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語られて魔女は勇者を推察する

あ、アカン奴だこれは。

アマーリアを見て、最初に感じたことだ。

直感的に理解した私は、彼女が同類であると認識した。

目から光は失われ、どこか違うところを見ている彼女はまるで陶酔しているかのように異世界について語る。

自分は知っている、自分は確信している、ならばある。

彼女は常識を否定し、自らを肯定し、そして自分だけの世界を語る。


そう、私と同じである。

他人の言葉を疑い、否定し、自身の言葉を信じ、肯定する。

私が魔法に対して自分の理論を信じ、実際に他者と違う方法で魔法を使っているのと同じ。

彼女は自分の認識を信じ、他者と違う方法で異世界を証明しようとしているのだ。


「考えたことはありませんか。天使や悪魔、死者や生者の住む世界について。召喚術は召喚するといいますが、それはどこからでしょうか。魔法で一から作っている。ならば、何故、記憶を持ち、知性を持ち、意識を持っている個体がいるのでしょう。彼らは個体差が育まれる環境、すなわち独自の世界の中で存在しているからです。召喚術とは呼ぶ物ではなく、繋げる物。世界と世界を一時的に重ねる魔法なのです。そして、私達と同じような世界に住む存在がいないと何故言い切れるのでしょうか」

「アマーリア、異世界はあると思うよ」


何故なら私の前世は異世界に住んでいたのだから彼女の言葉は間違っていない。

彼女の言葉を否定することは常識だろうが、この世界には常識では理解できないことなどたくさんある。

魔法など、異世界の知識に当てはめれば非常識なのだから。


「そう、そうなのです!異世界はあるのです!自分達が出来ないからと、存在を否定する愚か者達は何も分かっていない。そんな世界は存在しないと、全ての世界を知っている訳でもないのに言うのです。私達が知らない世界が、未だあるというのにです。存在する全ての世界を調べてからその言葉を発するならまだ分かります。ですが、自分達が認識していない世界を認めず、全てを知った気でいることのほうが可笑しい。天使や悪魔の世界だって、ほんの数世紀前に見つけられた世界ですよ。私達が存在を認知していない世界がきっとあるんです!」

