動神経が良い。それだけではなく勘も鋭く、ざっくばらんとした素直で気持ちいい性格をしている。


 マッドはひたすら我慢強い。それが痛みであったり、自身の境遇であったり。強さを得る為にあらゆる手段を取ることが出来る。尊敬出来る人物だ。



(二人と比べて私は…。いや、私は私で出来る事を最大限にしよう)



 キャメロットは思考を切り替えギルド内を進む。


 王都に迫る厄災の正体が"忌み嫌われし影の女王"であったのは驚いた。影の女王と言えば、一筋縄ではいかないレイド級モンスターであったはず。


 そのクエストの発生条件は、強い光が顕現したのに呼応し、影の女王が産声を上げる──というのだったか。影の女王が現れた原因は不明だが、このままでは王都は甚大な被害を受けてしまうだろう。


 キャメロットがたどり着いたのは、王都の魔物関連を取り扱う冒険者組合の長、ギルドマスターをも束ねるグランドマスターの部屋前であった。



 ──コンコンっ


「どうぞ」


「失礼します」



 扉の向こうには中年の男性が一人、多量の書類に囲まれて椅子に腰掛けていた。彼の目線は書面、そしてキャメロットへ移り、こちらに若干疲労を感じさせる笑みを向ける。


 隠しきれない皺や白髪が目につくが、目だけは力に(あふ)れていた。キャメロットは一挙一動を評価されているような錯覚に陥る。グランドマスター、…グラマスとは面接の時などで何度も顔を合わせているが、時々試すような言動もするのだ。


 年季を感じさせる風格であるが、慌てても良いことは無い。

 キャメロットは努めて冷静に話を切り出した。



「例の厄災について進言がありますわ」


「ふむ、進言。何だ?言ってみてくれ」


「あれは"忌み嫌われし影の女王"という名称の魔物よ」


「…!?アレを知っているのか!名前は分かった。特徴は?弱点はあるか!?」



 当然身を乗り出すグラマス。良し、と心の中でキャメロットはガッツポーズをとる。興味があるのならば、あとはこちらの思うがまま、だ。


 質問に答える。



「影の女王は影系魔物の頂点。主な特徴は吸収、生産、使役。影系魔物を産み出し、操り、取り込む能力を備えているわ。そして非常にHP…体力が多いの」


「…ちょっと待ってくれ。書類に落とさせてくれないか?」



 グラマスは書類をかき集める。その中から白紙を一枚取り出すと、キャメロットの言を書き記す。



「キャメロット君。弱点はあるのかね?」


「簡単に倒せるようになる弱点は無いわ。けど」


「…けど?」


「私は犠牲が出にくい討伐方法を知っているわ。時間は掛かるのがデメリットね」



 グラマスの目がスッと細くなる。言葉の真偽を判断しているのだろうか。



「聞こうじゃないか」



 キャメロットは、女王襲来は王都にとって厄災であるが、名声を高めるには最適だと感じていた。名を売ることは悪いことではない。まだ確定はしていないが、配下強化スキルが生きているかもしれない。自分の心酔者が居るのは悪くないと判断した。


 まあ、そういう理由もあるにはあるが、王都の住民に犠牲を出したくないというのが本当の所だ。女王討伐には、自分が冒険者を率いるのが一番であると思う。


 だから要求する。



「──私に、指揮権を下さらない?」



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