見初めて魔女は魔法幼女を作る
部屋に通され、用意された席に着く。
すかさずルミーナが背中から出した悪魔に紅茶を淹れさせて、相変わらず仕事しねぇなと私に思わ
頭を掻きながらカーマインは周囲を見渡して、落ち着かなさそうな反応をしていて、似たような反応を勇者もしていた。
この場で落ち着いているのは女性陣だけだった。
引かれた椅子に座り、横から差し出された紅茶を口に運ぶ。
アマーリアは向かいの席に座って、ニコニコと微笑んでいた。
「それで、私は同行するだけでいいのかしら?」
「はい、概ね合ってます。お手伝いという形ですかね」
お手伝い、とその言葉に怪訝そうな表情を浮かべながらルミーナが復唱した。
私も何を手伝わされるのやらと、不思議に思う。
アマーリアは、少し眉間に目尻を下げて困ったような顔をしながら、その訳を口にする。
「私、召喚以外は本当に専門外ですので原理が分かってないのですが、慈善事業をすることで勇者様は強くなるのです」
「中々、興味深い話ね」
集中して勇者を見て、魔力の流れなどを観察するがこれといって変わった様子はない。いや、良く見れば常人よりも吸収する外部からの魔力が多い。勇者だから、といった固定概念が無ければ異常だと思うくらい大量に吸収している。
ジッと見つめる私に、勇者は何を思ったのか照れながら微笑みを私に向けてきた。
何、笑ってんだよ。私はイケメンが嫌いなんだ、死ね。
ニコポとかオワコンだかんな、早く死ね。
「もう勇者様ったら、女性をマジマジと見るなんて失礼ですよ」
「あぁ、ゴメン。彼女が余りにも綺麗だったからね」
パキン、っと音を立てて茶器に皹が入る。
それは私の物であるが、アマーリアの物にも皹が入っていた。
何かを察したのかカーマインとルミーナが風のように、驚愕すべき早さで身構えたが、勇者は気付かずに首を傾げていた。
その横に、目のハイライトが消えたアマーリアを侍らせて……
冷や汗が額から滲み出る。
格下であるアマーリアに、一瞬気圧されたのだ。
地力は上とは言え、無意識に放たれた魔力に身体が反応したのだ。
これは魔法を嗜めば何となく分かる物で、この威圧感は誰でも怒っているというのを感じれる代物だ。
なのに、何でコイツは首を傾げているんだ……物理的に影響が出るくらいだぞ……
例えるなら怒鳴ってる人に向かって、アレアレ何を怒ってるんですか、と聞くような空気の読め無さだ。
「そもそも、異世界に来て始めて会った人だよ。俺にとってはアマーリアと同じくらい大事な人さ」
「あらあら、大事な人ですか」
テメェ、女の友情ブチ壊しておいて何を笑ってやがる!
イケメンは人の気持ちが分からない、空気が明らかに悪くなった。
アマーリアさん、いつからヤンデレ属性になったんですかね。
「勇者様には悪いけど、私はもう人妻なのでね。まぁ、一夜を共にする前に死なれてしまったがね」
「一夜を……」
顔を赤らめるんじゃねぇ!そんなの男がやっても可愛くねぇんだよ!
勇者は恥ずかしそうにしながら、別にそういう意味じゃないと慌てて言う。
「そういう意味って何ですかね」
「ルミーナ、楽しそうに煽ろうとしないの」
まぁ、その一言を引き出したお陰でアマーリアも落ち着いた状態に戻って漏れだす魔力も少なくなった。
ふぅ、やれやれ……こんな体験、二度とゴメンだ。
げっそり、何もする前に疲れながらアマーリアの話しと勇者の様子を繋ぎ合わせる。
「仮説は立てれたけど、実証しないといけないわね」
「まぁ、もう仮説が立てられたのですか?今までは経験則でしたので、もし原理が分かれば今までより効率的に動けるかもしれませんね」
「取り敢えず、慈善事業とやらをまずはやらないと分からないわ」
私の案に頷き、数時間後に私達は神殿を出ることとなった。
その過程で、私は自分の信者を増やすことを計画する。
このまま、信仰数が下回っていると教会の神にパシられるからな……
植物のように静かに生きたいので、早く引き籠って遊んで暮らしていたい。
国の知識階級は排除して、啓蒙思想で染め上げて、神殿の教えは絶対正しいと信じさせる。
そうして神を信仰させて、不満はすべて魔王やモンスターのせい。
モンスターがいることで、人に対して不満が向けられない今の状態はある意味では平和だ。
ここで魔王を倒した方が悪化しそうだけど、教会の方針だから仕方ないね。
