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軍勢オンライン転生  作者: あの日の僕ら
スタートダッシュ
29/50

29話 羽ばたき4



「うおぉぉぉッ!今さら止まんねえぞぉ!!」



 刃の潰れた練習用の斧を振り上げながら、赤鎧の男は鬼姫へと距離を詰めてくる。腰に提げていたのはククリナイフであるはずだが、赤鎧はどういう訳か斧を選んだようだ。



(…ふぅむ。動きはしっかり捉えられている…。目はもう無問題だな。問題は………ッ!)



 振り下ろされた斧は派手に土埃を上げる。鬼姫の体はスレスレの所で強烈な打撃を回避し、少し赤鎧と距離を取る。



「避けた、か…」


「当然であろ?そんなノロマな攻撃では欠伸(あくび)が出てしまうぞ」


「…言うじゃねぇか…!」


(……余裕を持って避けた筈なんだがな。体と頭の回路でラグが出来てしまっている。修正が必要だ)



 鬼姫は余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)であるようにしか見えないように振る舞っているが、心中はそうではなかった。下級と言えど冒険者は冒険者である。それなりに鋭く、とはいえ下級程度の速度は必死になって回避する必要の無い攻撃であった。自身の不調を調整するのに最適な取り組みである、との企図であった。



「この程度か?万年下級も納得だな」


「!──地べた舐めさせてやるッ!!」



 赤鎧の攻撃が苛烈を増し幾つも地面に突き立てられた。土埃が舞う度に回避の精度を調整し、赤鎧の息の切れた瞬間。鬼姫がカウンターを叩き込んだ。滑らかな表面の籠手とは言え金属製である。少なくないダメージを負った赤鎧であるがそれは鬼姫も同様であり、顔を少しだけしかめた。


 聖炎に護られた腕では発生すること無い痛み。要するにただの反動である。別段痛みで動けない程では無いしこの程度の痛みなら以前にも受けたことがある。ただ眠りに落ちる最後の記憶で赤ゴブリンからの刺突により、強烈な痛みが軽いトラウマのようになってしまっているのだ。心の傷ばかりはどうしようもない。自然に回復するのを待つだけである。


 鬼姫は意識を切り替えた。



「さて準備運動も終えたことだ。今度はこちらからも攻撃するぞ?」


「ぐぅ…っ。ナメたこと言っつぉ!」


「ほらほら、対応が遅い」



 やはり、と言うか赤鎧の戦闘能力は低い。斧を上段から振り下ろしての攻撃だけは良い威力をしているが、その上段からの叩き付けのみしか攻撃パターンが無い。大振りな攻撃は隙が大きく、簡単に避けられる。来ると分かっているなら尚更だ。その隙に拳を差し込み、反動のダメージを抑えて殴りつける。細かく、されど鋭く殴打。隙がある限りそれを繰り返す。



(これはマッドの分!これもマッドの分!…なんつって)


「ぐっ…。ちょこまかと逃げやがって!」



 若干遊びに向かっていた思考を引き戻す。元々お灸を据える目的の訓練なのだ。動きの調整をしようにもこの赤鎧の動きに慣れて(・・・)しまった。そろそろ終わらせようとラッシュを叩き込む。


 一歩を多少強引に詰めて足回りに拳を数発放つ。上段に構えた体制のまま支えの足部に鋭い拳を受けた赤鎧は、痛みによってバランスを崩してしまう。それが決め手となった。鬼姫は拳のラッシュを胴体、胸部、顎、と上げて行き顎を打ち抜いた所で赤鎧が崩れ落ち、ドサリと音を立てて地面に倒れ伏す。



「…ぁ」


「ふぅむ、口ほどにも無い。…次はどちらだ?どちらからでも良いが、なんなら二人同時でも良いぞ?」


「…ハッ、ファッシュはタフだが鈍重なんだ。俺だったらお前の動きなんざお見通しなんだよ」


「そうか?なら、こい」



 猫系獣人種の男。仮称"忍者"が武器を手に取り一直線に鬼姫へと駆けた。鎧を着ていない分軽い体は重さを感じさせない動きを可能にする。腕を低く、より低く置き、鬼姫の顎を目掛けて振り上げた。顎を狙ったのは先ほどの赤鎧の当て付けなのか、得意な攻撃の型であったのかは分からない。しかし、中々に鋭い一撃である。



「フッ!」


「むっ!」



 赤鎧とは違うタイプの攻撃に一瞬たじろぐ鬼姫。だが見えている(・・・・・)。避けられない攻撃ではない。そう思っていた。

 飛び出してきたのは長いナイフ。衣服で死角になっており、武器を視認出来ていなかった。当然、本物ではなく練習用の物であるが、何を選んできたかは鬼姫に今の今まで見せずに隠していた、ということだ。そのナイフは顎の数ミリ上をなぞる結果となり、鬼姫はゾッとした。

 舐めていた、というか三人の実力を低く見積り過ぎていた鬼姫は、たまらず距離を取る。



「…お主、かなりやるな。何故下級で燻っているのだ」


「…。…ハン。お前には、関係ない。だろ?」


「?まあ、要らぬ言であったな」



 忍者は追撃をしてこない。今の鬼姫の内心はかなり混乱しており、距離を詰められると余りよろしくないので有難い行動である。しかし、何故追撃をして来なかったのだろうか。自分であれば敵が怯んだ時ならラッシュを畳み掛けるが。なにか裏があるのではないか、そう念頭に置いておくことにする。



「…来ないのか?ならこちらから行くぞ?」


「…ハッ」



 鬼姫が一気に距離を詰め、忍者へと反撃を気にしながら拳を叩き込む。一発、二発、三発と打ち込むが難なく避けられ、気を引き締めた鬼姫。だが四発目に牽制のつもりで打ち込んだ拳が忍者の腹部にクリーンヒットしてしまう。


「…ん?」


「ガハッ…」


 忍者は崩れ落ちた。激戦を予感させながら実に呆気なく。



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