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私と紅茶と小説と

罪悪感の狭間

作者: yuki


 全部、俺のせいだった。

 俺が全て壊してしまった。

 気にするなと言ったあいつの顔も、俺は見ることができない。

 だからどうか。どうか……。


 俺の友達はよく髪の毛をいじっていた。どういう意味があるのかは知らなかったが、それは癖のようだった。その容姿は俺が認めるほどのかっこよさ。ほんのりと茶色の髪もその顔とよく似合っていて、かっこよかった。

 そんな彼には彼女がいた。黒髪で小柄な彼女は可愛くて、とてもお似合いだった。……そう。お似合い“だった”。

 あれはきっと、照れ隠しだったのだと思う。キッカケを作った俺がいうことでもないが、あれはマズかっただろう。彼は、とても大人びている分、あからさまなカップル、というか、ラブラブな2人、というか、そんなことをするのは恥ずかしかったのだろう。……なんてバカな言い訳をしているが、そのカップルを別れさせてしまったのは、他ならない俺なのだ。俺のバカで考えなしの一言で、2人は別れてしまった。


__ダメだ。


 別れさせてしまった、という罪悪感も確かにあるが、それだけじゃない。よく分からないけど、あの2人は離れてはダメなんだ。せめて仲直りでも……。

 なら、俺がすればいい。仲違いのキッカケを作ってしまった俺が、仲直りのキッカケを作ればいいんだ。


 そうと決まれば、俺はどうすればキッカケを作れるかを考えた。彼はもう無理と諦めているようだけど、この世に不可能はない!……という言葉を信じて頑張りたいと思う。

 まず、彼女がどう考えているのかを知りたいので、彼女のクラスへ行った。バレないようにしていたつもりだが何回かは鉢合わせてしまった。普通に出来るはずもなく、罪悪感で顔を歪ませてしまう。それを見て、彼女も複雑な顔をしていた。


 次の年、俺は彼とクラスが離れてしまった。……そして彼女と同じクラスになった。確かにキッカケをうかがうには絶好だ。しかし、顔を合わせると、どうしても申し訳なさが勝って。「ごめん」と思わず呟いた時には、彼女の顔は怒りに染まっていた。

 ああ、やっぱり俺に仲直りのキッカケを作るなんて無理なんだろうか。……いや、やるんだ。やってみせる。


 3年になって、また彼と同じクラスになった。2年の時に偶然、彼女の志望大学が聞けたのは、本当に運が良かったと思う。俺の成績で果たして入れるかは分からなかったが、これは頑張らなければと授業を寝ずに真面目に頑張った自分を全力で褒め倒したい。


 彼は大学に行く予定がなかったので、誘いやすかった。俺が誘うのに奇妙に思っていたようだが、了承してくれた。むしろ俺の成績を心配してくれた。これだから成績のいいやつは!

 不安が残るものの万全の体調で試験を受けれたのはよかった。そして無事、俺と彼は大学に入れた。


 ……ここで俺は一つミスを犯してしまった。彼女の学部をリサーチするのを忘れてしまっていた。案の定、学部が違っていた。これでは見かけることはあっても話す機会なんてゼロに等しい。

 そんな時、偶然彼女がサークルに入ることを知った。地学サークルに入るらしい。……どうしてそのサークルを選んだんだろうか……知った時、そんなことを思ったが、とりあえずその事を考えるのはよしておこう。では早速地学サークルに……うん、それは流石におかしいか。

 これはいいチャンスだと思うんだけどなぁ、と思いながら、サークル一覧を見ていると、ふと目に入ったのは『天文サークル』……の説明文。

“地学サークルとの合同制作があります”

 ……これだ。これしかない。これにしよう。

 地学サークルがもちろん確実だけど……うん、天文サークルにしよう。

 そう決め、彼のところへ向かう。そしてすぐに『天文サークル』について話し、一緒に入ることが決まった。


 しばらく経った頃やっと待ちに待った、共同制作の日。顔合わせから始まった。

 先に地学サークルは集合していたため、俺たち天文サークルら少し遅れて入る。チラリと彼の方を見ると、目を見開いて、ピタリと固まっていた。

 対する彼女は彼と俺を見て、フイ、と目をそらしてしまった。

 ……あれ、もしかして俺たちがこの大学だって気づいてた? するともしかして追いかけて来た未練タラタラの重い男と思われ……てないか、驚いて固まってるし。

 彼が上の空の間、淡々と進んで、担当もどんどん決まっていく。さりげなーく……はなってないと思うが、彼女と同じ担当を推薦しようと頑張っていく。結果、2人は同じ担当になった。だが、俺がした、というよりは俺の意図を理解した彼女が一緒にしてくれた、という方が正しいかもしれない。……これは期待を、してもいいのだろうか。

 2人が一緒にいるのを確認してから、俺もすぐに持ち場に行く。


 ……成功するだろうか。何年も考えて、ミスもあった。成功するかなんてもはや賭けだ。でもどうか、あの時の関係に戻って欲しい。


 彼らが別れた季節を、迎える前に。


もしよければ同じシリーズに入っております、「悲しいキッカケ」と「後悔の海」というこの作品の関連作品も読んでいただければと思います。よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] あらすじだったか、前書きだったかに、「後悔」だと思われる漢字が、「公開」になっていましたよ^^ [一言] 読ませていただきました。 「セリフ無し」で、ひたすらにひとりの少年の葛藤を描…
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