悪神の奴等に負けて信仰を取られたくないけど、モンスターが全部いなくなるのは困るみたいな感じだろ。
崩壊している場所はなく、つい最近まで戦場だった名残はない。
これもあれも魔法で解決して、問題はないように見せてるのだ。
人の心は魔法でもどうにかならなくて、全体的に雰囲気はくらいけどね。
「それにしても、街は綺麗なのに人は薄汚いわね」
「何で新しい服を買わないんですかね?」
「おいおい、普通は服なんてお下がりだし風呂も毎日は入れねぇよ」
これが格差社会か、政府の奴等は何してるんだ。
搾取してたから、教会によって斬首されまくったんだった。
もうこれからは教会によって良くなると思ってるんだろうなぁ……
慈善事業って何やるのかなと思ったら、炊き出しなどを行うらしい。
みんな、グールやゾンビと大差ない状態で炊き出しに群がっていく。
因みに我先にという感じで兵士に殴られてる、列を作れよ。
「コイツら自分達の金で炊き出し喰ってるって気付いてるかな?」
「税が何に使われてるかまで考えられるほどの頭なんてないですよ」
「生きてるだけじゃ馬鹿になるなんて、教育の大事さが分かるわー」
やった、俺達を虐める政府が無くなって教会が助けてくれるぞ。
炊き出しもしてくれて、俺は信者になる。
戦争起こして奪った金で炊き出ししたら信者増えた、コイツら気付かずに馬鹿だな。
うん、多分こんな構図だろう。
さて、炊き出しをやって人気取りをしてる彼等の近くで私も布教をしようと思う。
手伝い?そんなものはカーマインが私の変わりにやるからいいんだよ。
近くで炊き出しに群がっていた子供の中から女の子を探す。
いや、男を信者にしても嬉しくないし、頼まれても願いを聞き届けてやろうとは欠片も思えないからね。
手頃な子供がいたので、そっと頭にタッチした。
瞬間、女の子と私以外の存在が動きを止めて、世界が静寂に包まれた。
「えっ?」
誰も動かないその場所で、発せられたには弱々しい声はハッキリと耳に届いた。
そして、女の子は周囲を見渡して異常を察知して触ったであろう私を探す。
「えっ?何これ……」
何が起きてるか分からない、そんな彼女の状態は簡単だ。
思考速度を加速して相互間でやり取りしているのである。
その際、負荷が掛かって脳がパーンとかしそうだけどそんなこと無かった。だって魔法だからね、過程とか原理を吹き飛ばして結果だけが残る。
「聞こえますか……聞こえますか……」
「声が、聞こえる!」
「私は……神ですよ……」
「神様……本物?」
目の前に立っているが、認識できないのかキョロキョロする女の子。
チュー出来そうな距離で語りかけてるのに気付かれなくて企画物の……まぁ、これ以上はやめておこう。
「貴女は選ばれた……魔法幼女に……」
「魔法幼女?」
「さぁ、貴女はどんな魔法が欲しいですか?」
「あの、魔法幼女とは一体……それに、もう私16です。成人しています」
……えっ?いやいや、小さ過ぎるだろ。
それマジ?いや、分かってたし!超試してただけだし……
「貴女は正直者ですね、どんな魔法が欲しいですか?」
「悪魔なんじゃ……私、いらないです」
「全てを消し去る魔法が欲しいのですね」
「いやいや、違います!曲解です!あぁ、もう!じゃあ誰かを癒せる魔法を下さい」
ほほう、医者になって金持ちになるつもりだな。
これだから歳を取ると欲が出て来ていかん。
まぁいいや、っと私は彼女の額にデコピンをかました。
「あうっ!?」
「私は女神セレスティーナ、いつまでも貴方を見守っていますよ……」
「ちょ、痛ッ……待って、頭に何か、なんだこれ!」
私が行ったのは記憶の移植、回復魔法の使い方をデコピンで注入した。
これで気付けば使い方が分かるという、ご都合主義みたいな感じで魔法を修得させた。
素質はあるし、無意識で出来ると思ってるから出来るようになっている。
彼女を、ジャンヌダルク計画の第一号として第二、第三のジャンヌダルクを産み出さなくては……
「なんだこれー!?」
「セレス様セレス様、浮浪児の中に世の理不尽を嘆くセレス様好みの女の子がいますよ?」
「ルミーナ、既に唾浸けといたから問題ないわ」
「流石手が早い、ノータッチの信念はどこに行ったのか。ルミーナは感服してしまいます」
「喋ってねぇーで手伝えよ、おい姉ちゃん聞いてる?ルミーナ?無視しないでくれますかね!」




