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軍勢オンライン転生  作者: あの日の僕ら
スタートダッシュ
28/50

28話 羽ばたき3

まだ戦いません

 回復から数日後、鬼姫の姿は組合の訓練場にあった。体の調子は十全とは言えないが、予想より回復がかなり早く九割八部くらいまでは戻っている。最終調整のつもりでこれから来る相手を待っていた。


 数日経過したことで、鬼姫の怒りは表面上は落ち着いてはいる。考えの底は変わらないが連中に諭し、もし謝るようならそのまま何もしないつもりだ。この王都ヴィステリヤ本部(・・)冒険者組合の冒険者は非常に多い。本部だけあって室内や併設されている酒場も広いが、その広さが冒険者で埋まってしまうのだ。冒険者も玉石混淆であり、それだけ集まれば素行の悪い者も一定数出てしまうのもしょうがないととれる。むしろここ数日見て回っただけだが、気の良い奴らばかりで驚いていた。

 それだけに、マッドへ嫌がらせをする者がいるというのは残念でならない。



「……はよこんかい」


「おいおい爺さぁん。本当に大丈夫かぁー?」


「…ハン、老木が無理をする」


「痛め付け過ぎて、泣かせないように、な?ヒヒヒ」



 マッドと話中の奴らがぞろぞろと上階から降りてくる。鬼姫はジロリと連中を一瞥した。連中は全員男。一人だけ背丈が低く、子供の様にしか見えない。灰色のローブを被っており顔が少し覗くだけだ。

 この男は特徴が薄い。目線がキョロキョロしていることから"卑屈"と仮称する。


 おどけた口調の男は赤髪の獣人だ。耳が立っており、太い尻尾が伸びているのを見ると狼か犬系の獣人種に思える。ただ凛々しいそれらと比べて顔はかなり凡庸であった。腰に大振りのククリナイフらしき得物を下げてのしのしと歩いている。大切にしているのだろう細かい傷の付いた鎧も赤色で統一している為"赤鎧"と呼ぶことにした。


 一番最後尾にいる男はしなやかな足取りの獣人である。前を歩く赤鎧の装備に対してこの獣人は軽い布を纏うのみ。さらに違いは獣耳と尻尾の形状であり、毛色も黒に近いくすんだ青色をしている。その男は猫系の獣人種であった。

 得物は確認出来ないが、見た目のそれっぽさから"忍者"と呼ぶ。忍者など意識していないのだろうが。


 この男らがマッドに粗相を働いていた。いや、言葉使いからして今でも軽んじているのだろう。鬼姫は連中の顔と聞こえてくる話声にだんだんイラついてきた。

 …マッドは同郷の、大切な仲間である。お世辞にも戦いに強いとは言えないが、それよりも知恵がよく回り、胆力も十分以上である。グラドの街に居た時も王都においても情報について頼りになるのはマッドであった。そんな仲間がバカにされていて面白い訳が無い。



「ここら辺で良いんじゃね!?」


「ヒヒヒ。後悔してんじゃ、ねぇーの?」


「…実はの、戦うのはわしでは無い」


「ハンッ!何だ?怖じ気づいたのか?」


「別に。わしは訓練をしようと提案しただけじゃ。相手は別におる」



 マッドが顔を別方向に向ければ、そこに居たのは華奢な少女だ。見慣れない仕立ての服を着ているがそこから覗く手足は華奢で少し力を込めれば折れてしまいそうである。頭部から黒い角が伸びていることと、両腕に不釣り合いな金属の籠手が目立つのを除けば可愛らしい少女だ。



「あの子供がどうしたって?」


あの子供(・・・・)が相手じゃよ」


「…はぁ?」


「わしのパーティメンバーじゃ。強いから安心せい」



 仏頂面の鬼姫がすたすたと四人の元へ歩いてきた。例の三人はその姿を目で追って観察するが、特に異常性は見られない。万年下級冒険者の彼らであるが伊達に何年も冒険者をやっていないのだ。王都の守護の要である上級冒険者であったり、ふらりとやって来ていつの間にか居なくなる他の街の上級冒険者であったり。実力者というのはそれなりの年季が入っているものである。


 ではこの少女はどうか。細い手足には筋肉が付いていないように見えるし、肌に傷痕の一つも無い。魔術師という可能性も無くはないが強力な魔術師というのは態度に出る。魔力を増幅させる杖を持って不遜に佇んでいるものだ。それに対してこの少女は杖など持っておらず籠手を装備している。

 角があるということは鬼人種であるのが分かる。だが鬼人種という種族など滅多に見ないので詳しいことは分からない。通常の人間と変わらないとも聞くが、異様な怪力の持ち主だとも聞く。

 そして、胸元に目を落とせば下級の証。銅色の札が鈍く輝いている。


 結論からして、三人の目に鬼姫は余り強く映らなかった。



「妾の名は鬼姫と言う。…妾の留守中、うちのマッドが世話になったようだ…。貴様らから、何か言うことは無いのか?」


「…ハン。確かに世話してやったよ。…何が言いてぇんだ、このガキ」


「オメェーみてぇなお子様が来る所じゃねえぞ」


「安心しろ。見た目より歳は幾らか上だ」



 赤鎧と忍者が若干イラつきながら鬼姫を見下す。鬼姫はその視線を真っ向から受け止め、下から負けじと睨み返した。体格は当然連中が上であるが体格だけで強さは決まらない。



()が、稽古を付けてやる。…とっとと掛かってこんかい」


「あ"あ"?オメェで相手になんのかよ?」


「ハン…。怪我しねぇウチに帰りな」


「ヒヒヒ…。二人共。やって良いって言っているんだ。相手をしてやろうよぉ」



 中々仕掛けて来ない赤鎧と忍者であったが、卑屈が口を出した所でしぶしぶ練習用の武器を手に取る。赤鎧が前に出ながら言った。



「チッ…!手加減出来ねぇからな」


「全力で良い。…もっとも万年下級な者の全力など屁でもないが」


「てめぇッ…!!」



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