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地味に魔女は撃退する

そうと決まれば、悪霊とか俺らの専門だから余裕だぜといったノリで攻めて来ている第二王子達の派閥をどうにかする。

第一王子達の方はまだ、悪霊が効果あるからだ。

こう空気中の原子をイメージして、そうだな空気の中には窒素がたくさんあるから液体窒素とかどうだろうか。

頭の上に掛けるとか、熱湯や油並みに効果があるんじゃないだろうか。

その為には冷やさないといけない。熱は、確か分子が動いてると熱くなるって電子レンジの説明の時に聞いたことがある。

なので、いい感じに球体が動かないイメージをすれば……


「あっ、なんか振って来ましたね」

「失敗した」


私とルミーナの視線の先、領地を守る壁の向こう側。

何やら陣形とか作りながら一生懸命御祓いしている集団の上に、影が出来る。

雪みたいに白い塊が、岩石みたいに疎らに現れたのだ。


「おぉ、窒素って空気中に沢山あるって聞いてたけど大きいな」

「まぁ、大体七割くらいかな?因みに空気より軽いから落ちて来ないよ」

「いや、落ちる。私が落ちると思ったんだから落ちるんだ」


そんな正論、魔法には効きません!

魔法はイメージ、間違っていた理論だろうが私の道理で捻じ伏せる!


「落ちろ!」

「うわ、本当に落ちてきた」

「っていうか液体になってません?質量無視してるし……」


固体だった窒素が、液体窒素になって流れ始める。

明らかに量が釣り合わないが、理屈じゃなくて感じるのが魔法なので気にしない。

白い濁流が退避しようとする奴らを飲み込んで、触れた端から白く凍らせていく。

スゲー、触れた場所が氷になってる。


「体の成分が明らかに変化しているんだけど、人間は水で出来てるわけじゃないよ」

「何言ってんだよ、八割は水なんだろ?じゃあ、もう全部水ってことでいいだろ!」

「ちょっと錬金術師が魔法使いを嫌う理由が分かった気がする」


えぇい、先ほどから非判ばかりでお前はどっちの味方だ。

足を引っ張る奴なんかお呼びじゃないんだよ。

そう言えば昔も似たようなことがあったな。

などとシミジミ思っている後ろで、何だか二名ほどドン引きしていやがった。


「想像力でどうにか出来てしまうから、錬金術は発展しないんだろうな」

「そんなことより、ちょっと見てきてくださいよ」

「なんか君達、扱いが雑じゃないかな?」


まぁ、私を殺した負い目でもあるのか文句は言っても従うローグ。

パッと行ってパッと戻ってくるのはどういう原理なんだろうか、シュレディンガー?いや、あれは思考実験だから関係ないのか。深く考えるのはやめておこう。


「跡形もなく、その砕けていたね。もっと肉の断面とか見えるかと思ったけど、全部氷像だよ。芸術的な魔法だね」

「それほどでもない」

「すごいなー、謙虚だなー」


そうだろうそうだろう。

ルミーナ君、もっと私を褒めてもいいんやで。

さて、次は第一王子の方である。


「この分だと余裕だな、一日で行ける気がしてきた」

「普通、無理なんだけどな。って、なにそれ」

「ポーションに決まってんだろ!飲んだら回復するんだよ!」

「あぁ、暇な時に魔力を込めてた水ですか」


炭酸水は水の中に炭酸が入っている。なので二酸化炭素の変わりに魔力を入れる。

そうすれば、魔力が回復するポーションが出来るのだ。

何故かシュワシュワするけど、これはそういうものなんだ。


「ただし、欠点はシュワシュワが抜けない無味無臭なので飲み難い」

「あぁ、だから果物の果汁と混ぜてるのか。ちょっと頂戴よ」

「仕方ないな、一本だけだぞ」


まぁ、鍛錬の時に作っていた為にたくさんあるので一本くらいあげても問題はない。

異空間に手を突っ込んで、異空間を経由してストックしている一本を取り出す。

因みに、この異空間は時間が進まない。異空間は時間が進まない物だからだ。

なので賞味期限を気にせず飲めるので、問題ない。


「はぁ、これがセレスの魔力か。あぁ、一口飲む事に君の魔力が入ってくる気がするよ」

「気持ち悪いこと言うな」


ビンが傾いて中の液体がローグを通過して地面に向かってドバドバ落ちていく。

勿体な!そうじゃん、こいつ物理干渉出来ないんだった!って、どうやって持ってるんだ!?


