表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
軍勢オンライン転生  作者: あの日の僕ら
プロローグ
1/50

1話 軍勢1



 ──ガアアアァァァァァ!!!

 ──キュルァァァッ!!!



 獣の如く猛る黒の軍勢と荘厳に迎え撃つ虹色の群が、互いを屠らんと牙を爪を剣を全てを使い命を削り合う。数でいえば黒の軍勢は数百、虹色は数十だが、身体の大きさは虹色が圧倒的である。


 黒の軍勢は人の形こそしているが、決定的な部分がそうではないと訴える。背丈は平均的な人間を優に越え、盛り上がった筋肉は黒い体表も相まってまるで鋼のよう。頭からは捻れた二本の角が伸びていた。

 相対するのは虹色の群。その虹色は蛇の様に滑らかな身体を持ち、一対の大きな翼からはキラキラと輝く鱗粉が撒き散らされている。



「者共ぅッ!その邪魔くさいモノ共を血で染めてしまえッ!」


 ──グゥアアアァァァッ!



 黒の軍勢の中に、異質なこの(戦場)に似つかわしくない可憐な少女が在った。鈴を転がすような声とは裏腹に内容は全く可愛くない。黒の彼らとの共通は同じく頭からのびる二本の角、それも黒達より幾らか大きく、天を突かんと伸びていた。


 少女の掛け声と同時に黒い軍勢が燃え盛った。一体一体の体内から溢れ出るように、真っ暗な炎が闇夜のように纏わりつく。その黒炎は軍勢を飲み込むが、その光景に反して軍勢の勢いは増した。目は真っ赤に輝き、咆哮を上げる。



 ──キュルルッ!?

 ──ガアァァァァァアッ!!


「ふははははッ!よいぞッ!よいぞッ!何もかもッ蹂躙せよッ!」



 均衡しているように見えた両者の、その天秤が大きく傾いた。虹色はあっという間に血で赤く染まり、黒色の身体と剣が軋む音が聴こえるようだ。虹色は瞬く間に数を減らし、最後の虹色が倒れ伏す。



「ふははッ…?ふむ?」



 少女は高笑いを止めると、キョロキョロと何かを探す素振りを見せた。窪みになっている大地─、虹色の大きな死体─、枯木の集まる砂地。そこで少女の目は止まった。



「そこだな?隠れるならもう少し上手く隠れよ」


「…」



 何もない虚空から極彩色のドレスがぬぅっと現れる。それは、整った顔の美女であった。手には宝石で彩られた大振りな剣。その切っ先を少女に向け



「くぅっ」


 ──ガァァッ!



 近くに居た黒色の一体が美女の顔目掛けて剣を振り下ろしていた。美女は咄嗟に剣で防ぎ後ろに跳び、難を逃れる。が、新たな黒色が既に背後に待ち構えていた。



 ──ギィッ!


「いっっ!」



 剣は美女の胸を後ろから串刺しにした、と寸での所で美女が屈み剣の刺さる位置を胸から肩へずらす事が出来た。美女は無理やり刺さった剣を引き抜き、立ち位置を整える。

 その光景を、少女はじっと見つめていた。


 美女の持つ剣が虹色の光を帯び、駆けた。よく美女を見れば剣だけではなく靴までもが光を放っている。その速度は、速い。反応仕切れなかった黒色は剣を振るうが遅い、遅すぎる。

 だが、その後ろには更に黒色が控えていた。その剣は避けられない。



「アルカンシェルッ、バーストォッ!」



 美女はその黒色の剣を、虹色の光を解き放つことで腕ごと跳ね飛ばした。黒色の腕からは、どす黒い血が吹き出て美女の頬にへばり付くが美女はそれに構わず、剣が退いたことで得た空間へ身を滑り込ませ、間髪入れず足を進めた。


 だが、その先に居るのは少女ではなく、剣の切っ先であった。



「いぁっっ」



 剣は美女の着ているドレスを気にせず、右肩から左脇へと切り裂いた。一目で致命傷だと分かる美女。だが、その瞳は闘志を棄てては


 美女の左腕に新たな剣が突き立てられる。更に胸へ腹部へ右腕へと黒色が殺到し、美女の身体は剣で針山の様な状態へと変貌した。瞳から色がゆっくりと褪せていき、靴を覆っていた虹色はチカチカと明減を繰り返しいつしか輝きは失われていた。

 そんな美女に少女が近付いていく。



「戦法としては悪くなかったぞ。だが虹精竜のみなのはいただけない。ここの地形は歩兵が強いのだから、精霊兵を加えるべきだったな」


「…ぃ霊兵?知ら…」


「ふむ?全解放もまだだったのか。兵隊も服装も統一されていたから気付かなかった。いやいや、下手に兵の種類をバラけさせず統一させてここまで運用するのは見事。もう少し頑張れば精霊系統の強化が解放されると思うからもう少し頑張ってみてくれ」


「……ぁ、りがと、ござ…」



 美女の瞳から光が消え、その身体は亡骸と成り果てた。亡骸からは黒色達が剣を引き抜かれていくが、何本かに引っ掛かり亡骸が転がる。少女は他の方向を見ていた。



「ショートカット、マイページ、オープン」



 少女がそう呟くと、目の前に半透明なプレートが突如として現れた。少女は顎に手を置きながらそれを見詰める。



「あいつ、本当に初心者か…。もう少しロールプレイ抑えて優しくするべきだったかな」


「どれ…?PN:フェアリープリンセス?一貫してるなぁ」


「鳥帝国に近いから警戒し過ぎたか…?まあ警戒しすぎってことは無いだろうけど」


「あっと、一応破損が無いか確認しておくか」


 ぶつぶつと先程までとは打って代わり、落ち着いた様子で呟いている。少女の指がプレートに触れた瞬間、表示が切り替わった。



 ▽

 PN:お煮しめ


 Rank:15


 領土:ランキング7位


 HP 73/73


 MP 97/129


 攻撃力 27 +40


 持久力 32


 防御力 35 +45


 敏捷性 15 +35


 配下(ユニット)ポイント:127480


 随行中 黒剣大鬼(オーガ) 453体▽


 装備欄

 頭 黒鬼の付け角(鬼神の輝兜)△

 ・鬼系配下:攻撃力+100%

 ・鬼系配下:敏捷性+100%


 首 神聖木の首飾(鬼の晒し首)△

 ・鬼系配下:HP+50%


 胴 桜の和装(骸穢鬼の骨鎧)△

 ・鬼系配下:攻撃力+50%

 ・鬼系配下:防御力+50%

 ・MP回復量微増


 腕 聖炎護腕(悪鬼羅刹の呪腕)△

 ・鬼系配下:防御力+100%


 脚 夏祭りの草履(百鬼夜行の呪靴)△

 ・鬼系配下:持久力+50%

 ・鬼系配下:敏捷性+50%


 武器

 聖炎護手(暗黒童子の呪焔剣)△

 ・スキル付与:狂鬼乱舞

 ・全系配下:攻撃力+10%

 ・全系配下:防御力+10%

 ・全系配下:敏捷性+10%

 △



「…黒鬼の損失が47体。補充しとくか」



 少女はそう呟き、プレートを弄る。すると突如周囲が輝き、光の中から黒い鬼がぬぅっと顔を出す。その手には既に剣が握られていた。

 少女は新しい黒鬼を見渡し、後ろに倒れている虹精竜の亡骸に目を向ける。



「これで良し。…食糧もあるし、ここで待機で良いか。…そろそろ飯を食いに行かないとな」



 次の瞬間には、少女の姿は消えていた。残されたのは黒鬼と竜の死骸と荒れ果てた大地のみ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