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迷って魔女は恨まれる

という訳で、こうなったのだ。

そう、今までの経緯を話した私は目の前で唸る赤ん坊を見据える。

見た目は赤ん坊なのに、顎を擦りながら唸る姿は何だかシュールだ。


「うみゅ、にゃんでじゃ!にゃんきゃい、聞いてもまるで意味が分からにゅぞ!」

「おぉ、オスだ」

「やっ、やめろー!猫じゃないんだ、見るんじゃない!」


ルミーナに下半身を見られて暴れる赤ん坊。

うむ、可愛らしいと思うよ。

しかし、スライムだったのになんでかな?


「どうするんじゃ、儂の研究だってまだにゃのに」

「行方不明という事で、転移魔法の失敗で片付けられるでしょ」

「儂知ってる可愛かったセレスはどこ行ったのじゃ」

「ハッ」


何言ってんだ、私は今でも超絶可愛いわ。

こういう女の子が好きなんでしょって擦り寄れば世の中の男は一発よ。


「取り合えず、生存を確認しゃせねば」

「ほら、若くなったと思えば良いじゃないですかお爺様」

「若すぎじゃ、ホムンクルスは成長しないんだぞ」


えっ、マジで?

可笑しいな、成長するホムンクルスとかいるんだけどな。

いや、アレは人間素体だったからだっけ。


「まぁよい、他の者が知らないことを言えば証明となるじゃろ」

「ショタジジイ、ウケる」

「ねぇ、なんなの?この子、さっきから何なの~?」


ルミーナはいつもこんなだよ、お爺様。

まぁこれで今回の実験は成功、査定も通るだろう。


「んじゃ、あとよろしく」

「承りました」

「こ、こら!離せ、一人で歩けるわい!」


さてと、もうやることなくなったし外でも行くかな。

新しい服とか必要だろうからな。

そんな呟きを私がした瞬間、出て行こうとしたルミーナがお爺様を落としながら口を大きく開いた。


「おい、私が外に行くことがそんなに可笑しいか」

「うん、一人で買い物なんか出来ないと思ってた」

「よし、表に出ろ。私が外に出れることを証明してやる」


いや面倒の一言で一蹴された。

なんだよ私だって、コンビニへと行くくらい出来るからね。

この世界じゃ雑貨屋だけど。


「見てろよ、見事に買い物してきてやるぜ」

「まぁ、頑張れ」

「ぐぬぬ、不敬罪で逮捕してやろうかこのメイド」


そして、私は王城から王都に降り立った。


「で、ここどこ?」


おかしいな、直線で転移したから大通りに出るはずなんだけど。

右も左も家、後ろは遠く離れてるけど家、まっすぐ行っても家。

住宅街?あれ、どこだよマジで。

ま、迷ったぁぁぁぁ!

あんだけ、大丈夫って言ったのに迷った。


「取り合えず、動こう。そしたら、大通りに出るはずだ。うん?」

「危ないぞ~」


窓の開く音がした。

その音に、私は上を見る。

そこにはバケツのような物を持った男が何かを放り投げる様子が見えた。

って、落ちてくるのうんこじゃねぇか!


「バ、バリア!」

「お、おぉ~」


おぉ~じゃない!何なの、何で窓からうんこ落としてんの!?

