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真相を聞いて魔女は全てを否定する

古臭い神殿を抜けると、そこは山の中腹であった。

もっと騎士等がいるかと思ったら、閑散としていて誰もいない。

なるほど、登山して参拝するような形式の場所ってことか。

でもって、別同部隊みたいな奴らなのだろうか……教会内でも争っている訳だ。


取り合えず、領地へと移動しないといけない。

座標は頭の中に入っているので、転移で行けるだろう。


「転移、私の領地」


世界がノイズのように乱れていく。

そして、組み変わるように少しずつ変化し、私の一室へと変わった。


「セレス様?」

「えぇ、セレスティーナ=オーウェンはここにいるわ」

「映像記録?」


景色が一変して、最初に視界に映ったのはメイド服であった。

そう、目の前にルミーナが立っていたのだ。

ルミーナは信じられない物を見るように私の頬をペタペタ触って確認してくる。

うむ、どうやらそれほど時間は経過していないようである。


「私が死んでから、どのくらい経った」

「三日です。あの、本当にセレス様?」


三日、もっと時間が掛かった気もすればそれぐらいの気もする。

時間間隔が曖昧な為に確信は持てないが、浦島効果みたいに歳取ったりしなくてよかった。


「そうよ、なんだったらおっぱいでも揉む?」

「頭可笑しい、コイツは本人に違いねぇ……」

「ちょっと!頭可笑しいって評価、可笑しくない!?」


そのことについて、小一時間ばかり話し合おうじゃないか。

断じて私は頭が可笑しくなんかないんだからな。

って、そんなことをしている場合じゃなかったと私はルミーナに質問する事にした。


「状況はどうなっているのかしら?」

「あぁ、はい。現在、第一王子と第二王子が侵攻してきています」

「本当にどういう状況なのよ、それ」


首を傾げ、私は思考する。

そもそも、第二王子と敵対する理由はあったとしてもそれは先程のことである。

つまり、アレは関係ないと思われる。

そして、三日ですぐに侵攻が起きるって事は予定されていた。

第一王子とローグは繋がっている訳だ、でもって第二王子とは関係ない。

あの時点では敵対していない訳だから、第二王子は何らかの理由で侵攻している。

いや、誘導されてそうだな。第一王子って頭いいっぽいしな。


「う~ん、誘導されてる理由がありそうだけどな」

「ここは普通の直轄地よりも物資に優れています。前線拠点として使う気ではないでしょうか?」

「沢山の犠牲を払って?利益がコストに見合わないが、いや宗教家ってのは独自の論理で生きているものか?」


いや、もう面倒だ直接聞き出そう。


「国外にいるわけがない、だったら見つかるだろう」

「セレス様、何を――」


ルミーナの声は届かなかった。

何故なら、途中で風に煽られ口を開けなくなっていたからだ。

私を中心に圧力が発生して、部屋の家具を壁へと吹き飛ばす。

魔力の発露が圧力を、空気の壁を押し上げ突風を発生させていた。

薄く広く延びていく魔力、かつて領地だけの範囲だったそれは多くの魂と畏怖により神となった事で一瞬だけであれば国土を飲み込むほどである。

今までが魔力だけだとしたら、信仰値が加算されていると思えばいいだろう。

それなりの信仰が冥界ではあるみたいだから、いやまぁ神様と敵対してたら知名度は上がりそうだよね。

維持は出来なくても、一瞬だけ広げるぐらいなら全然出来る。


「あらあら、やっぱり生きているじゃないの。にしても、随分な状況じゃない」

「あぁ、御早い帰還で」


私の言葉に声が返って来る。

それは国中に広がった、奴の声。

私を殺した、ローグ=オーウェンの声である。

声は部屋に反響しながら収束し、一点から聞こえるようになる。

そして、気付けばそこにいた。


「貴様ッ!」

「無駄よ、そうでしょ?」


ルミーナが反射的に殴りかかるが、部屋に現れたローグを通過する。

そう、彼は実態しない存在なのである。

ルミーナは床に転がり、驚きの余り固まる。しかし、実態があったら呼び出した私の行動が無駄になるじゃないか。


「もう、大人しくする」

「セレス様!か、身体が……」

「魔法で止めたのよ、それでどういうことか聞きましょうか」


まぁ、大体予想はしているのだけど溜息混じりに問うた。

その様子に困ったようにローグが頬を掻きながら応える。


「それはこの状態?それとも、今の状況?あとは、殺した理由?」

「全部よ、その状態については予想出来ているわよ」

「うん、まずは今の状況。全部、第一王子の作戦。殺した理由は、君を生存させるため。今の状態は魔法だ」


あぁ、やはりと私は納得する。

何を言っているのかと思われるだろうが、ローグは魔法なのだ。

