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軍勢オンライン転生  作者: あの日の僕ら
変局の王都
34/50

34話 暗雲3



「…よろしく頼む」


「では、皆さんよろしく頼みますね」



 馬車ががらがらと音を立てて王都の門を飛び出す。その馬車であるが牽いている馬は魔物であり、鎧の様な外皮をした大型の馬系魔物だ。耐久力に秀でておりゲーム内でたまに見掛けることがあった記憶が鬼姫にはある。



「…大丈夫かよ」


「…あー、お嬢ちゃん」


「…何か」


「いや、なぁ?…うん」



 馬車内はいかにも歴戦といった冒険者が揃っており、どの者の装備も強力な力を秘めてそうな見た目である。実際に魔剣や魔斧など一振りかざしただけで広範囲を焼き尽くせるような代物であった。

 そのような彼らは当然のごとく皆上級冒険者であり、王都防衛の要だ。そんな連中に下級の少女が混じる。はっきり言って異常であった。



「キャメさんの推薦だけどよぉ…」


「…こんな可愛いコが、前線なんか行くもんじゃねぇべ?」


「違げぇねえが…、キャメロットさんがあんなに推すんだ。なにか持ってんだろ」


「…まあまあ、姉さんの頼みだし。いざとなったらアタシが護りきるから…ね?」


「イザベラ…。…いや、後衛だから何とかなる、か?」


「…ありがたいが、各自職務に専念してくれ。妾は妾で動きたい」


「そんな事言われたってなぁ?危ねぇ物は危ねぇっぺ」



 冒険者とは魔物の脅威から人を護る職業である。馬車に乗るのは御者と鬼姫を含めてたったの六人だけだが、この全員が王都を魔物の魔の手から救わんと心に決めた者達だ。力なき少女を魔物はびこる場所に放置するほど力の無い訳ではない。むしろそのような事は逃避するべき考えである。



「…妾とて自分の身くらい自分で守れる」


「悪いことは言わないからアタシの後ろに居な?アンタ一人くらい護りきるくらいどうってことないからサ」


「動けるって言われても下級だべ?信用ならねぇんだ」


「む…信用か…。…証明すれば良いのか…?」



 初顔の下級の言うことなど真に受ける方がおかしい。この状況下では正しいのは彼らであり、鬼姫は素直に従うべきなのだ。

 だが、こちらにも事情があると言うもの。マッドを見付け出して連れ戻さなければならない。幸いと言うべきか不幸にもと言うべきか予測された魔物の進行方向とマッドの居る場所は重なっている。この馬車の向かう馬車から少し移動すればマッドがいつも活動している小さな森に着く。


 問題は彼らをどう説得するかだ。無理矢理彼らの目から逃げるというのは可能性がかなり低いし、後の問題もあり現実的では無い。となれば説得出来る材料が必要となる。魔物を退ける力の証明が。



(聖炎は…もう隠さなくて良い。他に武器を持ってきてない。元よりそのつもりだ。…聖炎だけでは薄いか?)


「お、何か見えるな」


「…黒色?」



 何か魔物の群れが、遠く視界に映る。マッドの居るであろう森はまだ見えていない。と言うことはマッドは既に交戦しているのだう。…急ぐ必要が出てきた。

 その時、魔物の群れのその奥に何かが迫り上がって来る。更に遠くに在るというのに視認出来るということは、それがかなり巨大であることを証明していた。



「……………オイオイ、デカすぎないか?」


「…久し振りにあんな大きさ見たっぺ…」


「…アレは」



 少しずつ接近してくることで、巨体を取り囲む魔物がはっきりとしてくる。…その引き連れる魔物と親玉の巨体に、鬼姫は見覚えがあった。


 "忌み嫌われし影の女王"それ自体が名称。本体は輪郭のぼやけた巨人でドレスらしき物を着ているように見える影系統の魔物の頂点に位置する。影の女王と言うだけはあり影竜や影狼といった影と名の付く魔物を使役している存在だ。


 ゲーム内でこの魔物は少々特殊な立ち位置にあり、プレイヤーによる召喚によって配下に加えることが出来ない。ではどうやって配下に加えるのかと言うと、イベントによってフィールドにホップした影の女王の体力を削り、特定のアイテムで封印することでアイテム欄に加える。そしてそれを使用すれば影の女王が配下に加わるといった具合だ。

 ただ、影の女王は弱らせると縮んでいく。配下に加えることが出来る影の女王というのは巨大な状態では無く、プレイヤーと背丈の変わらない程にまで弱体化した状態の駒のみになる。影系の魔物を造り出す・取り込む能力は健在であるがゲームバランス的にも巨体は不味かったのだろう。


 とにかく"忌み嫌われし影の女王"は何千と配下を使って討伐するような魔物である、ということだ。



「影の女王…。どうするか…」


「うん?影の女王?…確かにボヤっとしてるがドレス着た婦人に見えなくも無いな…」


「あんなでっけぇ女王様なんていねぇだよ」


「サイクロプスの女王とか…。いや、それの何倍も大きいから違うか」



 人形の魔物と言っても影の女王は直立している訳ではない。自重が重すぎるからか、この状態では両手両膝を付いたような体制である。ただ下半身が影に沈んでいるので若干歪であるが。


 そんな天災染みた魔物に勝てるのか。軍勢オンラインならば配下を数千も潰してしまう…。と考えたところでここがゲーム内ではないと思い直した。

 ゲームであれば純人系の駒など初期の初期から使え、強化を重ねても特に脅威であるという感想も無かった。しかしここはゲームではない。万人に意思があり、様々な力も備わっている。ここに影の女王についての知識を与えれば、後続の者が来るまで何とか持ちこたえられるだろう。

 であるならば影の女王について教える必要がある。



「妾は…、あの魔物"忌み嫌われし影の女王"を知っている。…その最善の討伐方法も」


「…何だって?…これが、姉さんがこの子を寄越した理由かね?」


「ふむ討伐方法ね…。…教えてくれるか?」


「元よりそのつもり。まずあやつの能力だが──」



 マッドも影の女王を知らない訳がない。ならば持ちこたえてくれている筈だ。鬼姫は荒ぶりそうになる心を押し付け、冒険者達に教授していく。



"忌み嫌われし影の女王"


推定HPは脅威の10万越え。ロックドラゴンのHPが平均して6千程度であるのを鑑みればヤバさが分かるというもの。

特筆すべき能力は影系魔物の製造・使役・吸収にある。本体のHPをどれだけ減らそうとも回復してしまう。であるからして狙うべきは周りの魔物である。

その影系魔物吸収能力があるから推定HPが10万を越えていると言われている。なので実際にはそこまで化け物HPではない。



闇の一片、影を司る神の一柱。光あれば影は出来る。どんなに振りほどこうとしても決して離れないが故に、影は忌み嫌われ遠ざけられる。けれど目を背けないで。影はアナタの一部。影を消し去ってしまえば、アナタでは無くなってしまうのだから。

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