表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/73

領地を魔女は隔離する

ローグの言葉に私は思わず聞き返した。

一瞬、流されそうになったが思いがけない言葉が聞こえたからだ。


「いや、そりゃそうだよ。だって、何かが起きるにしろ最終的な政権を担う方に味方しないと後々不利だからね。所謂、日和見と支持者のどっちを優遇するかって話になるから」

「じゃあ、やっぱり一番有力な第一王子に味方するって方が良いんじゃ」

「だから、ダメだよ。それに、一応だけど君のお爺様も動いているから大丈夫だと思うよ。上手い具合に生き残れるように動いているからね」


それはどんな風にという思いが顔に出ていたのか、ローグは苦笑しながら説明してくれた。

まず、第一王子のところには我が家の唯一の良心である長男アルトリウスが派閥に組み込まれている。

次に次男へルマンが第二王子のところに組み込まれており、最後に第三王子にカーマインが派閥入りするとのことだ。

本人達は自分の意思で動いたつもりになっているが、お爺様が裏で手を引いているそうだ。

使った手は金と話し合いだけとのこと、魔法を使わずに人を操るって政治の世界って凄いな。


「どこが最終的に政権を担っても悪いようにはならない。良い結果にはならないだろうけど、連座は免れる。ただ、個人は処理される。だからね、セレスがどうしようとそれは派閥と運命を共にするということだよ」

「あっ、なるほど」


つまり、プラマイゼロに身内を差し出してする計画だから私は動くなと言うことなのか。

お爺様の中じゃ、私は犠牲にしたくないと把握した。

しかし、可愛いショタの癖に単純だけど、えげつねぇな……


「まぁ、私ってば天才だからね」

「セレスって時々、アホっぽいよね。っていうか、アホだよね」

「なにそれ、アホじゃないし!事実だし!」


宮廷最強の魔法使いとは私のことである。

と、思ったけどこの場でいい様にされてる。

嘘、私の中身アホすぎ?


「まぁ、あまり驕らないことだね。セレスだって不死身じゃないんだ、魔法だって万能じゃないんだからね」

「何言ってんの、奇跡も魔法もあるんだよ」

「あぁ、うん、そうだね」


おい、なんだその微笑ましい表情。

やめろし、髪が乱れるから頭撫でるなし!


