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救った魔女は凹んでしまう

分からないことに頭を悩ませる必要はない。

私は学者ではないので、どうして水は水なのか。

水は水素と酸素がとか考える必要はない、深く考える必要は無いのだ。

魔術師たる物、神秘を調べ上げ真理に到達すべきとか言ってる奴もいるけど人は人、自分は自分だ。


「出来る出来ないでいいんだよ、やるんだよ」

「で、セレス様は何をしている?」

「魔道具を作ってみた」

「おぉー」


なぜか分からないが日本語で出来るんだから、問題ない。

ドワーフの仕事が無くなったり魔道具の市場価値が暴落しようが知ったこと無い。

何故なら、物造りって楽しいからね。


「それで、これは何?」

「これは魔力を勝手に集めて暖かい空気を出す壺だ」

「冬はぬくぬく、わーい」

「わーい!」


どうだ、因みに壺には、魔力、蓄積、起動後、消費、暖風発生と日本語で書いてある。

蓋を外せば起動する、何でかは何となく蓋を外したら起動なと思い浮かべて造ったから、原理は知らない。

魔法って不思議な物なんだよ、原理とか考えるのはナンセンスだぜ。


「なぁ、姉ちゃん」

「おい、部屋に入るときはノックしろよ!クソ餓鬼が!」

「わ、悪かったよ。口悪いな、この女……」


しっかりと聞こえるぞ、カーマインよ。

壺の周りで私がメイドと小躍りしていると、部屋に愚弟であるカーマインがやってきた。

まったく、友達がいないのだろうか。汚いから、私の部屋に入ってきて欲しくないんだがな。

しかも、来るたびに厄介事を持ってくる。お前、私は何でも解決してくれる青い狸ではないのだぞ。


「それで、どうしたんだいカーマイン君」

「カーマイン君って?それが、村で風邪が流行ってるんだよ。流行り病だと思うんだけど、どうにかしてくれないか?」

「しょうがないな、カーマイン君は……嫌だよ、バーカ!何で面倒なことしなくちゃならないんだよ、あんな落ちてるもん平気で食うから病気になんだよ自業自得だわ」

「最低、我が姉ながら最低だな!慈悲の心とか無いのかよ」


慈悲の心って、なにそれ食えんの?

つうか、治したってあんな不衛生、不規則、不健康な存在に一時的な措置を施したってまた再発するだけだし。

流行り病で私が病気になったら、病院も無いこの世界じゃ即死する自信がある。

身体を洗わず、食事も不規則で偏食、風邪を引いてる奴が近くにいても肉体労働、最悪の環境に私が足を運ぶとか常識的に考えてありえないでしょ。


「頼むよ姉ちゃん、この家じゃ姉ちゃんが一番頭がいいんだからさ」

「まぁね、私ってば天才だからね。因数分解から微分積分までできるしね」

「よくわかんねーけど、なんか魔法でパパット解決してくれよ」


お前、魔法が何でも出来ると思うなよ。

やろうと思わないとなんも出来ないんだよ、つまりやる気がない私は無力なんだよ。

やる気スイッチなんて私には存在しません、だってニートだからね。


「うざい、触るな、寄るな臭い」

「ひでぇ、おととい風呂に入ったぞ」

「毎日入れよ、汚ねーな」

「なんでもするから、なぁいいだろ姉ちゃん、ちょっとだけ、ちょっとだけで良いからさ!」


なんだその先っちょだけみたいなのは、下ネタか気持ち悪い。

実の姉に何言ってんだ、頭沸いてるのかよ。


「今、何でもって言ったな。じゃあ、お前が村で解決しろよ」

「じゃあ、何か知恵を授けてくれるんだな、流石姉ちゃんだぜ!」

「さすあねです、セレス様」


ルミーナ、どこでそのネタを知った。

いや、私の知識を転写した時にか。

さて、面倒だけど解決する知恵を授けてやらないとな。

といっても、コイツら中世の人間だから病気とかに対する知識がないだけだが。

うまいこと言いくるめて、どうにかすればいいだろ。


「取り合えず、身体を綺麗にする。汚いと、病気を運んでくるちっこいモンスターが寄ってくる」

「えっ、そうなの!?」

「ウイルス、って言ってもお前馬鹿だから分かんないか。目に見えない奴がそこら辺にいるんだよ、かもすぞって飛んでるの」

「本当かよ、初めて聞いたぞ」


だろうね、初めて言ったからな。

後は飲み水とか食べ物だけど、どうせ栄養価のありそうなの買えないだろうから無理だろうな。

出来ることといえば、水かな。


「今から、魔道具作る。水が綺麗になるやつ、汚い水は飲むな」

「雨水は平気?」

「ハァ、ダメに決まってんだろ、死ねよ」

「綺麗なのに、っていうか言いすぎだろ……」


まさか、雨水を貯めて飲んでたりするのか?

