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破壊して魔女は謁見した

迫り来る敵の軍勢が壊滅となった。

文字通り、壊れて滅んだ。

誰一人として生きている者はいない、そんな状況だ。

残るは、王都だろうか。悪霊を払わせ、拠点として使った第ニ王子の派閥を倒して、そして利用する計画は私の復活と言うことで頓挫した。

つまり、奴らは私が生きていることを知らない。


「詰み、だな」

「今頃、王都じゃ第三王子と愉快な仲間達が政府に逆らっている頃だろうね」

「それでは、制圧でもしに行きますか?」


ルミーナが握り拳を作りながら聞いてくる。

しかし、今の状態で新しい敵が現れたらどうするかということを考えるとルミーナには残って欲しい。


「そう言えば、アンタ戦えるの?」

「残念、今は状態維持が精一杯。魔力を必要以上に貯める器官もないけどね。いや、正確には機能を備えた魔力素とでも言うべきかな。これ以上は精神に関わる話しになるけど」

「長くなりそうだから纏めるけど、使えないって訳ね。アッチに行ったら反魔力物質で死ぬかもね、アンタも残りで」

「賢明だ。今の状態は、傍観者だからね。新しい肉体をホムンクルスで作ろうとも、拒否反応があるだろう。つまり、幾ら時間を掛けても君を単独で送り出すことになるってことさ」


