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いつの間にか魔女は勝ち残る

三回戦目、ここまで勝ち上ってくると言うことは相当な強者、玄人は油断しない。

相手はオッサンだった。

おい、何人いるんだよ。この職場はオッサンしかいないのかよ。

しかも、何だか鬼気迫るご様子。

ブツブツ、幼女幼女言ってるのでロリコンかもしれない。


「男なら容赦しない」

「死んで、死んでたまるかぁぁぁぁ!」


始まる前から、発狂。

やだ、あの人気持ち悪い。

審判の合図と共に相手は詠唱を開始した。


「血は鳴動し、流血の調べは紅蓮の炎となりて、我が――」

「穴!」

「ああああぁぁぁぁ!?」


馬鹿め、敵の前で詠唱してる暇があれば攻撃せんか。

私がしたことは、たった一つのシンプルな方法。

魔法で足元に穴を空けただけである。

今頃、数メートル下に垂直に落ちて膝から下の骨をバキバキにしていると思う。


「ぐぁぁぁぁ!おのれぇぇぇ!」

「ルミーナ、岩!」

「おい、メイド何をする。や、やめろ!痛い、死ぬ!普通に死ねるから、やめ、やめてください!」

「セレス様、しぶとい」


流石宮廷魔法使い、やるな。

審判が心配そうに穴に顔を覗かせてギブアップするか聞いている。


「う、うるさい!今に見ておれ、ここから這い出て」

「ルミーナ、油!」

「ば、馬鹿じゃねぇの!?お前ら、馬鹿だろ!やめろ、鍋を傾けるな!どっから、出した!」

「ギブ、ギブ?あっ……」

「分かった、負けを認め、ぎゃぁぁぁぁ!?」


アレだけ審判が心配していたのに、流石プライドが高い宮廷魔法使いだ。

最終的に素揚げにされてまで戦い貫くとは、見習わないとな。


「勝者、セレスティーナ=オーウェン」

『うぅ、お、おのれ……殺――』

「あぁ?魂ごと滅するぞ?」

『えへ、いや流石ですね。セレス様、いやぁ強いの何の。あぁ、私どのホムンクルスでも結構です、えぇはい』


どうやら、気に入って貰えたのか対戦相手はすんなり幼女になった。




四回戦目、相手が棄権したので不戦勝。

そして勝ち抜いた結果、決勝戦に進出した。

長く苦しい戦いだった。


「何、お前今までの苦労を噛み締めてんの?苦労してないよね」

「王子、人によっては外に出ることって大変なんですよ」

「はぁ?えっ、うん、はぁ?何言ってんの、アレだけのことして何言ってんの?」


何言ってんの?王子ってば言葉が足らな過ぎる。

もっと伝える力を身につけたほうが良いよ。

そんなんだといつか、王は人の心が分からぬとか言われちゃうよ。




とはいえ、王子は放っておいて次の試合である。

よし来い、幼女にしてやる。

意気揚々と進んだ私は驚くべき光景を目にする。


「馬鹿な、既に幼女だと……」

「フン!」


そこには、やるぞぉ~と可愛らしく奮起する幼女がいた。

桃色のローブに、金髪ヘアー、猫みたいに鋭いく力強い瞳。

ツンデレだ、これツンデレにしようぜと、言いたくなるような容姿だ。

歳は王子くらいだろうか、何歳だろ可愛いな。


「貴方がルドルフ様の教育係ね!ルドルフ様は渡さないんだから!」

「ルドルフ様?」

「セレス様、王子のこと」


ルミーナがそっと耳打ちしてくれて、あぁ王子のことかと思い出す。

それで、王子の知り合いが何のようだろ。

迷った?いや、でも魔法使いみたいだしな。


「ルミーナ、対戦相手アレであってる?」

「コネで宮廷魔法使いになった子です。でも実力はあります」

「あんな小さいのに、それマジ?」


えっ、本当に対戦相手なの?