何でそんなことを、って蛇口とか無いんだった。

本当に文明レベルが違いすぎて困る、あぁ日本が恋しいよ。


取り合えず、浄化機能のつけた壺を造る。

底に、浄化って魔力を込めながら彫るだけ。

紅茶を入れてみたら、透明になってるから大丈夫だと思う。

茶葉から出た栄養とか何処行ったんだろ、不思議だ。


「一応、食卓から生ゴミ貰ってこよう。平民が食うよりマシだろ、食えるところ捨ててるし」

「まぁ、うーん、同じレベル?」

「野菜の皮と、茎だろ、あとは食べ終わった骨、ぐつぐつ煮込めばそれなりに食べれるだろ。ラーメンに失礼だが、一応スープとかそんな感じだし」


豚骨とか野菜とか、ちゃんとした食材を使いたいがいかんせん、材料がない。

貧乏って嫌だね、ウチは貧乏じゃないからちゃんと食べれるけど、平民って大変だわ。


「後は、病気の奴は一纏めにして、健康な奴らは近寄らせんな」

「それは、誰だって知ってるよ。常識だよ、常識」

「それぐらいの知識はあるのか」


まぁ、一応これぐらいしか出来ないかな。

一応、色々造ってみるか。加湿器とか暖房とか、あとIHとか。

それから、魔法でパッと壺を造り、魔法でパッと文字を彫り、そこに魔力を込めて壺を造っていく。


「姉ちゃん、なんなのこの壺。いや、魔道具なのは分かるけど、作りすぎじゃね?」

「いや、規模とか知らないし。お前、何でもするって言っただろ。ちょっと、私の株を上げるために配れよ」

「えー、配るの俺なのに姉ちゃんの株上げるの?」


当たり前だろ、これは労働。私が私のために私の魔力を使ってやってるんだ。

なんか、不平不満しか言わない、小汚い猿みたいな奴らのためにだ。

ちゃんと暖かくして、規則正しい生活をして、清潔にしてれば病気になんかならないだろうが。


「カーマイン様、これ」

「なにこれ」

「リアカーです。セレス様が作ったやつ」


あぁ、前に庭師の爺が大変そうだから作ったやつか。

あれ、でも一個しか作ってないんだが。

とはいえ、沢山の壺を運ぶためにカーマインはリアカーに壺を乗せて屋敷を出て行った。

気をつけて、割るなよ。

数時間後、庭師の爺が必死こいて色々な道具を運んでいた。

可愛そうに、全部カーマインのせいだ。


そして、数日後。

一応、どうなったのかカーマインからは聞かされてないので気になった。

聞けば、なんか変な顔をしているのできっと実の姉が褒め称えられて困惑しているのだろうと判断した。

なので、ルミーナにわざと平民の格好をさせてバレないように村の様子を見てきてもらった。

どうやら流行り病とやらは終息し、村人たちは無事健康になったようだ。

私を称え奉り、それは大事に大事に魔道具を使っているそうである。

そして、こんないい道具があるならもっと作れよ、それでも領主の娘かよと不平不満を漏らしているらしい。

誰のお陰で飯が食えてると思っているんだよ、魔法が使えるなら俺らに楽させろよとのこと。

それからは延々とウチの家に対する悪口、というかヘイトスピーチ。


「何よ、そこまで言わなくても良いじゃない。なんか、悲しくなってきた」

「因みに、もっとメイドにやさしくしろとか給料上げろとか週休八日にしろとかもありました」

「なんでや!それはお前の個人的な意見だろ!ガチで凹んでたのに、思わずツッコミ入ったわ」

「いや、マジですってセレス様マジで」


絶対嘘だろうな……と思いながら村人達に思いを馳せるのだった。


「私の悪口言った奴に不幸が訪れますように」

「うわぁ、セレス様ってば性格歪んでる」

「うるさい!壺割れろ~私の作った壺なんか割れちまえ~!」


私の思いが通じて壺が割れればいいのにと思うのだった。

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