チッ、使えねぇ……

まぁ、たかが平民の群れと魔法使いと錬金術師だ。

軽く一捻りすれば終わるだろう。私、俺TUEEE出来るしね。

虚しい物だな、強すぎるというのは……


「あんまり調子乗らないでくださいよ」

「フッ、私の敵などこの世にいない」

「いや、他の神とか色々いるでしょ。あっ、待って!魔力干渉しちゃうから、死ぬから!悪かったって!」


ローグの馬鹿に火の弾のような魔法をぶつける振りをして、懲らしめてから私は領地を発つことにした。

いつもの転移魔法、一度行った場所なら感覚で座標が分かるから便利な物だ。

まぁ、来られる側としたら安全の為に張られた結界が目印となるのだが気付けるのは魔法使いだけだ。


「転移、王都」


ノイズが走り景色が変わる、違う景色が交互に混ざって入れ替わるように見える。

そして、完全に景色が変わるとそこには私を囲むように武器を構えた男達が立っていた。

男達は汚らしい格好で、継ぎ接ぎだらけの服を着ている。

武器は、木を加工して作ったのか棍棒のような物だ。

男達の後ろには多くの人が、というか人が溢れるようにいた。

どうやら私は民衆の中に転移したみたいである。

久しぶりだな、人混み。


「うおぉぉぉぉ!」

「おりゃぁぁぁ!」

「あぁぁぁ!」


同時に私に向かって棍棒が振るわれる。


『外的ダメージを認識。反射しました』


しかし、既の所で私の防御魔法が発動して反射させる。

自動で発動された魔法により、棍棒は男達の手から弾かれるようにして手放される。


「無粋ね、物理とか」

「うおぉぉぉ!」

「跪け!」


いちいち、脳内にアナウンスが掛かるのがウザイので重力魔法で周囲の人間を強制土下座させた。

そして、視線を周囲に向ける。今更だけど、この中に子供はいないようだ。

さて、どうやら私は革命しろとか騒いでる奴等の中にいるらしい。

こんなの的でしかないと思うんですが、範囲攻撃で一発じゃないですか。

数が多い平民がやることは相手の魔力が尽きるまでの連続的なゲリラ攻撃だと思うんですが、まぁ彼らには思いつかないのだろう。


「しかし、こんなに人がいて宮廷魔法使いは何をしているのか、あと何とかベーコン」


いるとしたら王城だろう。

そう思った私は空中に向かって移動する。

空から浮上して見下ろせば、王城の下まで人が溢れている。

王城の入り口では、思い思いの武器で何度も攻撃している。

どうやら結界のような物が張られているようで壊して入ろうとしているようだ。

確かに結界に攻撃すれば、張りなおす際に魔力を使うのでそれなりの効果があるだろう。

ただ、例えるとそれは結界のHPに1ダメージをみんなで与えているという感じで効率が悪い。

おいおい、愚弟はどうしているんだ。アイツの一撃ならこれくらいどうにか出来るだろう。


「まぁ、どうでもいいけどね。転移……あれ?」

『転移失敗。妨害されています』

「なるほど、なんか細工されている訳だ」


じゃあ、押し通るだけである。

結界について移植した人工魔眼で見れば、王城を覆うようにドーム場に展開されている。

さて、これはどこの誰が張っているんだか知らないが邪魔である。


「落雷よ」


練り上げた魔力を上空に展開する。

同時に私の頭上に渦巻く小さな黒い雲が出来上がった。

それは遠心力で広がるように大きくなっていく。

その雲の合間には雷が垣間見える。


「落ちろ!」


手を上げ、王城に向かって下げる。

それに連動するように、黒雲から一条の巨大な雷が放たれる。

轟音が響き渡り、見えない壁に阻まれるように雷が落ち続ける。

落ち続けると言う表現は可笑しいが、王城の少し上空の結界、そこに向かって黒雲から雷が絶えず落ちているのだ。

魔法によって生み出された雷は、結界にぶつかり続けてガラスが割れるような音を引き出す。

結界に皹を入れたのだ。

空中に黒い線が蜘蛛の巣状に現れる、そして甲高い崩壊音と共に王城の一部を吹き飛ばした。


「うぉぉぉぉぉ!」

「今だ、行けぇぇぇ!」

「行くぞぉぉぉぉ!」


蜘蛛の巣状の皹は一気に広がり、結界の崩壊を加速させる。

空中には乱反射する結界の残骸がキラキラと落ちていき、何故か歓声を上げながら平民達が王城へと雪崩れ込んで行った。

これ幸いに、結界が壊れたから突撃しているのだろう。

なんか勘違いしてるけど、別にアンタ達の為じゃないんだからね。


「さて、今度こそ転移」


大体、馬鹿は高い所にいる物。

なので雷が落ちた王城の最上階へと転移した。

転移した先にいたのは、玉座に座って目を見開いている男と黒い長髪の女だった。

男の方は、第一王子スタークだ。憎たらしいほどのイケメンで私のことを分かった気でいた奴だ。

奴は玉座から凭れ掛かるように不恰好に座り、驚きに満ちた表情を見せていた。

その様子を横にいる女は醒めた目で見ている。

ふむ、どれ名乗りを上げようじゃないか。

私は綺麗なカーテシーで奴に挨拶する。


「お久しぶりです殿下。いえ、陛下と御呼びしましょうか?」

「ば、馬鹿な!奴は確かに殺したはずだ!奴を通して、貴様が死ぬ姿は見た!何だ貴様は、誰なんだ!」

「これは可笑しな事を、私でございます。セレスティーナ=オーウェン、貴方が殺した魔女でございます」


まるで亡霊を見たかのような、その狼狽え振りに思わず笑みが零れる。

まぁ、あながち間違いじゃないからな。死んで甦って神になったんだ、キリストが目の前に現れたらクリスチャンは同じ位びっくりするんじゃないかな。


「殿下、終わりでございます」


始めて女が声を上げた。

その声を聞いて、奴は女の方に縋る様な眼を向けた。


「奴を消せ!貴様なら出来るはずだろ、ニコラス!そもそも貴様が……」

「殿下、やはり貴方は相応しくない」


しかし、それに対する返答は……


「あっ、きっ、貴様……」

「裏切りではございません。だって、私は貴方の部下でも仲間でもなく協力者なだけですから、いまは利害が一致しなくなった赤の他人ですよ」


冷たいナイフだった。

女が抱きつくように胸に向かってナイフを突き刺し、耳下で囁いていた。

なんだこれ、サスペンス?超展開速くて付いて行けないんですけど。


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