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崩壊して魔女は裏切る

なんやかんやで、スタークの死体は吊るし上げられることとなった。

貴族達は領地に引き籠って徹底抗戦の構えとのことだが、ネットでは意見が割れていて混乱している模様。

匿名であり、旗頭となる存在がいないからだ。

ただ、大部分は第二王子の方に擦り寄って行く奴らと平民達が泣きつくと考えて領地に引き籠るタイプの二つに分かれている。

ちなみに、ウチのアルトリウスは見事生き残っていて次男ヘルマンに合流する形を取るらしい。

一時的に政府を別の場所に移して戦い続けるという認識で良いだろう。


平民達は賢者タイムに突入していた。

打倒国家、みたいな感じで進めていたのだが達成したら目標が無くなったという感じだ。

仕方ないので第三王子に協力していた数少ない貴族達が色々と調整をしているが上手くはいってないみたいだ。

そもそも、搾取と浪費が同時に行なわれていた為に平民達が思うより蓄えなどはなく、それぞれの貴族は自分達の領地に財産がある訳で王都には言うほどの富は無い。

よくよく聞けば、権威はあっても王家には富とかはないらしい。

多分、戦国時代の朝廷みたいな感じなんだと思う。


お金がないので新政府を立ち上げることはできなかった。

戦後処理すら侭ならず、不満の捌け口が無い故に争いは絶えない。

そして、平民同士の争いを諌め様にも支配者層に対する反感ゆえに警邏の兵士に従わない。

民主主義を作ろうにも、それぞれが貴族のようになりたい為に選挙で代表になろうと平民同士の殺し合いが勃発する始末。

選挙すら出来る状況ではなく、少ない資金でやりくりしている協力的な貴族に対して元奴隷達は貴族が残っているせいだと反乱を起こしたりする。

金も無く、人材も不足し、治安は悪く、国力は弱まっていた。


現状維持が限界であった。

そんな時期が続き、半年ほどで戦後処理も終わりいよいよという下地が出来た頃だった。

領地に篭っていた貴族達が第二王子を旗頭に出兵、国境付近の領地を持つ者に至っては他国と内応して攻め入る始末。

もう民主主義ってなんだという状態だった。

第二王子と他国が流動的に争う下地を作るだけの結果だった。


それでも、第三王子率いるルドルフ派の貴族達は義勇兵団を作り上げ戦うことを選んだ。

多くの平民達は他国や第二王子の下に付き戦力の確保が難しかったからだ。

そこで元奴隷達などが後戻り出来ない者達を集めて義勇兵とした。

彼らの目標は他国からの勢力を追い払い、第二王子派と膠着状態を作り降伏する方針だ。

ただ、蹂躙されるよりは少ない希望に縋るしかなかった。

そこに平民達の意思は反映されておらず、勝利しても現状が良くならないのに報奨を約束した。

押し切られる形で責任を追及されて、心が折れた王子は自分の身柄を引き渡すことで協力してくれた貴族に報いることを選んだ。

反対していたのは、婚約者とカーマインの二人だけだ。

今まで信じていた協力的な貴族達が手の平を返したのが心折れた理由かもしれない。


「人の夢とかいて儚いとは良く言ったものだ」


崩壊は一瞬だった。

そんなことを思いながら、蹂躙される領地を見て行く。

私の持っていた領地が第二王子の派閥に奪われ、そしてそこを拠点に戦いが繰り広げられていた。

第三王子に協力していたのは力もコネもなく、一発逆転に賭けた奴らだった為にあっさり裏切った。

残っていた平民達に限っては、今までより悪化したからと敵だった者達の下に今更ながら集まって前の支配される生活を取り戻そうとする。

前の生活が嫌な者だけが諦めて王都に立て篭もっている。

因みに貴族達は裏切った瞬間、カーマインが粛清したよ。

我が弟ながら、裏切り者は即座に斬首とは腐っても貴族の血が流れているな。