「さて、そろそろお暇しよう。まだ、あと二人特記戦力が残っているからね」

「特記戦力、なんという中二な魅惑の響き」

「笑い事じゃない奴らなんだけどな」

「危ないの?」


葬式の作法とか知らないんだが、あと手続きとか面倒だから死なれると未亡人と言うエロ属性が付属されるだけなんだけど。

ローグは目を細め、私の髪を掬いながらその毛先に軽い口付けをする。

そうして、私の頬に手を当ててキスして来そうな雰囲気だったのでその手を叩き落としてやった。


「いてて、まぁ心配されたってことは一歩前進してるってことかな?」

「別に心配してないし、早く出てけよお前。もっと、強力に結界を作るから」

「まぁ、また来るさ」


そう言って、ローグは結界の外へと歩いて去っていた。




さて、私の魔法を解除して入り込んでくるとはアレで学生の筈なのにそれほど脆弱なセキュリティーだったのだろうか。

取り合えず、内乱に備えて要塞化を進めないといけない。


魔法使いにとって、土地とは魔力の源泉である。

地中には膨大な魔力の流れが通っており、まぁそれが近い場所などはいい土地である。

私の解釈としては、竜脈とかそういう概念に近いと思われる。

まぁ、何でかは知らないが星が生きてるとか地殻変動とかそういう奴が原因なんじゃないかな。

とにかくそういう場所を私は便宜上、霊地と読んでいる。

これ、前世の知識ね。

でもって竜脈は太さに違いはあれど何処にでもあるので、一度に手に入る量に限界はあっても無尽蔵。

なので、自前で用意しなくていい。

自分の魔力を消費する必要がないので継続的な結界などの魔法維持に使うのが主な用途である。


そして、この世界では領域化という物がある。

自分の魔力を使って馴染ませることで、魔法の発生速度、効果、威力、頑丈さ等を上げることが出来る。

でもって、その度合いを私の中では領地、工房、神殿、要塞に分類している。

今は領地程度の最低レベルなので今回は要塞レベルに引き上げようと思う。

恐らくだが、世界の修正力に対して抵抗する力を強めているのだと思う。

簡単に言えば、その中でなら普通より強い状態になれるということだ。

魔法使いは拠点でガン待ち戦術が最適、自分から突っ込む脳筋魔法使いは認めない。


「死体をここに」

「セレス様が一匹、セレス様が二匹、セレス様が三匹」

「ルミーナ、私のクローン死体で遊ぶの禁止」


本来なら自分の血を使って触媒とすることで強化するのだが急いでるのでクローンで代用。

私の血によって出来たクローンなので量も質も問題ない。

適当に穴掘って、そこに転移で呼び寄せるだけ。

ぐちゃぐちゃにすると、分解されやすいぜ。


「桜の木ならぬ、畑の下には死体が埋まっている状態だな」

「大丈夫ですか、変な病気とか」

「だったら、魔法で治せばいいだろう」


何かが起きたら魔法で解決である。

さて、魔法での攻撃は準備できたので物理防御である。

壁だ、壁を作るのだ。

領地同士の境界に外的に対する防壁を築きあげるのだ。

軍隊が攻めてきても物理的に防ぐのである。


「岩よ、鉱物よ、大地に生えよ。力強く形を作れ」


多少の地割れと共に結晶となった色々な鉱石が突き出てくる。

地中の成分を適当に集めたら、宝石なんて簡単に発生するのである。

宝石なので魔力を溜め込んでくれるから表面に障壁を展開するように術式を刻んでおく。

さて、そんな様々な宝石は自壊と生成を繰り返して、いつしか垂直に聳え立つ城壁のようになる。

繋ぎ目などはない、ツルツル滑って上ることは出来ない。

えっ、入り口?入店拒否です、どこにもないです。

たとえ攻城兵器を持ってこようとも壊す扉はありません。


「開け、開け、開け、冥府と煉獄の門。彷徨う魂よ、憎しみに囚われし魂よ、我が下僕となりて敵を食め」


アマーリアに習った召喚魔法によって門が地面から浮かび上がってくる。

半透明で、物質界には存在しない概念上の門。

内臓と骨と脈動する血管で構成された門、そこから寒気を孕んだ赤い霧が流れ出る。

その霧の中に人の顔が浮かび上がっては消えていく。

死者の世界の入り口の限定召喚、中からは死霊が絶え間なく出てくる。

因みに好物は無垢な魂であるが、出た瞬間契約に縛られて干渉できない。

見守るだけ、ノータッチである。まぁ、私の設定した身内以外には敵である。

門を壊さない限り出てくる無限エネミーである。

雑魚も数で囲めば超強い、壁から出てきて攻撃されることだろう。

物理無効、当てたければ特別な装備が呪われた状態になって挑むしかない。

まぁ、この世界じゃ霊体には呪われていても攻撃できないけどな。


要塞化によるバフ、宝石の城壁による物理防御、結界による魔法防御、猟犬代わりの悪霊数百体。

セレスティーナ=アークライトの魔法要塞をお客人にはたっぷり堪能してもらおう。

まぁ、爆破されそうな気もしないでもないけど爆薬はそんなに発展していないので大丈夫だろう。


「戦いは数だよ兄貴」

「セレス様、前に手に入れたドラゴンの牙もどうですか」

「よし、竜牙兵も作ろう。魔女と言ったら竜牙兵だ」


私を倒すまで、土地の魔力で復活する不死の軍団の誕生である。

いつのまにか、領地がダンジョンみたいになっているけど仕方ないと思う。

ニートの住む場所って、ダンジョンって相場が決まってるからね。

最初の死者も地下で内職しながらニートしていたし、テンプレである。


「魔王より魔王らしいかもしれないですね、っていうか住みたくねぇ……」

「何言ってんだよ、ビジュアル的にロックでカッコいいだろ!」

「っていうか、境界付近だけ夜みたいに暗いんですけど、明らかに屋敷の方が朝なのに」

「仕方ないさ、朝だと白いから死霊が見えないし仕様だ、ロックだろ」

「なんでもかんでも、ロックって言えば言い訳ではねぇです」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