誰に殺されたい? 出会い
あれ、ここはどこだろう。
暗闇の中手探りで歩く。真っ暗でなんにも見えない。
「....なんで殺さなかったの。」
あれ?誰かの声が聞こえる。
殺す?誰を?誰が?
「...悪い。」
「ユキは、甘いんだよ。
次、俺の邪魔したら本気で消すから」
「....ああ。」
誰の声?ユキ?
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「っはぁはぁ。」
「あ、目覚めた?」
「あ。」
少しの頭痛と共に起き上がれば
会社の同僚のアキくんが心配そうなかおでこちらを見ていた。
「..っ痛い」
「まだ無理しちゃダメだよ。
捻挫みたいだから安静にしてれば大丈夫。会社にも連絡入れておいたから。」
治療がされた足をみて安堵すると共に
あの時のことを思い出しぞっとする。
あんなに大きな看板が直接落ちてきたら
いまごろ...
「大丈夫?」
「う、うん。アキくんにはいつも迷惑かけちゃうなあ。ごめんね」
「別に。同僚なんだし当然でしょ?」
にこりと微笑むアキくんは、会社の中でも上司から頼られ後輩からは慕われ
女性社員からはモテる。そんな絵にかいたような男性だ。
そんなアキくんがわたしなんかのために
病院にいるって知ったら妬まれちゃうなあなんてのんびりしたことを考える。
あ、そういえば。なにか忘れてる気がする。なんだっけ。そうだ。あの時。
「あ、アキくん。わたしのこと助けてくれた人ってわかるかな??
あの時、誰かに助けて貰った気がするんだけど。」
そう、確かあの時あの声の人がわたしを
突き飛ばしてくれたおかげで助かった。
「え?..おれが連絡もらって駆けつけたときはもうそれらしい人はいなかったよ?」
「そっ、かあ。お礼言いたかったなー」
「...ふーん。」
誰だったんだろ。見たことない人だったなー。
「じゃあ俺行くね。安静に、ね?」
「あっ、うん。ほんとにいつもありがとう!」
優しく頭を撫でられる。
すごい女の子扱いなれてるなあなんて
おもいながらアキくんに微笑む。
「どういたしまして。」
お医者さんによれば特に重い怪我はないので明日から会社にも出れるそうだ。
長期で休むことにならなくてよかった。
「今日は思う存分寝ようかな。」
わたしは今自分が置かれてる状況に
気づきもせず深い眠りについた。