そう、ローグ自身が魔法なのである。

コイツ、自分の身体を現象として組み変えたみたいで空気中の魔力を使って魔法そのものに成り下がった。

故に、物理干渉はできず魔力干渉のみ受け付ける存在になったのだ。


「さっき、アンタが国中にいたからびっくりしたわ。それも砂粒みたいな小ささで沢山よ」

「普通頭が破裂するんだけどね、全部把握すると情報過多で」

「いいから話を進めなさいよ」

「まぁ、原子の中に含まれる魔力素の研究をしていたから、自分を情報化して原子で再構成すれば不老不死にでもなれるかなって思ったんだよ。まぁ原子の再構成が不完全で記録できたのは魔力素だけの欠陥理論だったけどね。無理だったんだけど第一王子のスタークが君とか僕を殺す計画を立てたから、仕方なくね」


自分が死ぬから欠陥理論を試して、やっぱり肉体は再生できずに情報の塊である魔法になった訳である。

ようするに原子に含まれる魔力の塊、そりゃ原子レベルで散らばってたら国土の至る所にいる訳だ。

しかし、解せないな。なんでそれが私を殺すことに繋がるのかだ。


「別に殺さなくてもいいじゃない」

「だってそのままなら君は死んでた。かの錬金術師ニコラスバートンが発見した反魔力物質のせいで魔法を無効化されてね。そもそも、その物質って勇者の血液から採取されたらしいから君のせいなんだけど自覚ないでしょ?」

「えっ、始めて聞いたんだけど」


ローグが言うには、私が防げなかったあの矢などには、その反魔力物質が含まれていたらしい。

血液内でないと存在できないそれを、その錬金術師は安定化させて存在できるようにしたそうだ。


「まぁ、これで君は信仰がなくならない限り死に掛けても死ななくなった。だって、神様だからね。忘れられ魔力が尽きた時が存在の死だ」

「アンタの目的は私が神になるまでだったのね」

「信仰と魔力、その条件に気付けるか賭けだったけどね。ダメなら心中するつもりだったよ。じゃ、次はそれぞれの思惑についてだ」


ローグが空中に胡坐を掻いた状態で浮きながら、派閥ごとの思惑を解説し始めた。


「スターク第一王子、彼は王政の安定と軍拡を願っている。ニコラスバートンはその過程、魔法のない世界を目的として協力し、宮廷魔法使いは自身の保身の為に協力している。彼らは君の召喚魔法で異世界人を拉致してバラバラにし、血液から反魔力物質を量産。そして、諸外国を併合しようと計画している。ニコラスバートンによって武力を手にし、魔法の使えない魔法使いを虐殺。諸外国の併合は簡単なことだろう」


それは現代兵器で民間人を虐殺する、それぐらい簡単なことだろう。

何故なら、全ての国の国防は兵士と魔法使いである。兵士のみだとしたら、兵器の強さが勝敗を決める。


「ヴァン第ニ王子、彼は傀儡政権を作ろうとしている。教会は主導であり、この国を資金源とする為に動いている。彼は現状維持を求め、人間の変わりに別種族の奴隷を労働力として奴隷解放を願っている。人の人による人ための国を作るつもりだ。そして、教会は魔法消失による権威の失墜も防ごうとしている」


彼らは魔法の存在する社会を守ろうとしている。何故なら、それは彼らの奇跡の否定に繋がるからだ。

故に、対抗馬として第二王子を利用し利用されている。


「最後の第三王子、彼は民衆の為の国を作ろうとしている。教会も貴族も王族すら破滅させ、民草の運営する国家を形成しようとしている。合議制による民主導の社会、責任を王ではなく民が担う社会だ。全ての種族を平等に、真の平等として奴隷を廃止し、難民すら受け入れるつもりらしい。これは、国民が敵だ。誰もが開放を謳って武器を持っている。知ってるかい、解放軍だって?字も書けない奴らが国を運営しようとしているんだ」


それは民主主義の到来であり、絶対王政の消失を意味する。

しかし、国力は低下し治安は悪化する未来が約束されており、今より良くなると協力した者達に裏切られる気がする。

民主主義の土台が形成されていないのに、革命をしようとしているのだ。


「どれも私にとって都合が悪い」

「じゃあ、どうするんだい?」


知っている癖に、期待の篭った眼差しで見ながらローグが問いかける。

自分が変わる気がなく、生き辛い世界で貴方はどうするべきでしょうか。

答えは変わらないで世界を変えるのである。


「私が、この国の神となる!そして、幼女の幼女による幼女の為の独裁政権を作るのだ!フーハハハハ!」

「あぁ、まったく君は最高だな!」

「さぁ革命の狼煙は上がった!立ち上がれ幼女よ、この私と共に!今こそ私の未来のために!」

「本当に、幼女は最高だぜ!」

「く、狂ってやがる……この二人、頭が可笑しい……」

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