っていうか、良く見たら道端にうんこ落ちてるじゃん。


「あ、ありえない。どうしてなの?中世ってトイレないの?いや、ここ異世界だし……いや、私の生まれた世界か」


良く分からんけど、不潔だって分かんだね。

取り合えず真ん中を通ろう。

恐らく、地面が土じゃなくてレンガを敷き詰めてるから糞だらけなんだ。

田舎だったら埋めるんだと思う。

クソ、初めて王都に出たけどウチの領地よりヤバイじゃねぇか。


「ハァ……」

「待ちやがれ!」


今度は何だよ、と大きな声が聞こえたので振り向いた。

木箱や樽の置いてある裏路地を、駆ける者達がいた。

戦闘は平民の子供、それを追うのは騎士の姿をした者達。

なるほど、犯罪者か。


「あっ、助けに来てくれたのか」


おや、どうやら仲間が近くにいるらしい。

もしや、ここってスラム街かなんかなのか?平民の家と貧民の家の見分けが付かないから分からないな。

お仕事大変だな、と道の端っこに移動してその様子を見守る。

走っていた子供は綺麗な金髪の少年だった。

眉毛パッチリで意外と悪くない整い具合、肌も綺麗だし平民にしてはやるじゃんと言った感じだ。

その少年は私の方へと走ってきて、何やら手を前にして――


「うわっ」

「な、なんだ!?身体が、動かない……」


何やら私の服を掴んできそうだったので、思わず魔法の腕で押さえつけてしまった。

本人からしたら、急に動けなくなったように見えるだろう。

透明な腕がガシッと握ってるんだけど。

まったく、やめてよね抱きつこうとするの。


「あっ、うぅ、待てお前達!俺を捕まえたくば、この者を倒してからにしろ!」

「……えっ、私?」

「えっ、うん」


何を言ってるんだ君は、これはどういう状況なんだ。

と思っていたら、何故か周囲を騎士の人に囲まれる私。

こ、怖っ!?何で、何で囲まれてるの!


「大人しく、その者を渡してもらおうか」

「あっ、はい」

「抵抗しないほうが、うん?」


騎士の人が困惑する顔をして、首を傾げる。

いや、だって私が助ける理由なんてないしな。


「ご協力感謝する」

「おのれ、許さぬぞ貴様ぁー!」


許さないからどうなるってんだよ、やれやれ。

さぁ、買い物を済ませよう。




無事買い物を済ませた。

まぁ、私だって買い物くらい出来るのだ。


「ただいま」

「お帰りなさいませ」


じゃじゃーん、と買ってきたものを自慢する。

それをルミーナは手に取り、なにやら難しい顔をしていた。

鑑定団の人みたいだな。

ちなみに値切り交渉で安くした値段を言ったら驚かれた、驚きの安さだったか。


「ぼったくられてるし」

「なんだと!」

「それより、査定が終わった」


あれ、もう査定終わったの?

いや、お爺様が説明してくれたら私の手間が省けるからそうなっても可笑しくないか。

お爺様どんな説明したのやら。


「そういえば、王子が逃げ出した」

「へー、よくある話だね」

「でもって、宮廷魔法使いに捕まった」

「そうなんだ」

「心当たりは?」


な、何で私にそんなことを聞いて来るんだ。

私が外に出たタイミングで、ちょうど良くイベントなんて起きるわけないだろ。

知らない、私は知らないよ。


「ちなみに、王子は相当恨んでるらしい」

「…………」

「現場から金貨も拾ったらしい」


あれれ、おかしいな。

懐に入れた金貨が無いぞ。

あれ、いや、本当はどこかに、あれ?

おいぃぃぃ!マジで無いぞ!?

えっ、マジ?アレ、王子なの?


「金貨、落としたよね」

「はい、落としました」

「あちゃ~」


ルミーナが言うには、登録されてる魔力によって個人が判明するらしい。

そんな説明聞いてないよ、えっ確かに言ってた?

もう既に、私が金貨を落としていることと王子を捕まえるのに協力したことは周知の事実のようらしい。


「嫌だ、行かないぞ!」

「ハイハイ、諦めましょう」

「離せ!は、な、せ!」


王様の前に連れ出されて、滅茶苦茶説教された。


「汝、セレスティーナ=オーウェンに罰として我が息子、第三王子ルドルフ=ヴァイマルの魔法および魔術の教育係りを命ずる」

「つ、謹んでお受けいたします」

「父上ぇぇぇぇ!」

「これは王命であるぞ、口答えは許さぬ」


ど、どういうことだってばよ。


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