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どうやら魔女は婚約破棄したい

私の婚約は六歳の誕生日パーティーと同時に発表するらしかった。

社交界デビューというのは婚約とか婚姻出来る年齢からだと記憶しているんだけど。

つまり、もっと先のそれこそ中学生くらいの年齢までないのでは……と思ったのだがこの世界ではどうやら違うようだった。

まぁ、恋愛物の小説でも幼い時から婚約者がいる物だし、学園物なんかでは登場人物が若いせいか婚約時の年齢が下がっていたりするからおかしくはないのだろう。

もしくは、ロリコンばかりの世界だからかな。


さて私の行うパーティーだが、所謂舞踏会と言われる奴である。

ルールとして一番地位が高い者が最初に踊るらしい。

今回は、自分より上の立場の人間を呼んではいない為に侯爵が一番地位の高い者だ。

つまり、主催者である婚約者殿が一番最初に踊ると言う事だ。


「えぇ、ってことは踊るの?選択科目は柔道だったんですけど」

「お嬢様は何を言ってるのですか?」

「ねぇ、コルセットきついから休んでいい?帰りたいんだけど」


本日は予行練習、顔合わせとダンスの打ち合わせとの事で私は侯爵の家にてドレスに着替えていた。

何でも親の意向らしくってお互いにちゃんとした格好で対面するらしい。

私としては着の身着ままで良いと思うのだがダメらしい。結婚したら綺麗も汚いも色々な姿を見せるようになると思うんだけどなぁ。


「それではお嬢様、約束事を復唱してください」

「分かっているよ」

「いけません、本番で間違いがあっては遅いのです。さん、はい」

「簡単にテラスや温室には行かない、自分と同じもしくは低い地位の人と踊らない、壁に視線を送らない」


どうしてこんな約束事があるのか、テラスや温室でのデートは貴方が本命ですよというサインらしいからだ。また、自分と同じか低い地位の人間と踊るのは断っても良い相手とわざわざ踊ることから浮気と見られても仕方ないそうだ。それと一応言われたのが、壁際に視線を送らない事だ。

なんかモテない女達がいるらしく、知らない間に恨みを買うそうだ。

所謂、壁の花は無視しないといけないのだ。見ただけで恨むとか喪女怖すぎる。


「はぁ、どうしてお嬢様はそんなに嫌がるのですか。これでは侍女一同困ってしまいますよ」

「だってパーティーよ、頭から飲み物掛けられたりドレス破かれたり無理矢理部屋に連れ込まれたりするんでしょ?」

「そのような事はございませんよ。いったい、誰の入れ知恵なのかしら……」


困った風に言うメイドさんの言葉に私は首を傾げる。

おかしいな、前世の記憶にはそういう物だと認識されていたんだけどな。

そうこうしている間にドレスを着こんだ私は移動する事になった。

凄く苦しくて動きにくい、なんでこれでブリテンの王様は戦えたのだろうか謎である。

と言う訳で武闘派でない私は魔法で浮いて流れるように移動していく。

いやぁ、足元が見えないから楽だな。足なんてなくても良いんだ、偉い人には分からんのですよ。


「お嬢様浮いてますか?」

「うん」

「やっぱり、御止めになってください」

「後でね」


廊下を進んでいき、ある部屋の前に辿りついた。

私はいつもの調子で魔法の見えない腕を使って扉を開けて行く。

意味はないけど指ぱっちんを添えてやる物だから、かっこいい。

ぺちん、と間抜けな音と同時に両開きの扉が開いた。


扉の先には両親と知らないオッサン、そして婚約者だろうガキがいた。

ガキは子供特有の丸みを帯びているが意外と整った顔立ちで男らしい面構えだ。

将来はイケメンになる事だろう、つまんなそうな顔をしているが何だろう目が死んでるってこういう奴の事を言うんだろうか。イケメンか、死ねばいいのに。


「お初にお目に掛かります。アークライト家が嫡女、セレスティーナ=アークライトでございます」

「おぉ、おぉ、彼女が例の!素晴らしい、伯爵もさぞ鼻が高い事でしょう」


侯爵のオッサンがびっくりしながら大げさにお世辞を言ってきた。

おい私は知ってるんだぞ、アンタがブサイクって本当なのみたいに両親を疑っていた事をな。

侍女経由で聞いてたんだからな。

まぁ、私ってば可愛いから一目見て意見を変えるのも仕方ないか。前世の目線で客観的に見れる私が言うんだから間違いない。ナルシストじゃないよ。魔法を駆使して髪はサラサラで肌も艶々だからな。保湿とかキューティクルとか維持や復元する魔法で完璧に仕上げているぜ。

