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そして魔女は賢者を理解する

杖なしで魔法が使える賢者になろうと思っても即日なれる物ではない。

何故なら賢者とは天才の中でも一握りしかなれないと言われてるからだ。

というか、実在してるかすら怪しい都市伝説である。

魔法使いの最上位ジョブだけどね。

じゃあどうするか、とにかく考える事から始めてみよう。


「う~ん、これも違うな」


私はお父さんから貰った本を片っ端から読み漁った。

お蔭で部屋の中には読み終えた本が乱雑に散らばっている。

まぁ、後でメイドさんに片付けて貰うからどうでもいいけどね。


「まず、魔法って何だろうか」


ある人は精霊に意志を伝えて起こす現象とか言うし、ある人は四つの属性を組み合わせることで起きる現象とも言う。

共通している事は、魔法が魔力というエネルギーを使って現象を起こしているということだった。

色々な本を読んで、私が結論として出した有力な説は魔力を用いた世界の書き換え説である。

精霊とか四属性とかオドとマナとか、色々あるが唯一否定が少ない説であるこれが有力だろう。

魔力を使ってる間に現象を起こし、魔力がなくなると世界に修正されるのだ。

そう考えるとあることが説明できる。


じゃあ、魔力を消費しても何も起こらない失敗魔法は修正力の方が強いって事じゃないか?

減った魔力は魔法が発動してないのにどこに行ったのか、答えは修正力に打ち消されていたのだ。

つまり、魔法とは現象を起こす魔力が修正力よりも強くないと発動しないのだ。


では杖について考えてみよう。

どの本にも杖なしで魔法は使えないと断言している。

だから記録にある賢者は実在しない架空の人物だとも言っている。

しかしだ、さっきの推測から考えるに杖というのは恐らく必要な魔力を補充してくれる装置なのではないだろうか。

魔法を使う際に必要な消費量が十だとして、普通の魔法使いは魔力が五しかない。

そこに杖から五の魔力を追加しているのだ。

もしくは杖を持つことで必要な消費量が減るとか、だから杖がないと魔力が少ないから使えないのではないだろうか?

じゃあ魔力がたくさんあればきっと杖なしで出来るはずだ。


「魔力か……なるほどね」


どうして古い文献に賢者は載っていて、最近の歴史本に賢者の存在が載っていないか分かった。

恐らく、それは魔力鍛練法の認識が変わったからだ。

魔力を増やすには、筋トレみたいに魔法を使わないといけない。

魔法を使えば使う程、魔力総量は増えるからだ。

じゃあ、ずっと魔力を使っていろよと思うかもしれないがそれは無理である。


何故なら、人間は魔力が少なくなると人体に影響が出てしまうのだ。

具体的に疲労が溜まって最終的にぶっ倒れる。

魔法を初めて使った時にテンションが上がり過ぎて倒れるまで使った事があるが、次の日まで疲労が抜けきらなかったくらい疲れた。

そして、当然倒れるってのは健康に良くない。

命を落とす危険もあると言う事が分かってから、ほどほどに使い切ろうとする事が修行の常識である。


しかしだ、恐らく賢者が記録されている大昔。

みんな、良くある小説の主人公みたいに何度も倒れるような修行をしたのではないだろうか。

魔力を使い切る、倒れる、魔力が増える、いつしかチートになる。

つまりそう言うことなんじゃないだろうか。

最近の人はそこまで頑張らないのだろう、だから魔力総量は低くて杖無しで必要な魔力が足りない状態なんだろうな。


「でも、倒れるまでやる?」


正直、翌日の疲労感がヤバいから気乗りはしない。

常に頭がガンガン痛いし気持ち悪い感じだからな。


「しょうがないわ、杖が無いんだもの」


ちょっとだけ、杖無しで簡単な魔法が使えるようになるまで我慢しよう。

魔法が使えない魔法使いなんて、ただの豚……いや人だからね。


修行開始まで、準備に一週間も要した。

何でかというと、魔力が足りないので死ぬかもという事態を避けるためにポーションが必要だったからだ。

買ってきて貰うのに往復三日とか、どんだけ不便なんだよと思う。


まぁ、ようやく修行である。

火だと危ないので、水を出すイメージで魔法を使う。


「むむむっ……」


身体からぐわっというか、ぬわっといか、何とも形容しにくい感覚が起きる。

何か抜けてくなぁ、という感覚だ。

と同時に眠くなってくる。夜更かしや運動の後のダルい感じだ。

どうやら順調に魔力は抜けていくらしい。しかし、暇だな。

もしかしたら、みんな暇な時間がなくて修行しなくなったのかな。

じゃあ、時間に余裕のあるニートの私って無限の可能性が秘められてるかもしれない。

時間はたくさんあるからな、前世では真面目に生きたんだ。

今世くらい頑張らないでいいよな。


「それにしても暇だわ」


今の私は虚空に手を突き出して唸っているだけだ。

ハンドパワーとかやっている感じだ。

まったく、早く水ぐらい出ろって話である。

そもそも、空気中には酸素と水素が集めようと思ったらたくさんあるんだ。

無から有を作っている訳じゃないんだから、簡単なはずだ。

だって、色々な小説でそういう説明あったもん。

水の近くの方がいいのかな?水がないところじゃ難しそうだもんね。

水のないところでこれほどの水遁を使えるなんて、みたいに驚かれるくらいだしね。


「あっ」


ポチャン、と絨毯に水滴が落ちた。

今まで出来なかった魔法が出来たのだ。

いやいやいや、それはおかしい。

必要魔力が足らない状態なのに魔法が出来たってことは、必要量が減ったって事だ。

いや、そういうことなのか?何を切っ掛けに必要量が減ったんだ?

私は今まで何してた?確か、前世の記憶に思いを馳せていただけだぞ。


「もしかして、イメージなのか?」


イメージか、さっきは水素と酸素の原子がくっついたり屋根の上で水がドバッと溢れるイメージをしたんだが。

もしかしてイメージで魔法って発動しやすくなる?


「水遁!ウォーター!アクア!えっと、水!H2O!」


ボフンっと、手と手の間から先程より一回り大きな水が飛び出した。

私は大きな染みを作るそれを見て、確信した。

現象の理解度に応じて魔法は使いやすくなるのだ。


「ヤバイわ~真理的な物に辿り着いたんじゃね?って、伝説の賢者にいつの間にかなってるじゃん!うわっ、賢者にジョブチェンジしてるじゃん!」

「お嬢様……」

「うえっ!?」


思わず小躍りしていた私をメイドさんが生温かい目で見ていた。

思わず顔を覆ってしまう。

えぇい、私を見るんじゃない!


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