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軍勢オンライン転生  作者: あの日の僕ら
スタートダッシュ
22/50

22話 巣立ち6



 鬼姫は慎重にかつ大胆に一歩を踏み出した。そこに赤いゴブリンは居合斬を合わせる。本物の居合斬というのはゲーム内でも受けたことがない鬼姫。だが距離を詰めて刃を届くようにしてやれば必ず来ると直感していた。来ると分かっているのなら回避するのは容易い。


 居合斬は速かった。鬼姫の首筋目掛けての一閃はとても滑らかで美しささえ感じられるほど。鞘を後ろに跳ばすことで刀身を素早く晒し、電光石火の一閃を可能にしたのだ。鬼姫はその一連の動きが観察出来てはいた。体に命令を出し、後ろに下がる。

 刀は空を斬る。



「…ふ、ははッ。ふはははッ!」


「…」


「凄い技術だ!危うく斬られる所だった、ぞッ!」



 鬼姫は隙だらけの赤ゴブリンへと一息に距離を詰め、正拳突きの要領で鳩尾(みぞおち)に拳を挿し込む。ただでさえ腕力に補正の掛かった攻撃に自身の移動速度も加えた一撃は、赤ゴブリンの内臓を破壊して骨も数本持っていった。

 たまらずといった様子の赤ゴブリンは、自ら手を地面に置き転倒を免れる。相も変わらず一言も発しはしないが。


 左手に刀の鞘、右手に日本刀を持ち、口から一筋の血を垂らす赤ゴブリン。内臓にかなりのダメージを負っているはずであるが全くそのような印象は受けない。だが一応血を流すのだ。それでも倒れなければ肉塊になるまで殴り続ければ良い。そんな暴論で鬼姫はラッシュを掛けるべく距離を縮める。



「…ふ、らあッ!」



 先ほどダメージを与えた時のように殴り付ける。渾身の力を込めた正拳突きであったが赤ゴブリンは逃げなかった。鞘を拳に添えられたのが見えた瞬間、攻撃はぬるりと弾き流されてしまう。鬼姫は刀本体より警戒心が一段落ちる鞘であったこと、そんな技術を見せられて驚嘆したこと、により動作が一時止まり次の動きに繋げられなかった。そんな鬼姫のがら空きの胴体に、深紅の刀身が吸い込まれてしまう。



「ッ!」


「…。…?」



 刀は鬼姫の胴体を薙ぎ、衣類を切り裂いて血と内臓が流出してしまう、と幻視(げんし)した所でそれが実際の光景とは違うことに気が付いた。刀は胴体で止められているのである。もちろん寸止めなどでは無い。

 刀は体重が乗っていない攻撃であったとは言えれっきとした刃物である。布切れなどあって無いようなものだ。だが鬼姫の防具は見た目通りの防御力とは違う。ただの布にしか見えなくとも中身は鎧──骸穢鬼の骨鎧、が入っている。それによって止めることが出来たのだ。


 鬼姫は驚愕の顔付きから、理由に思い当たったことでにやりと悪い笑みに変化した。少し動けば相手に当たる距離だ。

 鬼姫は弾かれることも警戒しつつ殴る。赤ゴブリンは紙一重で回避し斬る。聖炎護腕で弾いてやり、殴る。弾かれた刀の軌道を修正し、衣類の無い足を斬る。相手の狙いを挫く為大きく跳び、刀を持っている右腕を狙い殴る。空中に居て回避出来ない相手へと、下段から上段へ掛けて斬り上げる。それを聖炎護手で阻む。

 一進一退の攻防がそこにはあった。


 マッドはその攻防に手出し出来ないでいた。下手に援護をすると鬼姫に当たってしまう危険がある。出来ることはドレイン付与を切らせないように定期的に掛けるのみであった。



「…滾るなぁ。…生きていると、実感出来る」


「…」



 そろそろ終わらせようと鬼姫は思っていた。スタミナがあるのか分からない相手である。終息へ持ち込む為にまずは刀を手放してもらおうと画策していた。

 鬼姫は右手を伸ばす。聖炎護手は流石に貫通出来ないだろう。なら腕を握ってしまえば良い。そういう考えであった。鬼姫がそう考えていることが赤ゴブリンにも分かったのだろう。日本刀の先端を鬼姫へ向け、全体重を乗せて渾身の突きを放った。先端は鬼姫の喉を狙っている。そこには布が無い、絶好の部位であった。



「悪いが終わらせるぞッ!」



 鬼姫は左腕の聖炎護腕を刀の進路上へ置き、右手をその近くへ配置した。護腕で弾いた所を刀身でも腕でもどこでも良いので掴んでやろうと企みである。

 今までの攻撃とは比べ物にならない速度で迫る刀。その速度は最初の居合斬もかくやというスピードに己の全てを乗せる、赤ゴブリンの出せる最大限の技であった。そこに、聖なる炎で形作られた純白の鎧が道を阻む。

 そしてお互いは激突した。



「…ッ!」


「…」



 二人の沈黙が一瞬の世界を支配する。相も変わらず無表情な赤ゴブリンとは対照的に、驚嘆に彩られた鬼姫の表情。刀の動きを止めるという目的は達していた。だが、止めたもの(・・)が自身の右手では無かったのが、驚嘆の理由である。


 赤ゴブリンの渾身の一突きは、鬼姫の左腕の聖炎護腕を貫通し、反対側へ刀の先端が飛び出していた。聖炎の内側、生身にも当然刀は突き刺さっている。うっすらと見える聖炎護腕の内部に、血液が染み出し始めた。

防具はそこまで頑丈ではありません。


軍勢オンラインの防具は基本的にスキルや能力が付いている防具は防御力が低く、そういった能力が無い防具の防御力は高い傾向があります。

そして武器に比べると防具の耐久値は低いです。

例外もありますが、そういうゲームバランスを取る運営でした。

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