勇者を魔女は送り出す
悪魔が言うので私は莫大な魂の二つ分を、二人に分け与えた。
例えるなら、光のソウルと闇のソウルみたいな名前の物を与えている感じだ。
これにより、常人では信じられないパワーや魔力を誇っている。
知らない間に改造したので、そう奴らはまるで仮○ライダーのような存在だ。
片方の名前は室伏優斗、もう片方の名前は安藤竜という日本人だった。
彼らは平成生まれで自分の前世より後からの時代の人間らしい。
アマーリアは甲斐甲斐しく世話をして世間話に興じているが、私としてはよくそんな風に情を抱いた相手を戦場に送り出せるなと言った感じだ。
「なぁ、アンタ」
「何、アンドリュー」
「アンドリュー!?いや、外人には発音が難しいのか」
わざとだ、その前に言葉が通じていることに驚いて欲しいのだがな。
私達が施した術式によって、呪いが二つ掛かっているはずである。
一つは言語の呪い、もう一つは肉体強化の呪い、最後はまぁ呪いではないが魂のコーティングの弊害による莫大な魔力だ。
「俺達はどうしたら帰れるんだ。アンタ、呼び出したんだろ?だったら、元の場所に戻してくれよ」
「敬語、敬語使いなさい。身分を弁えなさいよ、平民が」
「何だよそれ、御高く止まってよ」
「私は善意で言ってるの、ここは異世界よ。文化が違う、貴族にそんな口を利いてみなさい。殺されても文句は言えないわ」
まぁ、勇者の身分があれば問題ないけどな。
ただ、この国は闇とかそういう邪悪っぽい単語は毛嫌いしているので迫害される可能性があると思うけどね。
まぁ、後のことは知らない。
「マジかよ」
「勇者なら大丈夫だよ、勇者であったなら」
「含みがある言い方だな……」
そりゃそうだ、視線を見れば周りの人間が大体嫌がってるなってのは分かるからだ。
今に何かしでかすと思われる、なので関わりたくない。
そんな私の気持ちと裏腹に安藤はグイグイ近づいてくる。
情報を集めて自分で考えようとしている風に見えていて、なんだか慣れているように見える。
あぁ、コイツ異世界召喚の妄想しまくった口だな。
もう片方の室伏とかいう男は流されるままにアマーリアの説明を受け入れている。
疑問を抱くどころかそうなのかと信じている限り、現在進行形で悪い宗教に騙されているな。
「って、最初の質問に答えてくれよ。俺を元の場所に戻してくれ」
「無理」
「何でだよ」
はぁ、と私は軽くため息を付けてお互いに顔を見合わせながら楽しそうに会話しているアマーリアに席を外すと言い、召喚した場所に戻った。
安藤は最初、愚痴を言っていたがガン無視していたら途中で諦めた。
部屋に辿り着くと、私は魔法陣を触りながら解説を始める。
始めようと思ったのだが、おい視線がなんでケツに集中している。
「何見てるの」
「み、見てねぇよ!何も、見てないし」
「知らないみたいだけど、意外と気付くからね」
二人しかいない空間だ、余計に分かるわ。
えっちぃのは良くないと思います。
「ごめん」
「まぁいいわ、説明するわよ。まず、ここの空白部分だけど」
「…………」
座標指定、時間指定、対象指定、部分的な場所の説明をしていく。
対象指定の特に難しさ、イメージを読み取って複数の要素に定義することで自由度を得た素晴らしさを懇切丁寧に説明してやる。
「つまり、人によってイケメンのイメージが違っていたり、週刊誌のイメージが違っていたりするわけだがこの部分は読み取ったイメージを要素ごとに分けて近似値を出すことで最適解を」
「数学みたいなことを言うのやめてくれるか、つまりはどういうことなんだ」
「つまりはイメージに近い物を落とすという表現が近い」
「あぁ、落ちる系か」
落ちる系というのが何なのかは知らないが、魔力を節約する上で自然の法則に近づけることが最も楽だったために落ちるという表現が一番近い。
多い場所から少ない場所へ、高いところから低いところへ、既存の法則に則って召喚することで楽々出来るというわけだ。
つまり、送り返すとなると持ち上げるような感じで法則に従うので召喚より労力、要するにたくさん魔力が必要になってくるのだ。
「ようは、上位世界から下位世界に移動してきたって事だろ」
「じゃあ、それで」
本人がそう思っているならそうなんだと思う、訂正するのとか面倒くさい。
まぁ、一つ言えることは運営に規制されないように書いてる小説の世界と現実のファンタジーには差異があるとだけいっておく。
近親婚とか異種婚とか、エログロから暴力、奴隷制度とか色々とね。
犯罪者だけ奴隷、奴隷の権利は守られている、奴隷のほうがいい生活が出来るなんてのは小説の世界の話である。
普通に犯罪者だろうが騙されようが拉致されようが、奴隷は物として同じように扱われて非人道的に使われる。
大丈夫かな、ゲームや小説の世界だと思って行動しないだろうかコイツ。
「ハァ、面倒見きれないわ。私から話を通しておくからさっさと冒険でもなんでもしてきなさいよ」
私としては世界の命運とかどうでもいい、アマーリオの作ったイメージに近い物を異世界から召喚する魔法陣という目的の物が手に入ったからだ。
これで、ジャガイモとか品種改良された小麦とか輸入して食生活を改善、そして娯楽を充実させるのだ。
で、翌日のことである。
まぁ、何かされるだろうと思ったら案の定、勇者は一人ということになっているらしい。
勇者とその他だって、当然予算は下りません。
可愛そうに、恵んでやろう。
「で、そういうわけで無一文な貴様に私が自費で恵んでやるのだ、慈悲だけに」
「うまくないぞ」
「……うるさいわよ」
そんなことより、私の買ってやった武器を褒めて欲しい。
古きよき時代の伝統を引き継いで神聖武器を手に入れたのだ。
「で、これか」
「そう、ヒノキの棒。ヒノキって意外と高いのね」
「そこにお金使う!?もっと剣とか、こうあるだろ!」
「剣は手入れも必要だし、ゲームと違って一度斬ったらボロボロになる。それに太刀筋がブレると切れないと聞くし。その点、鈍器だから手入れは不要だし殴るだけよ。それも普通の武器じゃなくて、属性武器よ。光の属性はこの国じゃ、特に盛んに研究されているし最先端な武器よ」
「分かったんだが、別に鉄の棒とかでもよかったんじゃ」
「様式美よ」
「やっぱり趣味じゃねぇーか!」
木に属性を付与することがどれだけ大変だったかも知らないくせに、何をいう。
それに、植物だから魔法で成長するようになっているんだぞ。
欠けた部分は再生し、モンスターの血を吸って魔力を補充、そしてどんどん固く属性を強くする仕様だ。
「まぁ、勇者の従者蛮族Aとして頑張ればいいと思うわ」
「セレスさん!?今、蛮族って言いました」
「安藤」
「お、おう」
私が顔を近づけると、安藤がビビッたのか一歩後退って挙動不審になる。
しかし、これだけは言っておかないといけない。
「セレスティーナよ、それが私の名前」
「えっ、何この展開……」
「だから、呼び捨てにしないで馴れ馴れしい。もぐわよ」
「で、ですよね~フラグとか期待した俺が馬鹿だった」
何言ってんだコイツ、私ってば戸籍上では人妻ですし、そもそも女の子以外好きじゃないんですけど。
まぁ、ともあれ勇者の戦いはこれからだ。




