処理して魔女は友達認定される
拝啓お爺様、出迎えご苦労といったら要人警護の人に武器を向けられました。
お母様みたいに貴族風に発言すると良くないって事が分かりました。
で、どういう状況だろうか。
「ふん下賤な色の異端者がノコノコやってくるとわ」
要人警護の兵士達の後ろから現れたのは白いローブを来た偉そうな爺だった。
おや、コイツが私を呼んだ?にしてわ、結構批判的だな。
「お初にお目に掛かる。我が名はセレスティーナ=オーウェン!ヴァイマル王国最強の宮廷魔法使いなり!」
「やはり、魔法使い!異端だ!異端を殺せ!」
「ちょちょちょーい、何でカッコよくポージング決めただけで命狙われるんだよ!」
私の制止の声も聞かずに兵士の方が槍を向けて突撃してくる。
アカン、魔法が間に合わない……と思うじゃん?
「ぐあぁぁぁぁ!」
「あぁぁぁぁぁ!」
「うがぁぁぁぁ!」
私に向かって槍を突き刺した瞬間、物理エネルギーを反射されて腕があらぬ方向に曲がったのだ。
いい仕事しますね、私の魔眼。
『お褒めに頂き光栄でございます』
こいつ、脳内に直接。
まぁ、それは置いといていきなり攻撃とか罠に嵌められた訳だな。
可笑しいと思ったんだよ、試すために呪いのあるページへの誘導とかね。
それなりに呪いの知識がないと発狂するからね、アレ。
「何をしているお前達!」
「状況も理解できていないのかよ」
「えぇい!神よ、神の奇跡よ!」
爺がそう叫ぶと爺を中心に半透明の膜が発生、球体を形成しながら膨張していく。
兵士達がそれに巻き込まれて押し出されていく様子から衝撃波か何かだと思う。
ルミーナが部屋の外に移動して退避しているので体内の悪魔に影響があるのかもしれない。
『解析の結果、光または聖とカテゴライズされる属性が付与されております。自動制御により、無効化しました』
本当に、私の魔眼さん有能すぎる。
私だけは押し出されること無く普通に透過される光の膜。
その様子に、爺は目を大きく広げて驚いている。
「な、何故だ。ありえんぞ!異端でなくても効果はあるはずなのに」
「凄いこと口走ってんなぁ。現実を否定するとか、それでも魔法使いかよ。神秘から目を逸らすとかありえないんですけど」
「ば、化け物!神敵め、寄るな!私に寄るんじゃない!」
ば、化け物……ちょっと泣きそうになるじゃないか。
まったく酷い言葉を使う、こんな奴死ねば良いのに。
「無礼者が」
「うるさい、化け――」
「死ね」
私は指差し、言葉を紡ぐ。
言葉によってイメージは強固となり、魔法を発生させる。
発生した魔法は私の指先から緑の閃光となって爺へと飛んでいった。
「――物がっ!?」
触れた緑の閃光は軽い衝撃を伴って爺を軽く吹き飛ばす。
人形が壁にぶつけられた様に、力なく落ちていく。
それだけ、たったそれだけで命を落としたのだ。
「フフフ、素晴らしいと思わないか諸君!」
「リーブ総大司教?」
「う、うわぁぁぁぁ!」
自然と笑みが浮かび、この洗練された魔法の完成度を自慢してしまう。
しかし、そんなことよりも爺が大事なのか爺が死んだことの方に驚いている。
見てよ、綺麗でしょ緑色の光とか。
「はぁ……」
「セレス様、食べていい?」
「好きにしなさい」
そう言うとルミーナの背中から黒い影が大蛇の頭となって、爺と兵士達を丸呑みした。
そして、誰もいなくなった。
あぁ、全く持って無駄足とか意味分かんないんだけど。
「財宝でも奪って帰る?」
「セレス様、誰か来た」
ルミーナの言葉に従って廊下の方を見る。
すると、廊下の黒い闇の中から同じくらい黒いローブを纏った女が現れた。
