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命令されて魔女は手伝う

城のような教会を進んで、部屋へと向かって行く途中、私は呼び止められた。

なんでも、教皇様がよんでおりますとのこと……こちとら神様やってるんですが、その対応はなんですか?

まぁ、寛大設定なので呼び出しに応じてやるんだけどね。


呼ばれて部屋の中へと入っていくと、玉座に見えなくもない華美な椅子に座った爺さんが待っていた。

周囲には少しランクを落とした金の掛かった椅子がズラッと並び、それぞれに人が座っている。

なんだこれ圧迫面接か?


「おぉ、神よ。我らが神よりお告げがありました」

「あっ、はい」


どうやら上司からの業務連絡をする為に呼び出ししたらしい。

なんだよ、直接言わなくても良かったじゃんと思うが聞いておく。

話が長くなるのか、どこからか現れた使用人がワインを勧めてくる。

ワインか、苦くて美味しくないんだよな。

手渡されたワインを軽く飲みながら話を聞く。


「神は言いました、西の果てに大いなる闇が趨勢を変えんが為に復活する。その者は闇に魅入られし彼方の存在、邪悪なる加護を賜りし堕ちた英雄。我らが勇者に立ちはだかる壁、汝が――」

「ちゃんと喋れよ」

「…………」


抽象的過ぎて何言ってるか分からなかった私は教皇の顔目掛けて杯の中身をぶちまけた。

いいんです、許されるんです。だって、神様だからね。

皆さんギョッと目を見開いて口をポカーンと開けている。

なにそれウケる、間抜け面ってこういうことをいうんだよね。


「きょ、教皇様!えぇい、無礼――」

「なに、文句あるの」

「――者め……」


誰かが文句を言っていた段々言葉が小さくなっていった。

私は優しいから、犯人探しはしないでおくよ。


「すみません、我らが新し――」

「もうお前いいからさ、巫女ちゃん呼べよ~、巫女ちゃんはよ」

「き、気分が優れぬ!巫女を呼んでおきなさい」

「きょ、教皇!お待ちを、教皇!」


更年期なのか、聖職者の癖に何だか起こった様子で去っていく教皇。

まったく、聖職者なら自分の失敗を人に八つ当たりするなよ。

確かに、気に食わないからってワインぶっかけしたけどさ。

でも、それって君の対応が悪いってことだからね。

つまり、謝れよ。寛大設定キャンペーン中じゃなかったら天罰だぜ。


「お、お待たせしました!」

「わぁ、全然待ってないよ!今来たところ」

「そ、そうですか。それは、良かったです」

「うん、それで神託あったんでしょ?教えて欲しくて呼んだのよ」


はぁ、やっぱり巫女さんいいね。

和風じゃなくて洋風で、全身青の祭服だけど、なんかピタッとしていて隠してるのに体のラインが見えてエロいよね。

あと、青色は処女じゃないと着れないと言う、全身から処女ですアピールがヤバイ。

純粋そうなのがいいね、純粋じゃなくても思い込めるから問題ない。


「あ、あの?どうして、頭を撫でるのしょうか?」

「気にしないでいいわよ」

「いえ、気になるんですが」

「それで、神託って?」

「はぁ……対の勇者が一人、殉教した棍棒の勇者がアンデッドとして蘇るという予言を頂きました。その身に悪神達の加護を宿し、魔王の下僕として人類を蹂躙せんとするだろうと我らが主神は嘆いております。その身は悪逆の権化として顕現し、主神の勇者を葬る運命であろうと」


全然教皇の言っていることと違う件。

伝言ゲームで失敗ってレベルじゃねーぞ、なんだよ大いなる闇ってテンプレ闇堕ち勇者でしょ。

だいたい、そんな気はしてたんだよね。片やイケメンの頭の軽そうな奴、片や雑な対応の勇者の下僕扱い。

実力というか素質は拮抗しているけど、女受けとか大衆人気とか扱いは片方が優遇されている。

そんで死んだ時に、復活しない?って魔王に誘われたら復活するよな、多分。

元勇者って事はモテモテだぜ?我が城のサキュバスを好きにしていいぞって言われたら下僕になるでしょ。

誰だってそうする、私だってそうする。


問題なのは、アンチ私な悪神共が加護を与えているってことだ。

なにそれ、一度死んだらたくさんの加護を持って復活ってチート?