びっくりしたなぁ、強いんだ。

観客席を見てみれば、なにやら王子が俯いている。

やっぱり知り合いか。


「因みに婚約者です」

「凄いな、小さいのに」

「えぇ、天才です。小さいのに」


王子の婚約者ということは公爵かな、それで魔法が強いのか。

勝気な目とかお嬢様っぽい容姿とか、テンプレみたいな悪役令嬢だな。

おっと、話している間に始まるようだ。


「初め!」

「貴方、さっきから小さい小さい!いつか大きくなるんです!」

「そっかぁ、ごめんねぇ~えへへ」

「まぁ、ヘラヘラ笑って余裕の笑みも今のうちですよ!」


余裕じゃないよ、でも可愛いから自然とこうなっちゃうんだよ。

そういえば、まだ名前を聞いていなかったな。


「それでは、魔法使いセレスがお相手いたしましょう。リトルレディー」

「また、小さいって……リリィ=クロスですわ!お忘れなきよう」

「リリィちゃんっていうの、可愛いねぇ~」

「何ですの、凄い寒気が」


それはいかん。

私が暖めてやれねば、使命感。

さぁ、速く終わらせて一緒にベッドに行こうリリィちゃん。


「行きます!篝火のカード、召喚!」


リリィは懐から、カードを取り出した。

左手には複数のカード、右手には一枚の赤いカード握られている。

まさか、デュエリストかコイツ。

赤いカードは放たれ、それは地面に落ちるまでに燃え尽きる。

そして、その燃えるカードの火から犬くらいの大きさのトカゲが飛び出してきた。


私とその横にいるルミーナがソレを見てすぐさま正体を見破る。

アレは、火の精霊サラマンダー。


「ぴぎゃぁぁぁ!」

「さぁ、行きなさい!」

「ちっちゃいですね、セレス様」


トカゲは鳴き声を上げながら全身を燃やして突っ込んでくる。

火には水か、水を掛ければ倒せそうだ。


「水よ」

「させません!傀儡のカード、召喚!」


私が生じさせた水が空気中に球体となって現れる。

そして、それを放とうとした瞬間に水へとカードが投げられた。

今度は茶色いカード、それが球体に刺さるように回転しながら飛んでくる。

何をする気だと様子を見れば水が弾ける様に形成を邪魔され、そこに大人ほどの大きさの泥人形。

ゴーレムが現れた。


「チッ、ルミーナ」


私は魔法で空を飛び距離を取る、その間ルミーナにゴーレムを押さえ込む命令をした。

ルミーナはゴーレムに向かっていった。

ゴーレムはそれに対応して拳を振り下ろし、ルミーナも拳へと拳を突き出す。

お互いのパンチが拮抗する、その瞬間リリィが再び動き出す。


「守護像のカード、召喚!サラマンダー、喰らいなさい!」

「ほぉ、今度は何かな」


再びカードが飛んでくる。

今度は私ではなく、味方であるゴーレムだ。

ゴーレムに突き刺さったカードはグレー、そのカードが輝きゴーレムに亀裂が走る。

そして、ゴーレムが弾けたと思ったら一回り小さいガーゴイルが内側から現れた。

しかし、現れるや否やガーゴイルは味方のサラマンダーに襲われる。

そのサラマンダーに巻きつかれて炎上したのだ。


「味方に攻撃?」

「いや、私には分かる」


ルミーナが不信に思うのは仕方ない。

だが、前世の記憶が言っている。

デュエリストは時に自分の場のモンスターを破壊して効果を発動するんだと。

その証拠に、炎上したガーゴイルが輝いていく。

一瞬の爆発、目が眩むような光に包まれ、それが顕現する。


『グァァァァァ!』

「嘘、だろ……」


会場に轟く叫び声、ルビーのような鱗、黄金の瞳、周囲を燃やす炎の息吹、私達の目の前にドラゴンが現れた。

まさかのドラゴン登場に、会場は大喜び。

流石の私もビックリした。まさか、大人でも難しいドラゴンを召喚するなんてな。


『グァァァァァ!』

「ルミーナ、ブレスが来るわよ」


息を吸い込むドラゴン、そこへと真正面からルミーナが突っ込む。

ルミーナが跳ぶと同時にドラゴンはブレスを吐いた。

だが、私のメイドは改造済みだ。鉄を溶かすドラゴンのブレスぐらい、どうってことないぜ。


『ガッ!?』

「熱い」

『ギャァァァァァ!?』


炎の中、ルミーナの声が聞こえた。

同時にドラゴンが首を振るう。

勢い良く、口から出るルミーナ。

その腕にはドラゴンのキバが抱きしめられていた。


「やった、ドラゴンの牙だ!」

「素材ゲット」


ドラゴンは口から血を流しフラフラになっている。

チャンスである。


「ギロチンよ、首を刈り取れ!」

「あぁ、逃げて!」


いつの間にあったのか、私の魔法により現れたギロチンの刃が上空から落ちてくる。

一瞬の間にそれは地面へと落ち、ドラゴンが避ける間もなく首を切り落とす。

ふぅ、これで私の勝ちだ。


「今よ!海魔のカード、召喚!血を持って顕現しなさい、クラーケン!」

「馬鹿な、これで終わりではないのか!」


べチャっと、ドラゴンの首から流れる血の中に青いカードが落ちる。

同時にそれは輝きドラゴンの死体が光の粒子となった。

そして、それは再構成されるかのように形を作り、闘技場の半分を埋め尽くす強大なモンスターとして現れる。

粘液まみれの白いからだ、鋭い吸盤を持つ巨大な足、ギョロギョロと周囲を見る眼。

海の怪物、クラーケンだ。


「なんでや、チートやチート!」

「あっ、セレス様ヘルプ」

「ルミーナぁぁぁぁ!?」


ニュルッとルミーナが触手に掴まれて拘束されていた。

やばい、ルミーナがピンチだ。

リリィは勝ち誇ったような顔で此方を見る。


「さぁ、負けを宣言しなさい!さもないと」

「ルミーナが触手プレイでヌチャヌチャにされる!?」

「は、破廉恥な!そんなことはしません!」


おっ、触手プレイを知っているのか。

耳年増だな、お穣ちゃん、ぐへへ。


「セレス様、私に構わず」

「分かった、サンダー!」


ルミーナ、助けようと思ったけどそこまでいうならしょうがない。

手から雷を空に向かって放つ、だがこれは前段階。

本当はこれによって発動する次の魔法だ。


「何を……」

「サンダーではない、サンダーボルトだ」


空に暗雲が立ち込め、雲の合間に落雷が飛び交う。

自然の雷のエネルギーを利用して増幅した雷を落とす魔法。

サンダーボルト、相手は死ぬ。


「喰らえぇぇぇ!」

『ヌォォォォォ!?』


雷は闘技場よりも高いクラーケンに向かって一気に落ちていく。

その大きさはサンダーの数倍、衝撃と轟音が会場を揺らす。

耳がキーンとなって視界が開けなくなるくらい閃光が溢れる。

そして……


「ふぅ、やれやれだぜ」

「ルミーナ!なんだ生きてたのか」

「死ぬかと思った」


こんがり焼けたクラーケンの近くから、ルミーナは無傷で立っていた。

さぁ、まだあるんだろう。掛かって来い、今度は油断しないぞ。


「…………」

「……あれ?」

「綺麗な顔だろ、これ気絶してるんだぜ」


リリィちゃんはきゅ~みたいな音が出そうな感じで気絶していた。

あれ、優勝したのか私?

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