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逃げられて魔女は揉む

奴が死んだことを確認した私は元の場所へと転移しようとした。

しかし、その時に違和感を覚える。

この空間を維持している奴は一体誰なのかと……

もともとある場所に転移しているなら、まぁ死んでも存在し続けるだろう。

しかし、位相の違う異空間となると人工的に作っているということになる。


「生きているのか、貴様……」


私は鎧の近くにある肉片に向かって声を掛ける。

だが、やはりそれに変化はない。

気の性か、私の考えすぎなのだろう。


「沈め」


だが、念には念をいれて更に細かくする。

赤い染みのように細かく散らばっている肉片を床に塗りつけるように潰そうと思ったのだ。

しかし、それは叶わない。

突如、鎧の中から赤い輝きを放ち何かが出てきた。

宝石のように綺麗な石だ。それも、とてつもない魔力を含んでいる。

同時に、人の意識が流れ込むように漏れだしている。アレは直視してはいけない、そういう物だ。


「やはり生きていたか」

『女性には手加減すると聞いていたんですがね』

「馬鹿め、私が優しくするのは幼女と淑女だけだ」


肉片が、鎧の繋ぎ目に向かって集まっていく。

そして、首無し鎧が立ち上がって右手に赤い石を握っていた。

それはリビングデッド、デュラハンに近い姿だ。


「お前、それは何だ?」

『何だとは、貴方が考案した物ですよ。そして、これはローグ氏が実行した手段』

「まさか」


声帯もないのに反響するような声が鎧から聞こえる。

恐らく、ローグと同じ手段との事なので自分の情報を鎧かなんかに書き込んだのだろう。

内側に血で練成陣とかないだろうな、おい。

そして、私は奴の言葉から一つの可能性を見出した。


「賢者の石か」

『はい、宮廷魔術師達の成れの果てともいいます。彼ら、奴隷の首輪を使わないと運用できなかったので材料にしました』

「凄いな、それでその魔力か。感情が込められているから、そんなにおぞましいのか。醜悪だな、そして実に興味深い」


私が魔力と信仰を糧に神となったように、それは魔力と怨念を糧に神のような存在に成り果てていた。

恐らく、怨念が尽きるまでは魔力を集めて蓄えて使用することが出来る。

私が神になった者だとしたら、アレは物としての神だ。神話級アイテムみたいな。


『いえ、失敗作ですよ。込められた怨念は有限、生者のように無限には供給できない。人の意思と言う無限に変換できるエネルギーは存在しないのです。ですが、このように』

「いいだろう、見せてみろ」


何かをしようとしている手前、私は邪魔しないといけないだろうが結果が見たくてそれはやめた。

まるで、自分の新しい力に酔って敵に情けを掛けた途端に完全隊になられてやられる王子のようだが、気にしてはいけない。

彷徨う鎧みたいな奴は賢者の石を握りつぶした。

それにより、目の前に赤い光が乱反射する光景が見える。

そして……


「このように使い捨てですが、肉体の再構成が出来る」

「なるほどな、込められた力を使って肉体を作ったのか」

「計算上では、百数年は維持できます。そして、最終的には魔力となって消えることですが、その前に肉体を作れば良いだけです」


させると思うのか?

そう疑問を覚えながら、取り合えず火炙りにするべく魔法を放つ。

別段、避けられることも無くあっけなく奴は足元から炎に包まれた。


「終わりだ」

「いいえ、それは違います」

「何を言っている?」

「言い忘れてましたが既に私は肉体を作っているので、ここので死は意味を持たない。さようなら、もし機会があれば再び逢いましょう。あぁ、その時まで暫しの――」


自らを薪として奴の体は燃え尽きて行く。

今度こそ残された鎧は黒く染まり、煤だらけとなって落ちた。

そして、異空間が、周囲の景色が揺らぎ霧のように薄れていく。

いつの間にか私は、死んだスターク王子のいる玉座の間にいた。


「姉ちゃん!」

「その声は……」


背後から声がした。

スターク王子の亡骸を見ていた私は、ゆっくりと後ろを見る。

そこには、満身創痍な姿となった愚弟カーマインの姿があった。

様式も違う、滅茶苦茶な装備をボロボロにして剣を杖代わりに私の方へと向いていた。

鎧は凹んだり穴が開いていたり、結構な激戦だったように思える。


「姉ちゃんが殺したのか」

「見ての通りよ」


返り血が付いてない私を見れば横にいたであろうニコラスバートンがやったと分かるだろう。

今はいないけど、ちょっと血のついた服を見れば私が戦闘していたと推測できる。

うむ、だから私がやってないと理解できるはずだ。


「ははは、そっか。姉ちゃんが、どうしてかな。いつも迷惑を掛けちまう」

「うん?」

「俺に王族殺しをさせないために、先に殺すなんてズルイよ」

「いや、私は殺して無いよ」

「えっ?」

「えっ?」


お互いに顔を見合わせるとはこのことかと、二人して首を傾げる。

そんなことをしていたら、奴の後ろから二名ほど掛けてきた。

一人はクソ餓鬼、第三王子ルドルフだ。

もう一人は婚約者のリリィちゃん、確か五行説みたいな相生、相剋、比和、相乗、相侮をタロットカードを使って戦うリアル陰陽師。

予め魔力を込めて、色や絵柄などの記号を用いて水、木、火、土、金の属性に分けた概念を元に魔法を構築している。

この世界が精霊、四元素をもとに考えられているところに一つの属性を増やして魔法を考えているのだから凄いことである。やはり天才か……


「カーマイン!」

「王子、えっと……」

「そうか、貴様が兄を討ったか……」

「いや、姉ちゃんが、アレ?いない?」


悪いな弟よ、私にはやるべきことがあるんだ。


「ひゃぁ!?」

「どうし……何をしているんだ!?」


そう、目の前のおぱーいを揉むって事がな。

大丈夫、同性だから問題ないよ!


「あぁ、うん、そういえば姉ちゃん女の子が好きだったなぁ……」

「遠い目をしている場合か!はよ、助けんか!」

「いや、結界まで張ってる手の込みよう。満足するまで何も出来ないですよ」

「嘘、だろ……」


NTRしてしまったようで、すまない。

許してくれ、だから見せ付けてやるから。

いやぁ、子供の成長って速いなー大きいなー。

もう、満足するしかネェ!


「み、見ないで下さいまし!」

「う、うむ。しかし、これは……」

「王子、ダメです。王子!」

「分かっているのだが、うむ、分かっているのだがな」


おいおい、素直になれよ。

顔は真っ赤にしているが、ガン見しているじゃないか。

揉みたいんやろ?でも、今は私のだから揉ませないわ!


「いや、こんなことしている場合じゃないと思うんですけど」

「そうよね、今すぐベッドインするしかないわ!欲望のままに、幼女や美少女を貪るわ!」

「待って!そんなこと思って無いから!違うから!」

「あら、アンタ少し見ない間に男色に走ってるの?まぁ、いいんじゃない。英雄色を好むって言うし」

「違げぇよ!なんでそういう事になってんだよ!普通に女の子が好きだからな!」

「分かってるわ。男色も女色もどっちも好きってことよね!色道を極めようとするなんて、中々のエロだわ!クーデターなんか起こして、本当にアンタってば生粋のエロテロリストね!」

「何言ってんか分かんねぇけど!その呼び方やめろ!」


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