自分で蒔いた種だけど、碌なことしないな悪神ども。

もしかしたら、百年位してから布教とかするかもじゃん。

もうちょっと、長期的に様子見しろよ。いきなり報復ってお前、短気過ぎるだろ。


「我らが主神は唯一現世に干渉している生き神である貴方様に勇者を救うようにと仰ってます」

「えっ、マジ?なんでよ、戦闘系の神を派遣しろし」

「えっと……あぁ、なるほど。今来たお告げによりますとやりすぎるからとか、後は面倒……いえ、色々と事情があるとか」

「いや、面倒って今」

「言ってませんよ、オホホ」


いやいや、誤魔化せねぇよ。

なんだよ、お前ら主神どもは神なんだろ!人類とか信者救えよ。


「まぁ、我らが神も異教徒を助ける義理とかありませんし」

「心が狭いな神様」

「ぶっちゃけると、お気に入り以外どうでもいいらしいので、あっ私はお気に入りですって」

「凄いこと口走ってるなぁ、おい」


人間臭いとそういう感じなのかな。

まぁ、そうだよな。神様だって好き嫌いあるよな。

でも、そのせいで冷遇されてる方の勇者放置で闇堕ちしてるんですが、何故にフォローしないといけないんだよ。


「我らが主神は言っています。どうせ暇でしょって」

「暇って、休むのに忙しいのに……」


これでも一応、上司になるんだよな。

従わないと、天使とか差し向けられるのかな。

やだなぁ、裸の羽の生えたオッサン達がやってくるなんて。

もう面倒くせぇよ、何が面倒くさいって、全部面倒くせぇよ。

百年くらいダラダラしてぇよ、宗教とか作って広まる様子とか気まぐれに信者を助けるとかして育成ゲームみたいに観察したり、アイデアが浮かび次第で魔法の製作とか、後は幼女とか遊んでいてぇよ。

もう、薄汚い大人より優しさの塊みたいな存在に包まれていてぇよ。


「はぁ……勇者のパーティーに入るんでしょ」

「そうですよ、何が不満なんですか」

「いや、ヘイト管理とか人間関係とか労働とか、そもそも旅とか汚れるだろうし、前衛職って血だらけでキモいし、後は危険が一杯だし」

「すみません、不満があるのは分かりました。でも主神命令ですので」


はい出た、神様の命令は絶対とか言うノリ。

言うこと聞かないなら呪うんだろ、どうせそうなんだろ。

クソが、私の方が信者が多ければ無視してやるのに、信仰値高い奴らはこれだから。


「分かりました、いきますよ。行けばいいんでしょ」

「あぁ、我らが主神も喜んでおります」

「本当は?」

「私が戦闘系を押さえているうちに頼む、世界が滅びるから、とのことです。戦闘系の神様って暴れたいだけですからね」


いや、本当どうしようもないな。

世界が滅びるからってのはどっちの意味でだよ。

私が行かないと戦闘系の神様が滅ぼすってことか?それとも魔王がってことか?

なんで、そういう信仰してるかな人間の方も、終末願望でもあんのかよ。

因みに世界は二、三回は滅んで再生とかしてるらしいよ。

信仰値が高くなって、天界に呼ばれても何か会いたくねぇな、マジで。

ともかく、私の勇者パーティー参入が決まることとなった。


「あっ、神様って事は伏せて下さいね。功績にされると困るらしいので」

「えぇぇぇぇ」

「我らが主神は、勇者様を神として転生させたいらしいので、えぇタイプとか」

「欲望に忠実過ぎるだろ、主神って女神だっけ?」


愛と豊作の女神、地母神、産めよ増やせよ、あっ察し……

とんだビッチだぜ、畜生。

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