「長いよ、あと近い。顔が近いぞ、チューするぞ」

「わっ、接吻!?や、やめてください!ちょっと、何処を触ってらっしゃるんですか!」


何っておぱーいに決まってるだろ。

うむ、中々の柔らかさだが発展の余地が残っている。

これから修行を続ければEカップくらいはなれるだろう、精進せよ。


「それで、聞いてるんですの?」

「急に語られるとびっくりだよ。最初のところしか聞いて無かったよ」

「まったく。いいですか、私の考えた召喚魔法は既存の召喚魔法を否定するところから始めようと思うんです」


アマーリアの方法は、自分達が知っている世界。

例えば、天使や悪魔、死者や精霊が住んでる天界や暗黒界、冥界や精霊界を既知と規定する。

そして、それ以外の観測したことのない世界を未知と規定する。

未知と規定した世界を虱潰しに接続することで、異世界を探すという方法。


「手応えは感じましたのよ。まぁ、魚の世界ばかりに繋がるんですけど」

「へぇー既にやっていたんだ」

「人語を解する魚です。彼らは自らのことを深きものと言い」

「それ以上はダメだ!」


おい、なんか聞いたことあるぞ。

その繋がった世界って大丈夫かよ。


「で、でも人型ですよ!見るだけで発狂するような精神生命体や不定形の気体のような生命体ではないのですよ」

「おいぃぃぃぃ!絶対ヤバイ奴だろそれ、旧支配者とかそういう奴らだろ、それ!」


なんちゅうもんを呼び出そうとしてるんだ。

勇者呼ぼうと思って邪神を召喚したとか笑えないんだけど。


「ダ、ダメでしたか?」

「ダメだね、もっと計画を練って考えようよ。そう、なんでそういう世界が見つからないかとかさ」

「条件付けが不確かなのと、私が知らないのが原因かなと」


そう言って、二人で原因を考えるところから私達は始めた。




王様に貰った部屋で、私達は沢山の書籍を読み漁った。

主に、神話など古い時代の物だ。

そもそも、勇者伝説と言うのがなんなのか。

そこから調べる必要があった。


勇者伝説、それはまだモンスターが人を支配していた頃の話。

モンスターが人を支配していた時代があったとは驚きだけど、それは置いといて。


人が奉仕種族として生きていた頃、神が勇者を呼んだ。

勇者は万物の言葉を理解し、万物の力を持ち、万物の理を行使して世界を救った。

そして、人とモンスターの世界を分けた後に光となって消えた。


要約すると大体こういうことが書いてある。

アマーリアは何かの比喩表現かと頭を捻っていたが私には分かる。

まず、勇者は異世界言語理解、みたいなチートを持っていた。

これはよくある話で、異世界の言葉を何ヶ国語とか関係なしに使えるチートだ。

次に、万物の力、恐らく種族ごとの力みたいな物だろう。

そこにはモンスターも含まれると思うので、肉体チートって所じゃないだろうか。

最後に万物の理、これは魔法を表している。魔法チートでもあるということだ。

結論、勇者はスリップ系チーターである。


どういうことだか知らないが、この世界に来て奴隷でいることが常識な時代に俺TUEEEEEして魔王をぶっ殺した奴が勇者の正体だと思われる。

つまり、勇者の再現をするならどんな言葉も喋れて怪力無双、魔法の天才でイケメンである。

こういう状態に持っていかないといけない。


「無理だろ、どんな化け物が闊歩する世界の出身だよ」


そもそも世界中の言葉が共通じゃない訳でして、言語が統一されてるとしたらそれこそ古代だよ。

古代なら言葉というより音の世界だからね、威嚇とか甘える声とかそういうシンプルなのしかない。

でもって、怪力無双ってことは常に戦っている世界出身ってことになる。

それに加えて魔法も飛び交っている場所である。

魔法も使える筋肉モリモリの原始人を召喚という名の拉致しろと言うわけだ。

死ぬわ、普通に暴れられて人類があぼーんだわ。


「アマーリア、ダメだ。ヤバイのしか召喚できないよ。条件付けから見直すしかないよ」

「ヒト種を限定して召喚するためのヒトの定義は分かったんですけど。ここの顔が整っているという条件は要りますか?」

「はぁ?勇者はイケメンって決まってるでしょ、でもって幼馴染と王女のどちらと結婚するか悩むんだよ」

「では幼馴染に該当する定義を追加しないといけませんね」


どうすっかな、もう勇者じゃなくて良いかな。

勇者と同じことが出来れば勇者って偽ってもバレないんじゃないかな。

そんな戦闘民族みたいな奴より、凡人にチート与えて誤魔化したほうが早い気がする。

でもって、異世界の当ても私の記憶から何とかなるしな。

私の前世から拉致ってチート与えたら、勇者って事で良いんじゃないかな。


「でも、平和な国で生きてた奴が殺し合いとか出来るか?時代はどこに繋がるんだ。そもそも、場所とか」


時間と場所の設定から始めないといけないのか。

それから、洗脳とチート付与。

召喚すると同時に弄れば問題ないかもしれないな。

愚弟のカーマインの筋肉魔法を刻めば、怪力無双になれるだろう。

後は、私の考えてる方法で魔法を教えればイメージするだけで魔法も使えるようになるはず。

言語の問題だけクリアーすれば解決だな。


「よし、この考えで今度こそだ」

「あっ、いよいよ実験再開ですか。ここ数ヶ月考えっぱなしで暇だったんですよね、魔王が近いってうるさいですし、そろそろ結果出せますかね」

「うん、まぁ前みたいにゲル状の物体を召喚することはないんじゃない?」


相手の思念を読み取れるようにすれば勇者の条件もクリアーできると思う。


「じゃあ、準備次第召喚するぞ」

「はーい」


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