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帰宅して魔女は驚かされる

前回のあらすじ、魔王を討伐する旅に出ることになった私は勇者と共に外の世界に……


「ハッ……」


蜂蜜のように透き通る金髪を乱しながら、涎を垂らしながら半開きの目を擦る女がいた。

そう、私である。

朝、私は飛び起きるようにベッドの上で目を覚ました。

同時に、今までの頭に響いていたナレーションが夢だと言うことに気付いた。

ですよね、外に出るとかありえない。


「どうした、セレス様」

「随分と久しぶりな気がするわルミーナ」

「随分と久しぶりに仕事してますので」


今まで何していたかというと自堕落な生活をしていたからな。

私も部屋に籠もって適当な生活していたから、ルミーナが仕事をしないのも仕方ない。

いや、仕方なくないだろ。何で働いてないんだよ、主人が自堕落なときこそ働けよ。


「まぁいいわ、ちょっと嫌な夢を見てね」

「ほほぉ」

「勇者と外に出る夢を見たわ」

「おぉ、勇者パーティーに組み込まれましたか」

「夢だけどね」

「そうですか定番ですね。そういえば新聞なる珍しいものが発行されてましたよ」


そう言って、アイロンの掛けられた紙をルミーナが持ってくる。

紙である、植物から出来る紙、文化レベルが違うなスゲー。

材質はなんかゴワゴワしていて発展途上な感じがする。

文字はバラバラなところを見ると手書き、活版印刷まで到達してないのか。


「あれ、ご存知でした?」

「存在は知っていた。見るのは始めて、あとアイロン掛けるんだ」

「インクが着かない様に必要らしいです」


少し魔力を感じることから、これも魔法を使って手書きしているのだろう。

羽ペンでも自動執筆させてるとか、インクを操作してるとかだろうか。

魔法を毛嫌いしているから、魔法全般ではなく必要なことだけ研究しまくっているのか。

これは聖典とか本を作ることが必要だったから発展したって感じか。

でもって、魔法じゃなくて奇跡だよと自分達に都合の良い物をカテゴライズしている訳だ。


「でも勇者ですか、凄い魔力でしたね二人とも」

「ルミーナは感じたのか、でも安藤の方は失敗だ」

「失敗?」


首を傾げるルミーナ、背中ではハテナマークを作る芸の細かさである。

まぁ、失敗と言うのは人選のせいもある。


「片方の、なんだっけな」

「あぁ、あの騙されやすいほうですか?」

「そう、アマーリアのお気に入り。アレは成功してるんだけどね。問題の安藤は常識に縛られてると言うか普通の反応をしている訳で多分、魔法は使えない。だから失敗」

「あぁ、だから勇者扱いされてないんですかね?」


そう安藤の方は少しだけ単純に物事を考えていないせいで魔法が出来ない。

ただ、これは当たり前のことなのである。

事象や認識の否定は魔法使いの初歩の初歩だが、思い込むことほど難しいことは無い。

人は飛べない、それは常識で共通認識。

魔法使いは人を飛べる、そう思うところから始まると考えると分かりやすいだろう。


安藤は、貴方は魔法が使えますよと言われて信じていないタイプ。

もう片方は、アマーリアの言葉を信用して魔法が使えると本気で思ったタイプ。

後者の方は、明らかに人としておかしいと思うのだが騙されて使えるようになったタイプだ。

実際、安藤も異世界に召喚された時点で魔法の存在を信じることは出来ていると思うんだがそれが誰でも出来ると言う話には同意していなさそうであった。

まぁ、前世の私がいた世界には魔法なんて無かったから当たり前である。

アイツは異世界の常識、魔法なんて使えないという考えを捨て切れていないのが原因だ。


「恐らく記憶を初期化するとか、洗脳するとか必要だけど時間が掛かったり人格崩壊とかの問題がある」

「でも勇者を量産すれば簡単に魔王討伐できるのでは?」

「魔王を討伐した後の処理に困るじゃない」


魔法使いがミサイル扱いなら勇者は核兵器ぐらいの認識が妥当だろう。

戦後の処理が大変である。なんせ、自国にすら矛先を向けてくるかも知れないからだ。

洗脳なんてしても、利用されやすくなるリスクを考えると洗脳しない方がいいしね。


「まぁ、もう私には関係ないし私には勝てないけどね」


例え魔力がたくさんあろうとも、15年以上も鍛えてきた私の魔力には劣る。

それに、魔力だけが戦略的強さではないのだよ。


「普通、勇者のパーティーといえば魔法使いが同行しますけど、行かないんですか?」

「物語じゃあるまいし、勇者だって死ぬときは死ぬ。軟弱な魔法使いが一緒に行けるわけないし」


ゴブリンの一撃で溶ける自信がある。

軽快ローリングで固定砲台出来るのは私自身の機動力が皆無なので無理である。

よく、魔法で自分を強化して戦うやつがいるけどそれは魔法使いではなく魔法戦士。

私は純魔なのである。


「それより、紙よ。これ、もっと発展させられる。それに知識は異界から取り寄せられるわ」

「おぉ、帰るのですか」

「これからの時代はスローライフよ、働いたら負け!」


余った予算は報酬として貰っていこう。

なに、この時代移動するのは大変だ。

わざわざ取り立てに来れないだろ。

後、勇者が生き残ってもこの国は滅ぶだろうしね。


「どうせ滅ぶなら孤児とか拉致ってもいいよね」

「また幼女を集めて」

「思えばお前を拾ったのも幼女の頃だった」


いつの間にか大人になってしまって、まぁ少女でもストライクゾーンだけどね。

その後、適当に物色して連れて帰ることにした。

行きと違って帰りは知ってる場所なので転移で一瞬である。

そうして、野良猫みたいな孤児を土産に私は帰って来た。


幼女達が野を駆け巡り、黒曜石の屋敷が聳え立つ。

庭には畑と花壇があり、薬草や野菜が花を咲かせている。

そして、私のお気に入りの大きな木の木陰を置かれたテーブルにはキラキラするようなイケメンが幼女に囲まれながらティータイムを楽しんでいた。


「お帰り~」

「ただいま」

「今回は海外の方に行ってたんだってね」

「そうそう……って、えっ?」


自然に会話していた事に私は驚く。

あれ、何でコイツいるの?


『警告、魔法攻撃を受けています。解除します』


声と同時に私は気付く、コイツ違和感を消すように軽く精神系の魔法掛けてきやがった。

霧が晴れるようにいて当たり前という認識がいるのはおかしいという認識に戻る。

魔法の解除に気付いたのか、苦笑いするその男は……


「何故貴様がここにいる、ローグ!」

「決まってるじゃないか、旦那だからさ!」


しばらく会っていなかった旦那様だった。

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