きっと地方の領地は蹂躙されたり返り討ちにしたり、地図が変わっていることだろう。

地図に残る仕事、戦争である。


で、なんで私の領地が奪われているのを黙って見ているかと言うと次男へルマンと長男アルトリウスが私の元にやって来たので第二王子の派閥に協力することにしたのだ。

悪いな弟よ、これも戦国の習い許せ。

でもってニコラスバートンの行なった方法を使って、私はそっくりそのままな異空間を作り上げて引越ししたので現実世界の方を好き勝手させてるのだ。

幼女さえいれば、また作ればいいからね。因みに王都の幼女もかき集めているぜ。

後、少ないけど純粋と言うか天然な少女や清らかな婦人とかも集めた。

男は知らん、というかいらない。どうしてもと縋ってきた奴らは喋れる動物に変えて奉仕種族として労働を強いることにした。

悪いことをしたら追い出されるので、みんな善人である。

やったね、理想郷だよ。


幼女もいつか大人になっていく、愛でる対象が年老いたらポイってする。

それでいいのか、いやダメである。

そんな卑劣なことはしないよ、ちゃんと大人になっても面倒見るよ。

ただ、大人になると邪な考えが芽生えるから消えても仕方ないよね。


「ここにいたのか」

「あら、何かしら兄さん」


前線が良く見える小高い丘、戦場でありながら後方の安全地帯。

場違いな場所にテーブルを置いて、大河ドラマみたいな合戦だぁ、と観戦していた。

そんな私の近くに、馬に乗ったアルトリウスの率いる集団がやってきた。


「あまり、拠点からいなくなるな。神殿の奴らが心配していた、奴らはまだ利用できるから上手くやれ」

「そうねぇ、善処するわ」

「予定通りなくらい圧倒しているが、戦況は変わるものだ。ここだって危なくないとは言えない」

「大丈夫よ、魔法があるもの」


私の態度に痛ましそうな視線をアルトリウスは向けてくる。

なんていうか、私の機嫌を損ねたくないけど気軽に話したいみたいな余所余所しい感じだ。

なんか真面目だから、カーマインのことが頭によぎってるのかもしれない。

私は全然気にしていないけどね。


「お前まで失いたくない。分かってくれ」

「うん、分かってるよ」

「分かっているなら、それでいい」


そう言えば、カーマインのせいで両親は惨たらしく死んだんだった。

それで守れなかった、みたいなテンションに陥りつつ身内であり仇であるカーマインと争うことになって、なぜかカーマインと仲良し認定されてる私に負い目を感じているみたいだ。


「兄さんも気を付けなさいよ」

「あ、あぁ。思えばお前とこうして話したのは初めてかもしれないな」

「あら、何よその反応」


驚くように目を見開いたアルトリウスに、不機嫌ですと言った態度を示す。

顔を背けてやれば、乱雑に頭を撫でられた。

そして、そのまま颯爽と御供を連れて去っていく。


「微笑ましいね」

「ぬるっと出てきたわね、ローグ」


アルトリウスが去った後、私の後ろからローグが現れた。

というのも、コイツはゴースト扱いされるので基本的に異空間に篭っていて姿を隠しているのだ。

まさか、見られるとは思わなかった。


「奴は潔癖すぎるからな、いつか背負いすぎて潰れるかもしれん。難儀な性格じゃ」

「あら、お爺様も見ていたのね」


ローグの後ろから、新しい人物がぬるっと現れる。

なんなのだろう、地面から透過するように出てくるのがゴースト達に流行っているのだろうか。

腹部まで伸びる白いひげ、そして輝く剥げ頭、威厳のある魔法使いみたいな姿のゴーストが地面から現れる。

それは、犠牲になったお爺様である。うん、ゴーストとして普通に出てきたのだ。


「しかし、奴の言う通り余り戦場にいるのもどうかと思うぞ」

「分かっているのだけどね」


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