にも関わらず、つまらなそうにしている婚約者殿にイラッと来る。


「オーウェン家が嫡男、ローグ=オーウェンでございます。お会いできて光栄です」

「ハッハッハ、どうやら照れているようですな」


顔は笑顔でありながら、態度は素っ気ない物だった。

侯爵のオッサンが息子のフォローに回るが、意味はないと思われる。

テンション低いよ、絶対光栄だとは思ってないよね?

でも、この年齢で社交辞令とはやりおる。


「噂と違って安心しました。もっとも、噂通りでも問題はないんですけどね」

「ありがとうございます」


どういう事だ?褒めてるのか、そうなのか?

良く分からいけど取り敢えず私は笑顔を張り付けて礼を言う。

取り敢えず笑顔で流す、これ前世の記憶からの処世術。


「いやぁ、どうやら仲睦まじい様子。我々は別室にて歓談と行きましょう」

「そうですね、えぇ、そうしましょう。セレス、分かっているね」

「はい、お父様。粗相がないように努力いたしますわ」


帰りたくて仕方ない私に父親は退室しながら釘を刺した。

おいお父さんよ、その分かっているねって問題を起こすなということかね。

誰も好き勝手問題を起こすつもりはない。しかし、これが婚約者か。


「おい」

「はい、なんでございましょうか?」


えっ、今の婚約者?

いきなりだな、親がいなくなった途端にキャラ変わり過ぎでしょ。

嫌だわ、男の子って言葉使いが乱暴で嫌だわー。


「お前は魔法に詳しいらしいな」

「まぁ、それなりに……」

「どの魔法を専門に扱っているんだ?象徴を媒体にした物か、それとも四大元素を元に精神体を利用するのか?僕は利便性の高い色魔術を習得しているんだが君は何を習っているんだ?」

「いや、独学なんで特定の魔術は習ってないです。あと、特にこだわりとかないです」


婚約者殿は最初はちょっとした呟き程度だったのだが、自分で話した物に興奮したのか後半になるにつれて饒舌になっていた。いや、いるよね自分の好きな物を語る時だけテンションが高い奴。

前世の記憶に、アニメの話しだけ良くしゃべるね……キモッ、って言われて凹んだ物があるのできっと私の前世は彼みたいに好きな物に熱く語る奴なのだろう。

ちょっと涙が出て来そうになってくるが、前世の記憶の私は強く生きろ……いや、もう死んでるのか。

前世の自分って、私より苦労してたんだな。

それで、えっと魔法だっけ?


「何だ、呪い程度か」

「いや、ちゃんと使えますよ……ほら」


私が何と無しに杖を動かして宙に浮くと婚約者殿は固まっていた。

えっ、何故に……


「どういう原理なんだ。詠唱はどうした、もしや補助魔術として魔法陣をドレスの内側に使っている。いや、それだと服だけが浮かぶことになる。では聞こえなかっただけ、だとしても何の属性を媒介しているんだ。風は吹いていないから風属性ではない、まるで意味が分からない。もしや――」

「うわぁ……」


婚約者殿はブツブツあーでもこーでもないと譫言のように口にしていた。

瞬きもしないで私の方を見て、ブツブツ言いながら時折笑ったり怒ったりする子供がいた。

恐いよ、目が充血してるし情緒不安定過ぎるよ。


「あの……」

「付与魔術か、浮くと言う概念を自身に付与している?いやそもそも、肉体に魔法陣を刻んでいるのかもしれない。だが嫁入り前だぞ、投影か。魔法陣を投影魔術で、まてどこを起点に投影している。そもそも魔力が足りなくなる、貯蔵していた。しかし、それほどコストの掛かる魔法では――」

「私、帰りますんで……」


人に無視されると言う経験を今世で初めて体験した私は、恐怖を催す婚約者殿を置いて一人部屋から退出した。

拝啓お父さん、いやお父様よ。

私は問題なんて起こすつもりはなかったのですが問題が起きました。

その問題は婚約者だと思います、存在が問題です。

何アレ、魔法が好きって言うよりただの気持ち悪い人だよ。

婚約破棄したいです、誰か助けて。

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