「中身捨ててんじゃねょよ!」

「大丈夫、魔力だけ取り込んだからね!君をちゃんと吸収しているさ!」

「キモイわ!水だって空気中から出してるんだぞ!綺麗な水は貴重なんだからな!」


また作ればいいじゃないかと、まったく取り合う気がないローグに怒る気もだんだん失せてくる。

はぁ、まぁ何にせよ魔力は大分回復したので今度は第一王子の方をぶっ飛ばすことにした。




第一王子達の布陣は、ちょうど第二王子達がいた場所の反対側であった。

巨大なタワーシールドにこれまた巨大な螺旋の槍。

前列には重歩兵、その後ろには砲兵、更に後ろには銃を持った兵士達、そしてペガサスに乗った騎馬隊などがいる。

ちょっと待って、ここだけ異世界じゃないか。


「おい、説明しろ。重歩兵は分かるがなんで砲兵がいるんだ」

「大砲を知っているのかい?そうさ、アレがニコラスバートンの発明品、大砲だ。火と風の魔法で爆発を起こし、土の魔法を使って作り出した弾を飛ばす兵器だ」

「それもあるが、あの火縄銃だかマスケット銃だか、意味が分からないんだが」


なんなんだ、もしかして私と同じ異世界から転生した人間が作ったってことなのか?

いや、錬金術って科学でもあるし火薬を用いた投石器みたいな発想があれば行きつくのかもしれない。

だが、アレが魔法を貫通するとかだとヤバいんだが……


「因みに、アレって全部魔法を貫通したりする?」

「どうだろうね。魔法だから危険で調べられないんだ。ただ、大量の矢が反魔力物質ってことは既に異世界人でも拉致しまくってるかもね」

「アレの一部だけと言う可能性は?」


ルミーナの意見に対して、ローグは推測交じりに言葉を紡ぐ。

そうか、全部が全部魔法貫通できる仕様じゃないのか。


「かもしれない、けどそれでもどれかなんて試すまで分からない。彼らは布陣を築いて侵攻する準備はあるが一向に行動をしていない。先遣隊程度で、あとは待っている。元々、君ではなく第二王子の派閥を待っているのかもね」

「あぁ、そうですね。もしかしたら遠くから攻撃出来る手段があるかもなのでセレス様は出ないほうがいいかもですね。第二王子の派閥と争うなら要人暗殺も計画してそうだし」

「そういえば、昔見せてもらったけど銃の中には拡大の魔法が込められた狙撃用もあったな。アレを使われたら魔法と装備で守っても、鎧とか貫通しちゃうだろうね。意外と物理的な攻撃力も備えているから、指揮官は大変だ」


厄介な状況だった。

つまり、あれは囮かも知れないわけである。囮で軍隊を使うとか、金と人材に溢れてるな。

しかし、困った……私は死なないけど弱体化はするだろう。

死んではいないが活動できず、神共がチャンスと襲ってくるかも。

そもそも、反魔力物質ってどう言う原理なんだよ。


「どうします?動けない状況ですけど」

「物資を壊滅的にするって手もあるけど、攻めてきたら抑えきれるかな」

「取り合えず、ダメ元で攻撃してみよう」


人間の血液からどのくらい反魔力物質が取れるか知らないけど、全員の鎧に付いているってことはないだろう。なので、全体攻撃してみる。

奴等の周辺の酸素を掻き集めて様子見しよう。

私は壁よりちょっと上に顔を出して、両手を向けて魔法を行使する。


「集まれ、集まれ、どんどん集まれ」

「彼女はどうして手を向けてブツブツ言ってるんだろう」

「ちょっと、恥ずかしいですよね。アレ……」


う、うるさい!

見ろ、酸欠でぶっ倒れる奴らがいるぞ!何故か酸素が集まった場所も倒れている奴がいるけど、効果はあったぞ。

どうやら、前列の重歩兵は変化がないようだけどパニックになっているのは確かだ。


「あぁ、なんか魔法を行使していたのか」

「なんだか地味ですねぇ」

「地味って言うな!」




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