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軍勢オンライン転生  作者: あの日の僕ら
スタートダッシュ
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25話 巣立ち9



「──おい、お前達何を騒いでいるんだ?」



 思案する二人に外野から声が掛かる。騒いでいた二人の声は当然ながらうるさい。声を掛けた冒険者以外にもカップルの二人が起きていた。カップルは怯えた表情でこちらを見詰めているのに対し、冒険者は困惑したような表情である。



「魔物の襲撃かと辺りを探ってみたが…そうでは無し。……なんだその手は」



 冒険者はマッドの手の変化に気が付く。血のように真っ赤な腕はとても人間のものとは思えない。その赤色はオーガの肌を思わせるがそれよりも深い赤だ。騒ぎの原因はこれと見た冒険者は、腕について問う。



「…お前達は変な隠し玉が居るからな。それもお前の力か?」


「いや、違う。これじゃよ。この刀が原因じゃ」


「…!これはあの異常種の得物か」


「そうじゃ。どうやら他者の体を乗っ取るっ!ぐぅ…」


「なるほど。この剣は魔剣であったのか」


「魔剣…?」


「俺も見せてもらったのは数える程しか無いが、どれも強力な力を秘めていた。それに迷宮産の魔剣は致命的なデメリットを抱えることもあるという」


「…そういった魔剣かどうか、どうやって調べるのよ。鑑定スキル的なのがあるのかしら」


「魔剣の効果は実際に使ってみないと分からない。…デメリットが酷い時は魔剣を壊せば良い。そんな薄氷みたいな刀身なぞ、すぐにへし折れるだろう」


「!」



 刀の破壊。そのことを思い付かなかった二人は目から鱗であった。そもそも無機物である剣が襲ってくる、という考えが薄かった二人だ。早速とばかりに指示を飛ばすマッド。



「よォし!この憎いあん畜生を叩き折るんじゃキャメロット!」


「わ、分かったわ!」



 キャメロットは自身の長剣を鞘ごと外し、大きく振りかぶった。一対多での戦闘センスの無いキャメロットであろうが、動かない的に当てられない訳が無い。長剣は重力と腕力により加速を重ねてついに日本刀の刀身へと吸い込まれる。

 キャメロットの不格好な一撃は、刀身をぐしゃりと砕いて柔らかな地面へと突き刺さった。砕けた刀身に目をやればいつの間にか深紅の刀身ではなく錆び錆びでボロボロな刀身へと変貌している。

 そして、魔剣としての力を失ったのかぽろりと手から剥がれ落ち、マッドは自身の手を取り戻した。



「お、おお…!指が動くぞ…!」


「良かった!良かったねお爺ちゃん…!」


「いやーもう駄目かと思ったわい!冒険者の、助かった」


「いや良い。昨日はかなり助けられた。…だが無断で危険なことをするのは頂けない。その魔剣がもっと凶悪な代物だったなら、危なかっただろう」


「む…、申し訳ない。ただの整理と油断した」



 マッドの腕は数分で赤色が抜け、元の肌へと戻る。この夜は刀による騒動があった以外に特に何事も無く夜を明けることが出来た。解体した死体は結局骨以外には残らず、刀の破片、柄と鞘を袋へ詰め先を急ぐ。王都へは後二日程度で着くのだ。


 それから一日と少し後、遠くにうっすらと城壁が見えてきた。すれ違う馬車や追い抜かされる馬車の数が一気に増し、人の気配がとても濃い。遠目からでも分かる城壁は、グラドの街や途中で見た街や村の木製の壁とは比べ物にならないほどの大きさだ。

 カップルの男女は目を輝かせており微笑ましい限りであるが、そこは日本を知る二人だ。東京等の現代の都会と比べると(いささ)か劣る。

 そして鬼姫ただ一人は未だにうなされていた。これでも一応回復している方であり、黒パンでパン粥を作ってやるときちんと食べてはくれるし、水も飲む。ただ小水等は垂れ流しになってしまうので下の処理は全部キャメロット任せになっていた。



「姫ちゃん、大丈夫かしら…」


「熱も引いておるでな。こういう時は好きなだけ寝かせるしかあるまい」


「うん…そうよね」



 王都へ入るには一時間程要した。何故なら王都の南門には長蛇の列が出来ていたからだ。南門と言う名前からして東西南北の四つの門があるが、一般人用の出入口はどこも混む。出入口はもう一つ、貴族用のもあるがそこは一介の冒険者は通ることが出来ない。


 王都の門では兵士による検査が行われているが、かなりおざなりであった。人を運ぶ馬車ならば身分証を提示させ、物を運ぶ馬車ならば数に応じて税を取る。身分証の確認と言ってもちらりと見るだけであるし、木箱が山のように積まれていても一箱確認して終わりである。そうでもしなければ人が捌けないのだろうとは察するが、少し不安にも思う。



「お客さん~!あっしとこの方は冒険者ギルドに行くでやんすが!ここで降りられますぜ?」


「うーん…。せっかくだからギルドまでご一緒しようかしら?」


「そうじゃな。地理もよぉ分からんしの」


「ぼくはここでナニーと降りる。良い旅だったよ。我らの先々に光あらんことを」


「我らの先々に光あらんことを。冒険者の方々ってお強いのね、怖かったけど」



 カップルの二人は下車し、馬車内が少し広くなる。人通りの多い王都の道をガタゴトと馬車は進む。長かった馬車の旅路もこれで終わりだ。

 エンブライト王国の首都──王都ヴィステリヤ。大陸の中心地に根を張る都は、あらゆる人間を受け入れる。はたしてその先に待つのは願いの成就か、それとも身の破滅であるか。

主人公不在で進む話

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