黒いローブに包まれた女、その格好は黒いレースのあしらわれたドレスを着ている。
聖女に墨汁でもブチ撒けたら近い格好になると思う。
白ければ聖女に間違えたかもしれないね。
「失礼、ヴァイマルの魔女セレスティーナ様で間違いなくって?」
「相違なくてよ、私がセレスティーナです」
「お待たせしました。アマーリア、貴方様をお呼びした魔女でございます」
綺麗なカーテシーで、軽く挨拶してくる。
ううむ、もしや貴族の出なのかな。
「此方へ、道すがら説明させて頂きます」
アマーリアは移動しながら、今までの経緯を話してくれた。
話を纏めると、隣の国に住んでたアマーリアは自宅以外が滅び、魔王軍と孤軍奮闘していたらしい。
家の前でゴブリン達がバーベキューを始め、焼かれる人肉の匂いにキレたアマーリアはドラゴンを召喚。
しかし、ドラゴンはゴブリンの焼いた肉で懐柔されて寝返り、悲しみに暮れるアマーリア。
仕方ないから隣の国に行ったら、今まで支援も何もしないで傍観していた奴らが大慌てしていた。
大慌てしていた奴らは改宗したら魔法使いでも雇うと戦力を募集。
そして、就職した最初の仕事が勇者召喚伝説の復活。
そんな御伽噺を再現しろとか無茶言うなとネットで仲間を募集。
アマーリアが考えた問題を解いて、まんまとやって来た私、いまここ。
「成る程な~」
「まさか、パソコンの発明者であるセレス様に会えるとは……あっ、ごめんなさい。馴れ馴れしくセレス様と」
「いや、別にいいよアマーリア」
「呼び捨て!?いえ、別に文句はありませんのよ」
「嫌だった?アマリン」
「アマリン!?びっくりですわ、いきなりあだ名を付けられるとは」
何だか面映いですわと照れるアマーリア、何この可愛い生き物。
アマーリアはニヤニヤしながら色々なことを話してくれた。
聖教国インゴールブルじゃ、昔みたいな価値観の古い奴らが多くて絡まれるとか。
子供の時から召喚術しか使えないとか。
友達がいなかったので、初めて友達が出来たとか。
いつの間にか友達認定されてた件、まぁいいか。
「それでですね、あぁ着きました教皇の間です」
「この先に教皇が?」
「魔法使うと文句ばっか言うクズ野郎共のトップとは言え、目の前の脅威に異端認定されてる魔法使いを雇うなど革新的な方ですよ。意外と普通です、キチガイじゃないです」
「へー」
確かに反対は多かっただろうに、殉教でなく異端すら利用しようとする辺り良い根性しているなと私も思う。
魔法で扉を開けると、玉座に座る王様のような人がいた。
周囲には白い服を着た爺達が沢山おり、その中心にいた。
あれが、教皇か。
「無礼者、我らが教皇を前にして」
「黙れ」
「…………!?」
教皇が言葉を発する前に取り巻きの一人が騒ぎ始めたので、人睨みして魔法をぶつけた。
効果がいつまで続くか知らないが、無言になってしまう魔法だ。
「私が教皇である」
「セレスティーナ=オーウェンです」
「オーウェン、なるほど。此度は良くぞ参った、協力感謝する」
「…………」
あれ、終わりですか?
全然喋らないんですけど。
「どうやら、終わりのようです。他に皆様、何もすることは出来なさそうなので退出しましょう」
「待て、アマーリア」
お、おう。
やっぱりまだ話すことがあるじゃないか。
「部屋を用意してある。侍女に聞け」
「了解です、教皇様」
「……うむ」
どうだ、してやったぞと何だか満足気な教皇。
おい、おいおいおい、一国を治める教皇様がそれってどうなの?
とはいえ、私は部屋を借りてアマーリアと勇者伝説の研究をすることになった。
「突然ですけど、セレス様は異世界って存在すると思いますか?」
「はい?」




